色落ちが良いと考えられるジーンズ・ジーパンは、色落ちしたヴィンテージ501の色落ちの特徴をモデル・模倣しているのが一般的です。
今回は、知られているようで意外と知られていない色落ちしたオリジナル・ヴィンテージ501の特徴と見どころを紹介します。
片面タブの501XXは、ヴィンテージ501の中でも頂点に位置する存在です。
市場価格的には、大戦モデルや戦前のバックルバックがさらに上にありますが、かなりマニアックな嗜好も含まれてくるので、一般的には片面タブが501XXの頂点と言って良いと思います。
本記事では、この片面タブ501XXと以下の写真の501ビッグEを中心に、色落ちの特徴と見どころを紹介します。
上の2本はパッと見た感じは似た印象を受けるかもしれませんが、細かく見比べると色落ちの傾向はかなり異なります。
ヴィンテージ501は、大まかな年代・モデルである程度の色落ちの傾向があります。
ジーンズの色落ちで圧倒的に人気があるのが縦落ちです。縦落ちは、色落ちが進行してくると、縦に筋状の線が入る色落ちのことです。
オリジナルのヴィンテージ501で、明確な線状の色落ちするものは、66前期です。
それ以前のモデルは、明確な線ではなく五月雨式のような断続的に短い線状の集まりのような色落ちをします。
片面タブ501XXのフロント上部です。
501 ビッグEは、色落ちが進行してくると五月雨状の点が集まって形成される短い筋に加えて、まだらなザラザラした色落ちが加わることが多いです。
下の写真をご覧になって、上の説明、ご理解できますでしょうか?
上の二本のヴィンテージ501は、ある程度ヒゲが形成されていますが、線のような明確なものではなく太い幅でヒゲ的なコントラストができています。
糊付きの状態で、ある程度の期間、特定の穿き方をしない限り、明確な線状のヒゲやハチノスはできません。
ヒゲは着用が進めば、大なり小なり上の写真で紹介したような太い幅での色の差があるコントラストを形成してできます。
下ヒゲも同様にある程度着用が進むとコントラストができてきます。
ハチノスはあまり明確に生成されない方が(圧倒的に)多いです。
上が片面タブ501XX、下がビッグEです。
いきなりマニアック気味な話となってしまいました。少し一般的なヴィンテージ501色落ちの特徴を紹介します。
ヴィンテージ501は、全体的に色落ちが進行するとほぼ確実にアウトシームのアタリが明確にできます。
耳が閉じていれば、閉じている状態でのアタリが形成されます。
501は生デニムを使用しているため、洗濯すると縮みます。縮みは均一でなくねじれも生じます。
ヴィンテージの501は、左脚のアウトシーム(外側にくる生地の縫い目)が裾に向かってねじれて前(正面)にくるのが特徴です。
右脚も同方向にねじれるので、右脚は左とは逆にインシームが前側にきます。
冒頭の2枚の写真をご参照ください。
オリジナルのヴィンテージで裾詰めがされていない場合、裾のステッチに沿って、波状に斜めにうねりが入るような色落ちをするのが、ヴィンテージ501共通の色落ちの特徴の一つです。
上の写真は、チェーンステッチのアタリの特徴に加えて、上で紹介したヴィンテージ501があまり明確な縦落ちはしないこと、各年代・モデルの色落ちの傾向についてのご参考になるかと思います。
アウトシーム(耳)とチェーンステッチのアタリは、ヴィンテージ501共通の特徴です。
ここからマニアックな色落ちについて紹介します。
ヴィンテージの501のウォッチポケット(通称コインポケット)に、イナズマ状のシワが入って色落ちするものがあります。
写真は501xx-501のダブルネームのウォッチポケット部です。斜めに線状の色落ちが生成されています。
この色落ちは、通称”コインポケットのイナズマ”と呼ばれています。
コインポケットのイナズマは、ウォッチポケット部とその取り付け部の生地の織りの向きが反対向きに取り付けられている場合に、生地が縮む際に斜めにシワが入るためできるものです。
コインポケット入り口裏がセルビッジ(耳)のものは、同方向のため、コインポケットのイナズマはできません。
下は片面タブの501XXのウォッチポケット部です。ポケット入り口裏はセルビッジです。
コインポケット入り口裏がセルビッジでないものでも、生地の向きが同方向のものもあります。同方向の場合は、イナズマはできません。
501XXは、最終期を除き全て隠しリベットが取り付けられているのが仕様上の特徴です。
隠しリベットは、表からは見えない様に生地が被されている構造になっています。
しかし、着用が進むと隠しリベットの突起に沿って、生地が擦れてきます。生地の擦れにより周辺も色落ちしてきます。
下の写真は片面タブ501XXの右バックポケットの左角上部です。生地が擦れて下生地が露出しています。
これを隠しリベットのアタリと呼びます。
隠しリベットのアタリは、隠しリベットを備える501XX特有のものの色落ち・擦れの一つです。
細かいところですが、着用が進行したヴィンテージ501を注意してみると隠しリベットの有無による外観の差は、お分かりになるかと思います。
501XXの最終期に隠しリベットは廃止となりました。それ以降のモデル、ビッグE、66前期はポケットの取り付け強化に隠しリベットではなく、バータックが入れられています。
ヴィンテージ501のベルトループは、縦に中央が少し膨らんだ形状になっています。
そのため着用が進むと、縦の膨らみの部分の色落ちが顕著になります。
これは基本的には、古い年代のヴィンテージ501共通の特徴です。
色落ちにこだわるレプリカブランドのジーンズのベルトループは、ヴィンテージ501のベルトループの色落ちを模倣するため縦中央が少し膨らんだ形状になっています。
なんと現行のUSモデル501STFも2013年の仕様変更から、ベルトループは縦中央が膨らんだ形状になりました。
ヴィンテージの色落ちは、デニム生地の色落ちだけでなくステッチの色落ちもかなり視覚的に重要な要素となります。
古い年代のヴィンテージリーバイス(ジージャンを含む)をお持ちの方は、良くお分かりかと思います。
ヴィンテージジージャンのサードとフォースの大きな違いの一つは、ステッチの色、特に退色した綿糸の色味とデニムの色味の組み合わせによるものです。
下は501xx-501のダブルネームの後ろ上部の写真です。
この写真では少し分かりづらいかもしれないので、右バックポケットのアップを以下に添付します。
特徴的な色味のオレンジとイエローのステッチが、インディゴブルーのデニムとのコントラストを形成しています。
古い年代のヴィンテージ501に使用されているステッチは、経年変化による退色も加わってとても味わい深い色味をしています。
上の写真のダブルネームは比較的新しい年代(とは言え、約50年前の製品です)のステッチの色味になります。(ダブルネーム特有とも言えます)
コインポケットのイナズマ、隠しリベットのアタリ、ベルトループのアタリは、現行のジーンズで模倣した仕様を採用している製品・モデルが多くあります。
それら模倣されている仕様や特徴は、オリジナルのヴィンテージ501の場合、モデルや年代に関連したもの、モデルや年代とは関係のないものなどもあったりします。
ヴィンテージが製造されていた時代には、色落ちや経年変化などについては、全く考慮されていなかった仕様が、数十年後に注目され、模倣されているところは、とても興味深いところです。
なお、本記事ではヴィンテージリーバイス501の色落ちについてのものですが、ヴィンテージデニムは、濃紺の色もとても魅力的です。
関連記事:
ヴィンテージデニムの色の魅力
とても長い記事になってしまいました。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
ご参考になれば幸いです。
今回は、知られているようで意外と知られていない色落ちしたオリジナル・ヴィンテージ501の特徴と見どころを紹介します。
片面タブの501XXは、ヴィンテージ501の中でも頂点に位置する存在です。
市場価格的には、大戦モデルや戦前のバックルバックがさらに上にありますが、かなりマニアックな嗜好も含まれてくるので、一般的には片面タブが501XXの頂点と言って良いと思います。
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501XX 片面タブ |
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501 ビッグE |
ヴィンテージ501は、明確な縦落ちはしない
ヴィンテージ501は、大まかな年代・モデルである程度の色落ちの傾向があります。
ジーンズの色落ちで圧倒的に人気があるのが縦落ちです。縦落ちは、色落ちが進行してくると、縦に筋状の線が入る色落ちのことです。
オリジナルのヴィンテージ501で、明確な線状の色落ちするものは、66前期です。
それ以前のモデルは、明確な線ではなく五月雨式のような断続的に短い線状の集まりのような色落ちをします。
片面タブ501XXのフロント上部です。
501 ビッグEは、色落ちが進行してくると五月雨状の点が集まって形成される短い筋に加えて、まだらなザラザラした色落ちが加わることが多いです。
下の写真をご覧になって、上の説明、ご理解できますでしょうか?
オリジナルでヒゲやハチノスが明確に線状にできているものは少ない
上の二本のヴィンテージ501は、ある程度ヒゲが形成されていますが、線のような明確なものではなく太い幅でヒゲ的なコントラストができています。
糊付きの状態で、ある程度の期間、特定の穿き方をしない限り、明確な線状のヒゲやハチノスはできません。
ヒゲは着用が進めば、大なり小なり上の写真で紹介したような太い幅での色の差があるコントラストを形成してできます。
下ヒゲも同様にある程度着用が進むとコントラストができてきます。
ハチノスはあまり明確に生成されない方が(圧倒的に)多いです。
上が片面タブ501XX、下がビッグEです。
いきなりマニアック気味な話となってしまいました。少し一般的なヴィンテージ501色落ちの特徴を紹介します。
アウトシーム(耳)のアタリ
ヴィンテージ501は、全体的に色落ちが進行するとほぼ確実にアウトシームのアタリが明確にできます。
耳が閉じていれば、閉じている状態でのアタリが形成されます。
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501XX 片面タブの左脚裾付近 |
ヴィンテージの501は、左脚のアウトシーム(外側にくる生地の縫い目)が裾に向かってねじれて前(正面)にくるのが特徴です。
右脚も同方向にねじれるので、右脚は左とは逆にインシームが前側にきます。
冒頭の2枚の写真をご参照ください。
チェーンステッチのアタリ
オリジナルのヴィンテージで裾詰めがされていない場合、裾のステッチに沿って、波状に斜めにうねりが入るような色落ちをするのが、ヴィンテージ501共通の色落ちの特徴の一つです。
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片面タブ 501XXの裾部(右脚) |
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501 ビッグEの裾部(左脚) |
アウトシーム(耳)とチェーンステッチのアタリは、ヴィンテージ501共通の特徴です。
ここからマニアックな色落ちについて紹介します。
コインポケットのイナズマ
ヴィンテージの501のウォッチポケット(通称コインポケット)に、イナズマ状のシワが入って色落ちするものがあります。
写真は501xx-501のダブルネームのウォッチポケット部です。斜めに線状の色落ちが生成されています。
この色落ちは、通称”コインポケットのイナズマ”と呼ばれています。
コインポケットのイナズマは、ウォッチポケット部とその取り付け部の生地の織りの向きが反対向きに取り付けられている場合に、生地が縮む際に斜めにシワが入るためできるものです。
コインポケット入り口裏がセルビッジ(耳)のものは、同方向のため、コインポケットのイナズマはできません。
下は片面タブの501XXのウォッチポケット部です。ポケット入り口裏はセルビッジです。
コインポケット入り口裏がセルビッジでないものでも、生地の向きが同方向のものもあります。同方向の場合は、イナズマはできません。
隠しリベットのアタリ
501XXは、最終期を除き全て隠しリベットが取り付けられているのが仕様上の特徴です。
隠しリベットは、表からは見えない様に生地が被されている構造になっています。
しかし、着用が進むと隠しリベットの突起に沿って、生地が擦れてきます。生地の擦れにより周辺も色落ちしてきます。
下の写真は片面タブ501XXの右バックポケットの左角上部です。生地が擦れて下生地が露出しています。
これを隠しリベットのアタリと呼びます。
隠しリベットのアタリは、隠しリベットを備える501XX特有のものの色落ち・擦れの一つです。
細かいところですが、着用が進行したヴィンテージ501を注意してみると隠しリベットの有無による外観の差は、お分かりになるかと思います。
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片面タブ 501XX バック上部 |
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501 ビッグE バック上部 |
ベルトループの色落ち
ヴィンテージ501のベルトループは、縦に中央が少し膨らんだ形状になっています。
そのため着用が進むと、縦の膨らみの部分の色落ちが顕著になります。
これは基本的には、古い年代のヴィンテージ501共通の特徴です。
色落ちにこだわるレプリカブランドのジーンズのベルトループは、ヴィンテージ501のベルトループの色落ちを模倣するため縦中央が少し膨らんだ形状になっています。
なんと現行のUSモデル501STFも2013年の仕様変更から、ベルトループは縦中央が膨らんだ形状になりました。
綿糸のステッチの色落ち
ヴィンテージの色落ちは、デニム生地の色落ちだけでなくステッチの色落ちもかなり視覚的に重要な要素となります。
古い年代のヴィンテージリーバイス(ジージャンを含む)をお持ちの方は、良くお分かりかと思います。
ヴィンテージジージャンのサードとフォースの大きな違いの一つは、ステッチの色、特に退色した綿糸の色味とデニムの色味の組み合わせによるものです。
下は501xx-501のダブルネームの後ろ上部の写真です。
この写真では少し分かりづらいかもしれないので、右バックポケットのアップを以下に添付します。
特徴的な色味のオレンジとイエローのステッチが、インディゴブルーのデニムとのコントラストを形成しています。
古い年代のヴィンテージ501に使用されているステッチは、経年変化による退色も加わってとても味わい深い色味をしています。
上の写真のダブルネームは比較的新しい年代(とは言え、約50年前の製品です)のステッチの色味になります。(ダブルネーム特有とも言えます)
まとめ
コインポケットのイナズマ、隠しリベットのアタリ、ベルトループのアタリは、現行のジーンズで模倣した仕様を採用している製品・モデルが多くあります。
それら模倣されている仕様や特徴は、オリジナルのヴィンテージ501の場合、モデルや年代に関連したもの、モデルや年代とは関係のないものなどもあったりします。
ヴィンテージが製造されていた時代には、色落ちや経年変化などについては、全く考慮されていなかった仕様が、数十年後に注目され、模倣されているところは、とても興味深いところです。
なお、本記事ではヴィンテージリーバイス501の色落ちについてのものですが、ヴィンテージデニムは、濃紺の色もとても魅力的です。
関連記事:
ヴィンテージデニムの色の魅力
とても長い記事になってしまいました。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
ご参考になれば幸いです。
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