ジーンズの元祖501は生誕140年を誇る驚異的な歴史を持つ衣料品の一つです。
501はボタンフライ、スタンダードなストレートなシルエット、バックポケットのアーキュエットステッチ、赤タブ、ツーホースマークのパッチ等、伝統ある基本的な仕様と特徴を備えながら、時代ごとに細かい変更が加えられて現在に至っています。
一つ前のエントリーで新しい501STFのタグ等についての変更について書きましたが、実は今回のモデルで501としてはかなり大幅な仕様変更が行われている事に気がつきました。
今回は主な仕様の変更点について、従来のモデルと新モデルを比較しながら紹介します。
<バックポケットのアーキュエットの形状とステッチ処理>
アーキュエットステッチの形状がかなり異なるのが目を引きます。従来モデルは深めでシャープな形状でした。新モデルは浅めです。
アーキュエットの形は年代で異なるのが特徴です。新モデルのアーキュエットの形は、66前期(1970年代初め)から2003年までの最終米国製モデルに近いです。
ポケット開口部脇のバータック(カンヌキ)から下にかけてのポケット取り付け部の内側のステッチが従来モデルはほぼ直線状に下に向かうのに対して、新モデルはカーブ上に下に向かっています。
隠しリベットが付いていた501の年代の古いもの(特に50年代前半以前)は隠しリベットに沿ってカーブ上にステッチが入れられているものがあり、それに似たタイプです。
尚、オリジナルのヴィンテージの場合はカーブの形状や度合いは個体差がかなりあります。
このバックポケット内側のステッチのデザインは、リーバイスジャパン企画の501に見られるものに似ていますが、それ程極端ではなく、さりげない程度のカーブで個人的には好感が持てます。
<フロント部のステッチ処理>
通称Vステッチと呼ばれるフロントボタンに向けてV字状にステッチが入れられています。このステッチ処理は60年代の後半以前のモデルに使われていたステッチディテールの特徴の一つです。
Vステッチは、昨年米国リーバイス本社企画のプレミアムラインMade in the USAやリーバイスジャパン企画の501でも見られました。
今回、米国モデルの主力のレギュラーモデルである501STFに採用された事はとても興味深い変更点の一つです。
さらに合わせ部のボタン(ホール)周りにかけてステッチが逆コの字状に切り返しステッチが入れられています。
このステッチ処理は上Vステッチが施されたヴィンテージの501のステッチ処理の特徴です。
この様な細かいところまでステッチの変更が行われています。
60年代の後半にVステッチから通称平行ステッチへとディテールが変更されます。それ以降、レギュラーモデルは今回の変更までの間、平行ステッチを採用し続けていました。
つまり、今回のレギュラー501におけるVステッチへの変更は、実に40数年振りの変更となります。
<ウォッチ(コイン)ポケット裏がシングルステッチ>
新モデルは右ポケット部にあるウォッチポケット(コインポケット)の入り口裏のステッチがシングルステッチになっています。
当該ステッチは60年代後半以前は全てシングルステッチでした。60年代の後半にチェーンステッチに変更となり、それ以降のモデルはずっとチェーンステッチのままでした。
ここまで変更が加えられているとは正直、驚きました。
機能的に変更する必要は全くなく、ヴィンテージに詳しい人でない限りほとんど気にしない様な箇所です。
<バックポケット裏のステッチがシングルステッチ>
1970年代の後半、通称66後期以降、バックポケット裏のステッチはチェーンステッチが採用されていました。
今回比較に使用した従来モデルは白いチェーンステッチでした。新モデルではシングルステッチに変更となっています。
<インシームがダブルステッチからシングルステッチに変更>
脚の内側の縫い合わせ(インシーム)部は、80年代の後半にシングルステッチからダブルステッチに変更となりました。
以降、501レギュラーはダブルステッチを採用し続けてきました。
機能上、特に強度の面ではダブルステッチの方が有効であると思われますが、ジーンズ愛好家の間ではインシームはシングルステッチが圧倒的に支持されています。
この部分がシングルステッチに戻される事はある意味、かなり画期的なことです。
<アウトシームの処理>
ここまで変更点を見てきて、ジーンズにお詳しい方は、まさか裾裏もチェーンなのか?と期待された方もいらっしゃったかと思います。
残念ながら、裾裏の処理はシングルステッチのままでした。この部分は実用面を優先する米国市場のためシングルステッチのままにしたと想像しています。
アウトシームは両方共脇割りですが、処理の仕方が異なります。新モデルの方が細かい割縫いになっています。また、糸の色も従来の白から紺系の色となりました。
この部分については、新しいデザインを採用しています。ロールアップしたときの見栄えを考慮したのかどうかは不明です。
好みにもよりますが、新鮮で良いのではないかと思います。
以上が主なディテール上の変更点です。正直、ここまで変更されていることに驚きました。ステッチ中心の細かなディテール変更ではありますが、501の歴史の中でもかなり大幅な変更であると言えます。
これらのディテールはジーンズ愛好家が好む、こだわる部分であり、これまでプレミアムラインや防縮加工デニム使用の一部製品でのラインで採用された事はありましたが、今回は伝統の生デニム使用する超定番の501STFであり、画期的なことだと思います。
また、これらの変更については、アメリカ市場のユーザーのほとんどは気にしない様な箇所です。逆に、日本市場においては、非常に魅力的なディテールへの変更であると言えます。
この記事を書いている段階では、リーバイスジャパンでは本品は取り扱っていません。
米国モデルを輸入して販売しているお店では扱っているところもあるかと思いますが、従来品の在庫がある場合は、まだ従来品を販売しているところも少なくない様に思います。
ロングホーンインポートでこれから取り寄せる品については、原則、全て新モデルの方で対応する予定です。
501はボタンフライ、スタンダードなストレートなシルエット、バックポケットのアーキュエットステッチ、赤タブ、ツーホースマークのパッチ等、伝統ある基本的な仕様と特徴を備えながら、時代ごとに細かい変更が加えられて現在に至っています。
一つ前のエントリーで新しい501STFのタグ等についての変更について書きましたが、実は今回のモデルで501としてはかなり大幅な仕様変更が行われている事に気がつきました。
今回は主な仕様の変更点について、従来のモデルと新モデルを比較しながら紹介します。
<バックポケットのアーキュエットの形状とステッチ処理>
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アーキュエットの形は年代で異なるのが特徴です。新モデルのアーキュエットの形は、66前期(1970年代初め)から2003年までの最終米国製モデルに近いです。
ポケット開口部脇のバータック(カンヌキ)から下にかけてのポケット取り付け部の内側のステッチが従来モデルはほぼ直線状に下に向かうのに対して、新モデルはカーブ上に下に向かっています。
隠しリベットが付いていた501の年代の古いもの(特に50年代前半以前)は隠しリベットに沿ってカーブ上にステッチが入れられているものがあり、それに似たタイプです。
尚、オリジナルのヴィンテージの場合はカーブの形状や度合いは個体差がかなりあります。
このバックポケット内側のステッチのデザインは、リーバイスジャパン企画の501に見られるものに似ていますが、それ程極端ではなく、さりげない程度のカーブで個人的には好感が持てます。
<フロント部のステッチ処理>
通称Vステッチと呼ばれるフロントボタンに向けてV字状にステッチが入れられています。このステッチ処理は60年代の後半以前のモデルに使われていたステッチディテールの特徴の一つです。
Vステッチは、昨年米国リーバイス本社企画のプレミアムラインMade in the USAやリーバイスジャパン企画の501でも見られました。
今回、米国モデルの主力のレギュラーモデルである501STFに採用された事はとても興味深い変更点の一つです。
さらに合わせ部のボタン(ホール)周りにかけてステッチが逆コの字状に切り返しステッチが入れられています。
このステッチ処理は上Vステッチが施されたヴィンテージの501のステッチ処理の特徴です。
この様な細かいところまでステッチの変更が行われています。
60年代の後半にVステッチから通称平行ステッチへとディテールが変更されます。それ以降、レギュラーモデルは今回の変更までの間、平行ステッチを採用し続けていました。
つまり、今回のレギュラー501におけるVステッチへの変更は、実に40数年振りの変更となります。
<ウォッチ(コイン)ポケット裏がシングルステッチ>
新モデルは右ポケット部にあるウォッチポケット(コインポケット)の入り口裏のステッチがシングルステッチになっています。
当該ステッチは60年代後半以前は全てシングルステッチでした。60年代の後半にチェーンステッチに変更となり、それ以降のモデルはずっとチェーンステッチのままでした。
ここまで変更が加えられているとは正直、驚きました。
機能的に変更する必要は全くなく、ヴィンテージに詳しい人でない限りほとんど気にしない様な箇所です。
<バックポケット裏のステッチがシングルステッチ>
1970年代の後半、通称66後期以降、バックポケット裏のステッチはチェーンステッチが採用されていました。
今回比較に使用した従来モデルは白いチェーンステッチでした。新モデルではシングルステッチに変更となっています。
<インシームがダブルステッチからシングルステッチに変更>
脚の内側の縫い合わせ(インシーム)部は、80年代の後半にシングルステッチからダブルステッチに変更となりました。
以降、501レギュラーはダブルステッチを採用し続けてきました。
機能上、特に強度の面ではダブルステッチの方が有効であると思われますが、ジーンズ愛好家の間ではインシームはシングルステッチが圧倒的に支持されています。
この部分がシングルステッチに戻される事はある意味、かなり画期的なことです。
<アウトシームの処理>
ここまで変更点を見てきて、ジーンズにお詳しい方は、まさか裾裏もチェーンなのか?と期待された方もいらっしゃったかと思います。
残念ながら、裾裏の処理はシングルステッチのままでした。この部分は実用面を優先する米国市場のためシングルステッチのままにしたと想像しています。
アウトシームは両方共脇割りですが、処理の仕方が異なります。新モデルの方が細かい割縫いになっています。また、糸の色も従来の白から紺系の色となりました。
この部分については、新しいデザインを採用しています。ロールアップしたときの見栄えを考慮したのかどうかは不明です。
好みにもよりますが、新鮮で良いのではないかと思います。
以上が主なディテール上の変更点です。正直、ここまで変更されていることに驚きました。ステッチ中心の細かなディテール変更ではありますが、501の歴史の中でもかなり大幅な変更であると言えます。
これらのディテールはジーンズ愛好家が好む、こだわる部分であり、これまでプレミアムラインや防縮加工デニム使用の一部製品でのラインで採用された事はありましたが、今回は伝統の生デニム使用する超定番の501STFであり、画期的なことだと思います。
また、これらの変更については、アメリカ市場のユーザーのほとんどは気にしない様な箇所です。逆に、日本市場においては、非常に魅力的なディテールへの変更であると言えます。
この記事を書いている段階では、リーバイスジャパンでは本品は取り扱っていません。
米国モデルを輸入して販売しているお店では扱っているところもあるかと思いますが、従来品の在庫がある場合は、まだ従来品を販売しているところも少なくない様に思います。
ロングホーンインポートでこれから取り寄せる品については、原則、全て新モデルの方で対応する予定です。
私が最近はいているのは、従来モデルでも、アーキュエットステッチが浅くて、アウトシームが新モデルと同タイプです。
返信削除少しずつ色んなものが混在して変わっていくのでしょうか。
501、面白いですね。
そういえば、03501は評判が良くなかったのか、デッドストックも全く見ませんね。妙に太く、私は好きではなかった501ですが。
kakashi@さん、
返信削除コメントありがとうございます。この新しい仕様、特にアウトシームがシングルステッチなものは防縮加工済みのデニムを使用した501オリジナルの方ではしばらく前からあった様です。
お持ちのものはシュリンクトゥフィットでしたでしょうか?それともオリジナル(プリシュランク)でしょうか?
501はその時代ごとに少し仕様が変わってきています。変更時は、おっしゃる様に混在する場合もあると思います。
2003年は米国内工場の全閉鎖等、リーバイスにとってかなり困難で混迷を極めた時期でした。私は当時のジャパン企画の501(03501の一つ前だと思います)は結構好きです。
しかし、リーバイスが米国内工場を全て閉鎖したのは、結果として戦略的な大きな判断ミスであったことは明らかだと思います。
古い記事にコメントさせて頂きます。
返信削除1本目のRIGIDの501でいろいろお勉強して、ちょうど今2本目の501が届いた物です。
1本目と2本目を比べていたところ、違いが多すぎてパチモンでも掴まされたかと思っていました(笑
意識はしていなかったのですが、従来型から新型の違いをこれからゆっくり味わっていきたいと思います。
大変参考になりました。ありがとうございました。
ちなみにどちらもRIGIDで従来型はハイチ産、新型はメキシコ産です。
返信削除@ANtheM さん、
返信削除コメントありがとうございます。私のブログの場合、昔の記事にアクセスする方が多く、1年以上前の記事にコメントを頂く場合もあります。と言うことで、こちらとしては、違和感はございません。
今回の仕様変更はディテール面(主にステッチですが)かなり大幅な変更なので、おっしゃる様に前のモデルを持っていらっしゃる方で仕様変更があったことを知らずに受け取った場合、違いの多さに驚かれると思います。
シルエットの方は変わりない様ですが、生地がどうなのか興味があります。私も近いうちに新仕様の穿き込みを始める予定です。
同じ仕様のモデルでも、生産国による差(細かいところでの印象の差)も感じる場合もあります。
私のこれまでの印象ではメキシコ製は比較的、質感的に安定していると思っています。
機会がありましたら、新仕様のご感想等教えて下さい。
今後ともよろしくお願い致します。
お返事を下さるのが早くてビックリしました。
返信削除個人的にロールアップして穿くのが好きなので従来のものよりステッチが目立ち、裏地とのコントラストが気に入っています。
早速従来型との違いを楽しんでます。
こちらこそよろしくお願いします(゚∀゚*)
@ANtheM さん、
返信削除お返事ありがとうございます。新仕様の脇割りはおっしゃる様に裏地とのコントラストがあって、ロールアップするとアクセントになると思います。
ロールアップを意識した変更だったのかは分かりませんが、ロールアップする場合はプラスと感じる人の方が多いと思います。
今回の脇割り仕様の方がアウトシームのアタリも付き易いかなと思っていますが、穿き込んでみないと分かりません。
他にもステッチ等で印象が変わるところがあるので、従来仕様との違い、確かに楽しめそうですね。
昨日寝るまで穿いていたところ、大きな?違いを発見しました。
返信削除ボタンフライの個数が従来型の4つから、新型は3つに変更されていました。
やはり様々な箇所が変わっていますね。
パッと見はわかりませんが、よく見ると大きくモデルチェンジしていることが実感できます。
見えないところですが、それは大きな違いですね!ちなみにウエストのサイズはおいくつか、差し支えない様でしたら教えて下さい。
返信削除私の認識ではウエスト29インチ以下では従来からフライボタンは3個、トップボタン込みで計4個で、30インチ以上になるとフライボタンが4個と認識しております。(さらに大きいウエストは5個)
頂いたコメントから、もしかすると従来よりも大きいウエストサイズもフライボタンを3個に仕様変更したのかもしれないと考えております。
そうなんですか?!
返信削除そうなると丁度前回が30インチで今回が29インチなので、従来通りですね(笑
まだまだヒヨッコですねwww
なるほど、前回は30インチ、今回は29インチだったのですね。そこでフライボタンの数が変わるので、驚かれた事と思います。
返信削除これはそれ程知られていない事です。30インチ以上の人はフライボタンが4つが普通。29インチ以下の人にとっては、フライボタンは3つが普通。と感じているので、その境目にいる人以外はあまり気づかないことだと思います。(笑)
そういえばそうですね!
返信削除貴重な体験をしたと思っておきますw
本音をいうと29インチよりもっと小さいものが欲しかったのですが、在庫がなくて… ジャストサイズで穿き慣らしたかったので(・ω・`)
ウエストって上限下限はどれくらいまであるんですが?
昔はウエストが小さいサイズもあったのですが、今は28インチが下限です。しかも、実寸はそれより2インチ以上大きいので、実質的なサイズ差はかなりあります。
返信削除上限は60インチ(!)まであります。
下限は28インチなんですね。
返信削除60インチ(笑
さ流石アメリカというところでしょうか。
ウエスト+2インチは聞いたことありますね。
でもレングスは変わらないんですよね(・A・)
コメントの返事が大変遅れてしまい、申し訳ありません。補足すると、取り扱う代理店にもよります。46インチまでのところもあります。最大は60インチです。でも、60インチだと縮みももの凄いでしょうが…
返信削除ウエストに対して2インチ大きいのは恐らく80年代の終わり頃位から始まったのだと思います。その前まではそこまで表記と実寸に差がなかったと理解しています。
はじめまして。
返信削除いつも大変興味深く読ませていただいてます!
この度、出張でサンフランシスコに来ましたので、現地のリーバイスストアで501を購入しました。celtic repairsという、おそらく日本では取り扱っていないモデルです。ウエスト30インチですが、フライボタンの数は3つでした。やはり2013からはボタンの数も変更されてるんでしょうか。
サンフランシスコでは、リーバイスのジーンズを履いている方の割合が日本よりも多いようで、何となく嬉しいです。
はじめまして。コメントありがとうございます!
返信削除サンフランシスコのリーバイスストアで501をご購入されたのですね!
501のフライボタンの数は、29インチ以下は3つ、30インチ以上は4つとなる(29から30で変わる)のがかなり長い期間続いていたと認識しています。洗い加工、ユーズド加工が施されたモデルなどでは、異なる可能性もあります。
ユーズド加工すると大きく縮む様なので、加工した後にウエストサイズを確定する場合もあると思います。(パッチ等の状態で判別はつきます。)縮みを見込んでいるので元々は大きい29インチ(の予定)として作られたもので、仕上がりの状態で表記30インチになった可能性もあると思います。
お店にある同じ色・celtic repairsの30インチの全てがボタン3つであれば、30インチはフライボタン3つの仕様だと確認できると思いますが、もう無理ですよね。(笑)
サンフランシスコはリーバイスの本拠地です。リーバイスのジーンズを穿いている人が多い様とのこと、嬉しく思います!