ご存知の方も多いと思いますが、国内ジーンズメーカー最大手のエドウインが11月26日に事業再生ADR手続きの利用を申請したとのニュースが発表されました。インターネット上で見ると、エドウイン倒産としてこの発表を受け取っている様な認識が多い様に思います。実際に、東京商工リサーチのサイト上では、倒産速報のところに本件のニュースが載せられています。
倒産と言うのは、(国語辞典によると)”企業が経営資金のやりくりがつかなくなってつぶれること。企業が不渡手形などを出して銀行から取引停止を受け、営業困難に陥ること。”です。
(追記:上記、「倒産」の定義は国語辞典から引用しました。倒産と言う言葉自体は、法律用語ではありませんが、主に企業が経済的に破綻した場合に使われる事実状態を表す用語です。倒産処理制度は大きく分けて、①清算型と②再建型があります。前者の代表的な制度は破産、②の代表的な制度は会社更生、民事再生です。事業再生ADRも②の再建型の制度のひとつです。法律的な解釈としてはエドウインが倒産したことになります。そのため、東京商工リサーチでもその様な取り扱いとなっていると思われます。倒産と言うと①の清算して解散するのイメージがあり、国語辞典でも上記の様な説明があったため、その様に書きました。表現が十分でなく、いたらなかった事をお詫び致します。尚、今回の場合は不渡り手形を出している訳ではなく、また、債権者との話し合いが持たれているので、経済的に破綻した状態であるかは解釈が分かれるところであると思います。)
以下今回エドウインが申請したADR制度について、経済産業省の説明からの抜粋です。
”事業再生ADRは、 過剰債務に悩む企業の問題を解決するために生まれた制度です。中立的立場にある専門家の下で金融債権者・債務者の調整を行い、さらに、債務免除に伴う税負担を軽減するとともに、つなぎ資金の融資を円滑化します。 ”
引用、以上。
と言うことで、現時点では事業再生ADRを申請したのであって、倒産したわけではありません。エドウイン社も本発表後のニュースの取り扱われ方等から、”弊社の事業再生ADRの利用申請について、倒産手続であるかのような誤解を招く報道等が一部でなされておりますが、事業再生ADR手続は倒産手続ではございません。”の旨のニュースリリースを発表しています。
尚、申請しても認可されない、または、認可されたが結果的に事業再生に成功せずに結果的に倒産する可能性はあります。
(追記2:倒産の定義、解釈として、上記文章で使用している”倒産”は経済的に破綻後、①の清算型の制度適用の方向ではないことと註釈させていただきます。)
ネット上で見られる本件についての話は主に上述、東京商工リサーチのリリースの説明が元なので、ここでも以下に引用し紹介致します。
エドウインは、国内ジーンズメーカー最大手、エドウィングループの中核企業。昭和22年、繊維製品を販売する「常見米八商店」として創業し、44年9月にエドウインが設立された。いわゆる「アメカジブーム」を追い風としてジーンズメーカーとして業容を拡大し、63年5月には製造部門を(株)エドウィン商事(TSR企業コード:295130784、同所)として分離。国内グループ企業28社を擁し、生産拠点は東北を中心に12カ所にのぼっている。
グループで「EDWIN」ブランドを中心とするジーンズを製造、販売し、取り扱いブランドは「EDWIN」のほか「SOMETHING」、「C-SEVENTEEN」、「Gold Rush」など。「EDWIN」の「503」拡販に際してはハリウッドの人気俳優のブラッド・ピットを起用したことで話題を呼んだ。また、オリジナルブランドに加え、米国3大ジーンズブランドの一角を占める「LEE」、「Wrangler」の日本における商権を獲得し、売上高は卸売部門のエドウインが平成25年5月期で約261億円、企画・製造部門のエドウィン商事が24年1月期で約300億円をあげていた。しかし、ファストファッションの台頭に加え、東日本大震災の影響などから近年の業績は伸び悩んでいた。また、デリバティブ損失の発生なども噂されていた。
こうしたなか24年8月、グループの経理責任者が急死し、その原因が証券投資の失敗などによる200億円の損失隠しにあることが報じられた。その損失発生に関連して、不適切な会計処理が行われていた可能性があるとして第三者委員会が設置され、これに伴い、グループ全体の動向が注目されていた。その後、取引銀行による10数回にわたるバンクミーティングを開き経営再建策を模索していたが、取引銀行の間でも意向の足並みがそろわず、再建計画の策定がなかなか進んでいなかった。
一方、今年10月21日には都内で取引先約130社を集め説明会を開催。席上では、エドウインのフィナンシャルアドバイザーである野村総研から、業績や資金繰りに問題がないことが伝えられたが、具体的な再建策などについて詳しい説明がなく、関係先の間では困惑の声もあがっていた。
すでに返済の一時停止は行われているが、今回の事業再生ADR申請は第三者的な検証を目的としたもの。再建計画についても同様に検証されていく予定。今後、継続しているスポンサー選定とともにエドウィングループの再建に向けての動向が注目される。
(東京商工リサーチ:http://www.tsr-net.co.jp/news/flash/1242850_1588.html)
エドウインの債務問題については、昨年から問題が明らかになっていました。以下、2013年1月26日の週間東洋経済の記事の冒頭部を引用します。
ジーンズ専業メーカーが苦境に立たされている。その筆頭が国内最大手のエドウインだ。2012年8月に約700億円の粉飾決算をしていたことが明らかになった。投資好きと言われる社長の下、多額のデリバティブ取引によって、リーマンショック以降に投資損失が急拡大、金融機関に示していた純資産は500億円だったが、実値は197億の債務超過だった。デリバティブの含み損324億円も含めると債務超過額は521億円に上る。
エドウインは今後、債務減免を前提に支援企業による事業再建を進めたい考えで、大口取引先である伊藤忠商事のほか、豊田通商、ワールドの3社が支援に名乗り上げていてる。1月25日に開かれる取引銀行側のミーティングまでに支援企業を選定し、再建計画を提出する見通しだ。ただ、銀行間で再建の方針が一致しておらず、余談を許さない状況が続いている。
(ソース:週間東洋経済)
上記の記事等の内容をまとめると、以下の様になります。
また、10月21日に行われた取引先への説明会において、ファイナンシャルアドバイザーの野村総研から、業績や資金繰りに問題ない事が伝えられたとあります。つまり、資金繰りに問題が無いということは、支援する企業がいる事になります。業績が悪ければ、支援しようとする企業は及び腰になります。このことからも間接的ですが、業績は堅調である事がうかがわれます。
もちろん資金繰りに苦しんでいる企業であっても、資金繰りに問題が無いと対外的に言う場合もあります。ただ、今回の場合、問題の根本は巨額の投資損失である事が明らかになっています。
本業の業績が悪い場合は、倒産の可能性が高いですが、本業がある程度安定していて利益が見込めるのであれば、再生できる可能性は高いです。エドウインの問題は債務が巨額であり、その債務の減免などの条件面で債権者である銀行と話がまとまっていないと言うことになります。
今回の問題の根源が本業の業績ではないところが大きなポイントだと思います。つまり、このエドウインの債務超過の問題は、国内のジーンズ市場におけるエドウインの業績が悪化して起こっている訳ではないのです。
国内のジーンズ市場全体の売り上げベースの市場規模は1兆円を安定して超えています。国内ジーンズメーカー最大手としての販売力、ブランド、企画力は依然として高いと思います。
と言うことで、本業に隠された大きな問題がなく、さらにまだ明らかになっていない債務等の問題が潜んでいないのであれば、再生は十分に実現可能であると私は思います。
倒産と言うのは、(国語辞典によると)”企業が経営資金のやりくりがつかなくなってつぶれること。企業が不渡手形などを出して銀行から取引停止を受け、営業困難に陥ること。”です。
(追記:上記、「倒産」の定義は国語辞典から引用しました。倒産と言う言葉自体は、法律用語ではありませんが、主に企業が経済的に破綻した場合に使われる事実状態を表す用語です。倒産処理制度は大きく分けて、①清算型と②再建型があります。前者の代表的な制度は破産、②の代表的な制度は会社更生、民事再生です。事業再生ADRも②の再建型の制度のひとつです。法律的な解釈としてはエドウインが倒産したことになります。そのため、東京商工リサーチでもその様な取り扱いとなっていると思われます。倒産と言うと①の清算して解散するのイメージがあり、国語辞典でも上記の様な説明があったため、その様に書きました。表現が十分でなく、いたらなかった事をお詫び致します。尚、今回の場合は不渡り手形を出している訳ではなく、また、債権者との話し合いが持たれているので、経済的に破綻した状態であるかは解釈が分かれるところであると思います。)
以下今回エドウインが申請したADR制度について、経済産業省の説明からの抜粋です。
”事業再生ADRは、 過剰債務に悩む企業の問題を解決するために生まれた制度です。中立的立場にある専門家の下で金融債権者・債務者の調整を行い、さらに、債務免除に伴う税負担を軽減するとともに、つなぎ資金の融資を円滑化します。 ”
引用、以上。
と言うことで、現時点では事業再生ADRを申請したのであって、倒産したわけではありません。エドウイン社も本発表後のニュースの取り扱われ方等から、”弊社の事業再生ADRの利用申請について、倒産手続であるかのような誤解を招く報道等が一部でなされておりますが、事業再生ADR手続は倒産手続ではございません。”の旨のニュースリリースを発表しています。
尚、申請しても認可されない、または、認可されたが結果的に事業再生に成功せずに結果的に倒産する可能性はあります。
(追記2:倒産の定義、解釈として、上記文章で使用している”倒産”は経済的に破綻後、①の清算型の制度適用の方向ではないことと註釈させていただきます。)
ネット上で見られる本件についての話は主に上述、東京商工リサーチのリリースの説明が元なので、ここでも以下に引用し紹介致します。
エドウインは、国内ジーンズメーカー最大手、エドウィングループの中核企業。昭和22年、繊維製品を販売する「常見米八商店」として創業し、44年9月にエドウインが設立された。いわゆる「アメカジブーム」を追い風としてジーンズメーカーとして業容を拡大し、63年5月には製造部門を(株)エドウィン商事(TSR企業コード:295130784、同所)として分離。国内グループ企業28社を擁し、生産拠点は東北を中心に12カ所にのぼっている。
グループで「EDWIN」ブランドを中心とするジーンズを製造、販売し、取り扱いブランドは「EDWIN」のほか「SOMETHING」、「C-SEVENTEEN」、「Gold Rush」など。「EDWIN」の「503」拡販に際してはハリウッドの人気俳優のブラッド・ピットを起用したことで話題を呼んだ。また、オリジナルブランドに加え、米国3大ジーンズブランドの一角を占める「LEE」、「Wrangler」の日本における商権を獲得し、売上高は卸売部門のエドウインが平成25年5月期で約261億円、企画・製造部門のエドウィン商事が24年1月期で約300億円をあげていた。しかし、ファストファッションの台頭に加え、東日本大震災の影響などから近年の業績は伸び悩んでいた。また、デリバティブ損失の発生なども噂されていた。
こうしたなか24年8月、グループの経理責任者が急死し、その原因が証券投資の失敗などによる200億円の損失隠しにあることが報じられた。その損失発生に関連して、不適切な会計処理が行われていた可能性があるとして第三者委員会が設置され、これに伴い、グループ全体の動向が注目されていた。その後、取引銀行による10数回にわたるバンクミーティングを開き経営再建策を模索していたが、取引銀行の間でも意向の足並みがそろわず、再建計画の策定がなかなか進んでいなかった。
一方、今年10月21日には都内で取引先約130社を集め説明会を開催。席上では、エドウインのフィナンシャルアドバイザーである野村総研から、業績や資金繰りに問題がないことが伝えられたが、具体的な再建策などについて詳しい説明がなく、関係先の間では困惑の声もあがっていた。
すでに返済の一時停止は行われているが、今回の事業再生ADR申請は第三者的な検証を目的としたもの。再建計画についても同様に検証されていく予定。今後、継続しているスポンサー選定とともにエドウィングループの再建に向けての動向が注目される。
(東京商工リサーチ:http://www.tsr-net.co.jp/news/flash/1242850_1588.html)
エドウインの債務問題については、昨年から問題が明らかになっていました。以下、2013年1月26日の週間東洋経済の記事の冒頭部を引用します。
ジーンズ専業メーカーが苦境に立たされている。その筆頭が国内最大手のエドウインだ。2012年8月に約700億円の粉飾決算をしていたことが明らかになった。投資好きと言われる社長の下、多額のデリバティブ取引によって、リーマンショック以降に投資損失が急拡大、金融機関に示していた純資産は500億円だったが、実値は197億の債務超過だった。デリバティブの含み損324億円も含めると債務超過額は521億円に上る。
エドウインは今後、債務減免を前提に支援企業による事業再建を進めたい考えで、大口取引先である伊藤忠商事のほか、豊田通商、ワールドの3社が支援に名乗り上げていてる。1月25日に開かれる取引銀行側のミーティングまでに支援企業を選定し、再建計画を提出する見通しだ。ただ、銀行間で再建の方針が一致しておらず、余談を許さない状況が続いている。
(ソース:週間東洋経済)
上記の記事等の内容をまとめると、以下の様になります。
- 本件の問題が明らかになったのは2012年8月に700億円の巨額の粉飾決算をしていた事がきっかけである。
- 債務超過額は521億円にも上る。そのほとんどは投資の損失でデリバティブの含み損だけで324億円もある。
- この様な巨額の債務超過にも関わらず複数の企業が支援に名乗りを上げている(いた) 。
- 直近の売り上げとしては、卸売り部門のエドウインが2013年5月期で261億円。企画・製造部門のエドウィン商事が2012年1月期で約300億円。
- 再建計画について、10数回取引銀行側とミーティングを行ったが、取引銀行間でも意見がまとまらず、第3者の検証、監督の元に調整を行い再生を目指すADR申請に至った。
また、10月21日に行われた取引先への説明会において、ファイナンシャルアドバイザーの野村総研から、業績や資金繰りに問題ない事が伝えられたとあります。つまり、資金繰りに問題が無いということは、支援する企業がいる事になります。業績が悪ければ、支援しようとする企業は及び腰になります。このことからも間接的ですが、業績は堅調である事がうかがわれます。
もちろん資金繰りに苦しんでいる企業であっても、資金繰りに問題が無いと対外的に言う場合もあります。ただ、今回の場合、問題の根本は巨額の投資損失である事が明らかになっています。
本業の業績が悪い場合は、倒産の可能性が高いですが、本業がある程度安定していて利益が見込めるのであれば、再生できる可能性は高いです。エドウインの問題は債務が巨額であり、その債務の減免などの条件面で債権者である銀行と話がまとまっていないと言うことになります。
今回の問題の根源が本業の業績ではないところが大きなポイントだと思います。つまり、このエドウインの債務超過の問題は、国内のジーンズ市場におけるエドウインの業績が悪化して起こっている訳ではないのです。
国内のジーンズ市場全体の売り上げベースの市場規模は1兆円を安定して超えています。国内ジーンズメーカー最大手としての販売力、ブランド、企画力は依然として高いと思います。
と言うことで、本業に隠された大きな問題がなく、さらにまだ明らかになっていない債務等の問題が潜んでいないのであれば、再生は十分に実現可能であると私は思います。
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