アメリカの映画やテレビドラマなどを見ていると、時折、プランA、プランBと言う様な言葉が使われたりします。(日本の映画やテレビ番組でも使われているかもしれません。)
アメリカは戦術や計画を立てて、勝負・ゲームに挑むことを好む文化があります。このアメリカ文化の性格・性質を代表する例としては、アメリカン・フットボールがあります。
色々なフォーメーション、戦術、複数のプランを用意して、ゲームに臨みます。試合中も、その時々の状況に応じて、戦術やプランを変更して戦います。
この様な手法は、アメリカンフットボールだけでなく、ビジネスの世界でも使われます。
また、出口戦略(Exit Strategy)と呼ばれるものもあります。
出口戦略は、ある目的を達成するために取り組んだものの計画通りに進まず、目的を達成できる見込みが薄くなった時、どのようにして収束・退却させるかについての方法、手段などを意味します。
実際のところアメリカでは、それほど綿密に計画を立てて、計画を遂行することは少なく、大雑把な計画で、それを実行することの方が多いです。
良い言い方をすると『実際に計画を実行してみて、状況に応じて臨機応変に対処する。』、アプローチです。
悪い言い方をすると、『それ程、深く考えずに思いつきでやってみて、場当たり的に対応する。』様な表現になります。
良くも悪くも、アメリカの文化の一面、特徴の一つです。
2015年1月5日に、米リーバイスは大々的に501CTを発表、直ちに発売開始しました。
関連ブログ記事:
140年前に誕生して以来の501最大の出来事とは?
501CT 製品戦略についての考察
それから約2ヶ月が経過しました。この間に目に留まった興味深いことについていくつか紹介します。
2月4日にリーバイス本社のブログUNZIPPEDに”CUSTOMERS ASKED, KARYN HILLMAN ANSWERED: THE STORY BEHIND THE LEVI’S 501 CT”のタイトルの記事が投稿されました。
記事の内容はタイトルにあるように、501CT誕生の背景について、顧客がテーパードの501を求めていることに対する回答であると、リーバイス社のチーフ・プロダクト・オフィサーのKaryn Hillmanさんの話が書かれています。
1月に本ブログで、”501CTとリーバイスの社内事情・中心人物についての推測”でも501CTを推進しているのは、Hillmanさんであるとの記事を投稿しています。
オフィサーのタイトルは、日本で言うところの役員クラスです。かなりの権限があります。
アメリカの会社の場合、担当する人、権限を持つ人によって、会社自体の製品戦略や取り組みが大きく変わることは珍しくありません。
Hillmanさんは、2013年の夏にリーバイス社に入社しています。彼女はGapとカルバンクラインジーンズの製品企画などに長年携わってきた経歴を持っています。
現在のリーバイス社の注力分野の一つは、女性市場です。
501CTは、Hillmanさんがリーバイスに入って、手がけた肝いりのプロジェクトであると思います。
501CTが成功すれば、彼女は社内、社外から非常に高い評価を得ることができます。アメリカのビジネスにおいて、社内外から大きな評価を得ることは、社会的にも成功する鍵となります。
そのため、アメリカ人のビジネスマン、ビジネスウーマンは、自分が手がけたプロジェクトであることをアピールする傾向があります。
しかし、その一方で成功しなかった場合は、マイナスイメージになる場合もあります。(アメリカは失敗を恐れない文化があるので、失敗したからといって、必ずしもマイナスにはならない場合もあります。)
上で紹介したリーバイス社のブログ記事等、501CTでの彼女の露出はかなり目立ちます。
501CTが確実に成功したと一般に評価された後で、彼女が推進したプロジェクトであったことをアピールすれば、後でも社外的な評価の獲得は可能であり、発表直後からあまり表に出すぎる(露出が多い)のは、成功しなかった時のリスクを考えるとあまり賢明ではないのではと思っていました。
この辺はその人の考え方に大きく依存することであり、また、どれが良いと一概に言えるものではありません。あくまでも、私の個人的な意見です。
501CTが期待した程の売り上げを上げることができなかった。ユーザーからもあまり評価されなかった。となる可能性もあります。
冒頭に書いたように、まずは計画を実行して、その後の状況に応じて、別のプランに移行したり、出口戦略に切り替えるなどの対応が求められます。
501CT発表後のリーバイスの動向を見ていて、おやっ?と思うことがいくつかありました。それらについて紹介します。
普通の501を自分でテーパードに変更することは、501CTと相反するアプローチだと思います。
大きな目で見れば、テーパードの501の促進となりますが、501CTの売り上げ促進にはマイナスの要素が多いと思います。
以下は、米リーバイスのTwitterアカウントのツイートです。
添付のリンクをクリックすると、リーバイスと高級衣料ネット販売のNet-a-Porterが共同で、リーバイス 501 CTの限定版を3月2日に発売するとの紹介記事が表示されます。
セルビッジデニムを使用して、サンフランシスコで製作。一本、380ドルです。女性用です。
値段も非常に高いので、数も限られたものだと思います。501 CTの名前を使っているところが興味深いです。
CTは、カスタマイズ、テーパード(Customized Tapered)の意味から名付けられています。
現在量産販売している501CTは、カスタマイズの名前を汎用品のラインで使っていますが、将来的にはカスタム・テイラード(そして、テーパード)の501CTの展開を見据えているのかもしれません。
2月23日にVOGUEが"You Need a Pair of Expertly Tailored Levi’s 501s: Here’s Why"と言うタイトルのブログ記事を投稿しました。
この記事は、リーバイスのEureka Innovation Lab(ユーリカ研究所・実験所)に訪問して、ヴィンテージ(過去に生産された)501をカスタマイズすることについての記事です。
この記事では、女性の間で、過去に販売された501を使ったカスタムジーンズが大きな流行となりつつあることについて言及しています。
ユーリカ研究所には多量のユーズドの501があり、それをカスタマイズしたりしています。
本記事では現在販売中の501CTについては、一切言及していません。
ご存知の通り501CTは、伝統的な501のシルエットをテーパードに変更した製品です。
この記事の中で登場する人たちが穿いているのは、80年代頃の501のカスタムです。
この記事を読んで、古いユーズドの501に興味を持つ人はいると思いますが、現在発売中の501CTが欲しいと思う人はまずいないと思います。
面白いのは、リーバイスのTwitterアカウントが盛んにこのVOGUEの記事を紹介していることです。501CTを売りたいのであれば、あまり積極的に紹介しない方が良いように思います。
実際、現在の501CTの売れ行きがどうなのか?リーバイス社内での501CTについての状況がどうなのかは、社外の人間である私は全く分かりません。
しかし、2月に入ってからのリーバイスの動向などを見ていると既に501CTは別のプラン、あるいは出口戦略へと切り替わっているように思います。
アメリカは戦術や計画を立てて、勝負・ゲームに挑むことを好む文化があります。このアメリカ文化の性格・性質を代表する例としては、アメリカン・フットボールがあります。
色々なフォーメーション、戦術、複数のプランを用意して、ゲームに臨みます。試合中も、その時々の状況に応じて、戦術やプランを変更して戦います。
この様な手法は、アメリカンフットボールだけでなく、ビジネスの世界でも使われます。
また、出口戦略(Exit Strategy)と呼ばれるものもあります。
出口戦略は、ある目的を達成するために取り組んだものの計画通りに進まず、目的を達成できる見込みが薄くなった時、どのようにして収束・退却させるかについての方法、手段などを意味します。
実際のところアメリカでは、それほど綿密に計画を立てて、計画を遂行することは少なく、大雑把な計画で、それを実行することの方が多いです。
良い言い方をすると『実際に計画を実行してみて、状況に応じて臨機応変に対処する。』、アプローチです。
悪い言い方をすると、『それ程、深く考えずに思いつきでやってみて、場当たり的に対応する。』様な表現になります。
良くも悪くも、アメリカの文化の一面、特徴の一つです。
2015年1月5日に、米リーバイスは大々的に501CTを発表、直ちに発売開始しました。
関連ブログ記事:
140年前に誕生して以来の501最大の出来事とは?
501CT 製品戦略についての考察
それから約2ヶ月が経過しました。この間に目に留まった興味深いことについていくつか紹介します。
2月4日にリーバイス本社のブログUNZIPPEDに”CUSTOMERS ASKED, KARYN HILLMAN ANSWERED: THE STORY BEHIND THE LEVI’S 501 CT”のタイトルの記事が投稿されました。
記事の内容はタイトルにあるように、501CT誕生の背景について、顧客がテーパードの501を求めていることに対する回答であると、リーバイス社のチーフ・プロダクト・オフィサーのKaryn Hillmanさんの話が書かれています。
オフィサーのタイトルは、日本で言うところの役員クラスです。かなりの権限があります。
アメリカの会社の場合、担当する人、権限を持つ人によって、会社自体の製品戦略や取り組みが大きく変わることは珍しくありません。
Hillmanさんは、2013年の夏にリーバイス社に入社しています。彼女はGapとカルバンクラインジーンズの製品企画などに長年携わってきた経歴を持っています。
現在のリーバイス社の注力分野の一つは、女性市場です。
501CTは、Hillmanさんがリーバイスに入って、手がけた肝いりのプロジェクトであると思います。
501CTが成功すれば、彼女は社内、社外から非常に高い評価を得ることができます。アメリカのビジネスにおいて、社内外から大きな評価を得ることは、社会的にも成功する鍵となります。
そのため、アメリカ人のビジネスマン、ビジネスウーマンは、自分が手がけたプロジェクトであることをアピールする傾向があります。
しかし、その一方で成功しなかった場合は、マイナスイメージになる場合もあります。(アメリカは失敗を恐れない文化があるので、失敗したからといって、必ずしもマイナスにはならない場合もあります。)
上で紹介したリーバイス社のブログ記事等、501CTでの彼女の露出はかなり目立ちます。
501CTが確実に成功したと一般に評価された後で、彼女が推進したプロジェクトであったことをアピールすれば、後でも社外的な評価の獲得は可能であり、発表直後からあまり表に出すぎる(露出が多い)のは、成功しなかった時のリスクを考えるとあまり賢明ではないのではと思っていました。
この辺はその人の考え方に大きく依存することであり、また、どれが良いと一概に言えるものではありません。あくまでも、私の個人的な意見です。
501CTが期待した程の売り上げを上げることができなかった。ユーザーからもあまり評価されなかった。となる可能性もあります。
冒頭に書いたように、まずは計画を実行して、その後の状況に応じて、別のプランに移行したり、出口戦略に切り替えるなどの対応が求められます。
501CT プランB/バックアップ・プランに移行?
501CT発表後のリーバイスの動向を見ていて、おやっ?と思うことがいくつかありました。それらについて紹介します。
1. リーバイスのYouTube公式アカウントが、"How to Taper Your 501 Jeans" 、501を自分でテーパードに変更するやり方のビデオを投稿。
普通の501を自分でテーパードに変更することは、501CTと相反するアプローチだと思います。
大きな目で見れば、テーパードの501の促進となりますが、501CTの売り上げ促進にはマイナスの要素が多いと思います。
2. 新しい限定版501CTの発売予告
以下は、米リーバイスのTwitterアカウントのツイートです。
添付のリンクをクリックすると、リーバイスと高級衣料ネット販売のNet-a-Porterが共同で、リーバイス 501 CTの限定版を3月2日に発売するとの紹介記事が表示されます。
When @levis and @netaporter get together, REALLY good things happen: http://t.co/wXCfd2Z1N8 pic.twitter.com/IKhFNuK8qH
— The Zoe Report (@thezoereport) February 27, 2015
セルビッジデニムを使用して、サンフランシスコで製作。一本、380ドルです。女性用です。
値段も非常に高いので、数も限られたものだと思います。501 CTの名前を使っているところが興味深いです。
CTは、カスタマイズ、テーパード(Customized Tapered)の意味から名付けられています。
現在量産販売している501CTは、カスタマイズの名前を汎用品のラインで使っていますが、将来的にはカスタム・テイラード(そして、テーパード)の501CTの展開を見据えているのかもしれません。
3. 女性向けファッション誌VOGUEの記事
2月23日にVOGUEが"You Need a Pair of Expertly Tailored Levi’s 501s: Here’s Why"と言うタイトルのブログ記事を投稿しました。
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ユーリカ研究所には多量のユーズドの501があり、それをカスタマイズしたりしています。
本記事では現在販売中の501CTについては、一切言及していません。
ご存知の通り501CTは、伝統的な501のシルエットをテーパードに変更した製品です。
この記事の中で登場する人たちが穿いているのは、80年代頃の501のカスタムです。
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実際、現在の501CTの売れ行きがどうなのか?リーバイス社内での501CTについての状況がどうなのかは、社外の人間である私は全く分かりません。
しかし、2月に入ってからのリーバイスの動向などを見ていると既に501CTは別のプラン、あるいは出口戦略へと切り替わっているように思います。
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