セカンドの名で知られるリーバイスの507XXは、506XXの後継として1952年に登場したと一般的に認知されています。しかし、リーバイス社ヒストリアンのLynn Downeyさんが、2012年12月のインタビュー記事で507の登場は1953年であるとの説明を見つけました。
LEVIS VINTAGE CLOTHINGの507の説明にも1953年となっています。507の登場年が1952年ではなく1953年であるとすると、これまでの年代推定の仮定等に与える影響は少なくないと考えています。
ここでは、507の登場年が1953年とした場合、これまでの推定へどの様な影響があるのかと言ったことについて考察してみます。
尚、これから書くことは個人的な推定を含んでいます。また、年代を絞り込む程、推定や仮定の不確定度は高まります。一つ前の投稿にも書いておりますが、ある事柄についての年代の確度には差があります。
例として、以下はリーバイス社の501のタイムラインからの抜粋です。この様なリーバイス社の資料は年代を推定する上で非常に重要な情報、材料となります。
アーキュエットステッチがトレードマークとして登録、戦後のモデルの誕生と量産、ジップフライの501ZXXの登場、”オーバーオール”から”ジーンズ”の名称を変更した時期については明確な年が記載されています。
一方、両面タブの登場に関しては1950年代の初め頃(前半)、革から紙パッチへの移行は50年代の終わり頃(後半)となっており明確な年を示していません。
事柄によっては、195X年と言う様な絞り込みをすることは、それを証明する確たる証拠、材料がないと難しい場合があるためだと思います。
本記事ではあえて踏み込んだ推測を行っています。予めその旨ご了承下さい。
507の登場時期が1952年であるとする説の一つの大きな理由、根拠は片面タブが付いた507の存在だと思います。
501において片面タブから両面タブの移行は1951年頃、または1950年から1951年にかけて行われたとの認識があります。
この片面タブから両面タブへの移行期の終わり頃に最初期の507が生産されたとする説の元となっているのが507の登場が1952年頃と推定することの根拠・材料だと認識しています。
しかし、507が登場したのが1952年ではなく1953年であると仮定するとこれまでの推定とその確度に対してかなりの影響が及ぶと考えます。
”片面タブは1953年の製品に使われていた”となると、片面タブから両面タブへの移行が1951年頃だったとする説への異論を間接的に示していると思います。
製品の発表、発売よりも前に試作や生産は行われます。しかし、量産は製品発売時期とそれ程大きく離れることは通常考えられません。製品が完成した時点で、経理的にはその製品は在庫となります。在庫の保有期間が長いことは損益に大きな影響を与えます。
新製品の発表、販売開始の数ヶ月以内に量産開始と仮定するのが、当時の状況を考慮したとしても妥当であると思います。
片面タブの付いた507はそれなりの数が存在しています。このことは、片面タブ付きが試作ではなく量産品であることを示しています。
507の登場は1953年であることが事実であれば、片面タブは1953年の製品に付いていたことになります。
”片面タブは1953年の製品にも使われていた”と仮定すると、私が持っていたある疑問の答えとなる材料となります。
私がこれまで抱いていた疑問は、”501ZXXの登場年とディテールの年代の不一致”です。上に添付したリーバイス社の資料にもある通り501ZXXが登場したのは1954年です。
しかし、501ZXXにはベルトループ・センターセットのものがあり、また、片面タブが付いているものの存在も確認されています。
これらのディテールの推定年代は1954年よりも数年前のものでした。そのため、サンプルや量産試作を1952年頃に行ったのではないかと推定していました。
この疑問と推測については、フォーラムに”501ZXXの販売開始時期と年代についての疑問”として、いくつかの推測を行いその妥当性についてかなり細かい考察を行っています。ご興味のある方は、是非、ご覧になってみて下さい。
その時の妥当性・検証においても507の登場年は1952年と仮定していました。それが1953年になると妥当性、推測がかなり異なってきます。
501ZXXの発売時期が1954年の初め頃だと仮定すると、生産は1953年の終わり頃であると考えられます。そして、”片面タブは1953年の製品にも使われていた”とすれば、501ZXXに片面タブが使われていることが説明できます。
ここで、”1953年製の501にも片面タブが使われていた”ことになるのか?と言う疑問が生じます。これについては、YESの可能性もあるが、NOの可能性も多いにあると考えています。個人的には、NOだと思っています。
”501は新しいタブを他の製品に先駆けて採用する傾向がある”が個人的な仮説です。
均等Vから不均等Vへの移行の事例がこの説の根拠です。
501に不均等Vのタブが付き始めたのは、隠しリベットがない最終501XXの頃です。つまり、1965-66年頃の製品から不均等Vのタブが登場しています。
ところが、不均等Vのタブは1965-66年の製品である557では見た記憶がありません。557は基本的に全て均等Vのタブが付いています。
これだけでは十分ではないと思うのでさらに話を進めます。
501XXの後のモデルである501-501のダブルネームのタブは、私が今まで見た限り全て不均等Vです。一方、557-70505のダブルネームのタブはほぼ全て均等Vです。
このことは、均等Vから不均等Vのタブの移行時期は、501とジャケットの557/70505で異なることを示しています。
さらに着目すべきことは、タブの移行時期の差は2年程度はあることです。
このタブの移行は1960年代の話であって、それを10年以上前の1950年代のタブの移行にも当てはまるとは言い切れませんが、タブの移行時期が501とジャケットでは異なる事、そして移行時期の差は2年程度あったことは考慮する意味があると思います。
片面タブから両面タブの移行時期も501とジャケットで異なる可能性があることを示唆する事例と言えます。
言い方を変えると、片面タブが507で使用されていたからと言って、同年代の501で片面タブが使用されていたとは必ずしも言えないと言えます。
ヴィンテージリーバイスの製品を使用タブの種類から年代を推定するのは、目安にはなりますが、年代を絞り込むことは確度が非常に落ちます。また、時として参考としない場合もあります。
例えば、これらは均等Vから不均等Vへの移行完了後の後の年代の製品にも関わらず、均等Vの付いた501のビッグE(平行ステッチ、腰裏チェーン)や70505が存在します。これらのモデルでは、均等Vのタブが付いていることを年代判定の材料にはしません。
また、ビッグEからスモールeへの移行は1971年とされていますが、スモールeの付いた501 66前期で最も年代が古いものでも1973年頃です。
つまり、501についてはスモールeのタブが付けられたのは1973年頃であることを示します。この時期になると製造年を示すタグが内側に付いているため、年代判定の確度が非常に高くなります。
まとめると507が登場したのが1953年と仮定すると、501ZXXの片面タブ付きの新たな説明材料となり得る。そして、501XXの片面から両面タブの移行の年代推定を従来のものから変えなくてもかまわない。と言うことになります。
しかし、今回の仮定において、501のディテールの移行等の推定年代についてもさらに色々と検討する余地もあると思っています。
(この記事は後で再度、見直して必要に応じて、加筆修正を行う予定です。)
LEVIS VINTAGE CLOTHINGの507の説明にも1953年となっています。507の登場年が1952年ではなく1953年であるとすると、これまでの年代推定の仮定等に与える影響は少なくないと考えています。
ここでは、507の登場年が1953年とした場合、これまでの推定へどの様な影響があるのかと言ったことについて考察してみます。
尚、これから書くことは個人的な推定を含んでいます。また、年代を絞り込む程、推定や仮定の不確定度は高まります。一つ前の投稿にも書いておりますが、ある事柄についての年代の確度には差があります。
例として、以下はリーバイス社の501のタイムラインからの抜粋です。この様なリーバイス社の資料は年代を推定する上で非常に重要な情報、材料となります。
アーキュエットステッチがトレードマークとして登録、戦後のモデルの誕生と量産、ジップフライの501ZXXの登場、”オーバーオール”から”ジーンズ”の名称を変更した時期については明確な年が記載されています。
一方、両面タブの登場に関しては1950年代の初め頃(前半)、革から紙パッチへの移行は50年代の終わり頃(後半)となっており明確な年を示していません。
事柄によっては、195X年と言う様な絞り込みをすることは、それを証明する確たる証拠、材料がないと難しい場合があるためだと思います。
本記事ではあえて踏み込んだ推測を行っています。予めその旨ご了承下さい。
507の登場時期が1952年であるとする説の一つの大きな理由、根拠は片面タブが付いた507の存在だと思います。
501において片面タブから両面タブの移行は1951年頃、または1950年から1951年にかけて行われたとの認識があります。
この片面タブから両面タブへの移行期の終わり頃に最初期の507が生産されたとする説の元となっているのが507の登場が1952年頃と推定することの根拠・材料だと認識しています。
しかし、507が登場したのが1952年ではなく1953年であると仮定するとこれまでの推定とその確度に対してかなりの影響が及ぶと考えます。
”片面タブは1953年の製品に使われていた”となると、片面タブから両面タブへの移行が1951年頃だったとする説への異論を間接的に示していると思います。
製品の発表、発売よりも前に試作や生産は行われます。しかし、量産は製品発売時期とそれ程大きく離れることは通常考えられません。製品が完成した時点で、経理的にはその製品は在庫となります。在庫の保有期間が長いことは損益に大きな影響を与えます。
新製品の発表、販売開始の数ヶ月以内に量産開始と仮定するのが、当時の状況を考慮したとしても妥当であると思います。
片面タブの付いた507はそれなりの数が存在しています。このことは、片面タブ付きが試作ではなく量産品であることを示しています。
507の登場は1953年であることが事実であれば、片面タブは1953年の製品に付いていたことになります。
”片面タブは1953年の製品にも使われていた”と仮定すると、私が持っていたある疑問の答えとなる材料となります。
私がこれまで抱いていた疑問は、”501ZXXの登場年とディテールの年代の不一致”です。上に添付したリーバイス社の資料にもある通り501ZXXが登場したのは1954年です。
しかし、501ZXXにはベルトループ・センターセットのものがあり、また、片面タブが付いているものの存在も確認されています。
これらのディテールの推定年代は1954年よりも数年前のものでした。そのため、サンプルや量産試作を1952年頃に行ったのではないかと推定していました。
この疑問と推測については、フォーラムに”501ZXXの販売開始時期と年代についての疑問”として、いくつかの推測を行いその妥当性についてかなり細かい考察を行っています。ご興味のある方は、是非、ご覧になってみて下さい。
その時の妥当性・検証においても507の登場年は1952年と仮定していました。それが1953年になると妥当性、推測がかなり異なってきます。
501ZXXの発売時期が1954年の初め頃だと仮定すると、生産は1953年の終わり頃であると考えられます。そして、”片面タブは1953年の製品にも使われていた”とすれば、501ZXXに片面タブが使われていることが説明できます。
ここで、”1953年製の501にも片面タブが使われていた”ことになるのか?と言う疑問が生じます。これについては、YESの可能性もあるが、NOの可能性も多いにあると考えています。個人的には、NOだと思っています。
”501は新しいタブを他の製品に先駆けて採用する傾向がある”が個人的な仮説です。
均等Vから不均等Vへの移行の事例がこの説の根拠です。
501に不均等Vのタブが付き始めたのは、隠しリベットがない最終501XXの頃です。つまり、1965-66年頃の製品から不均等Vのタブが登場しています。
ところが、不均等Vのタブは1965-66年の製品である557では見た記憶がありません。557は基本的に全て均等Vのタブが付いています。
これだけでは十分ではないと思うのでさらに話を進めます。
501XXの後のモデルである501-501のダブルネームのタブは、私が今まで見た限り全て不均等Vです。一方、557-70505のダブルネームのタブはほぼ全て均等Vです。
このことは、均等Vから不均等Vのタブの移行時期は、501とジャケットの557/70505で異なることを示しています。
さらに着目すべきことは、タブの移行時期の差は2年程度はあることです。
このタブの移行は1960年代の話であって、それを10年以上前の1950年代のタブの移行にも当てはまるとは言い切れませんが、タブの移行時期が501とジャケットでは異なる事、そして移行時期の差は2年程度あったことは考慮する意味があると思います。
片面タブから両面タブの移行時期も501とジャケットで異なる可能性があることを示唆する事例と言えます。
言い方を変えると、片面タブが507で使用されていたからと言って、同年代の501で片面タブが使用されていたとは必ずしも言えないと言えます。
ヴィンテージリーバイスの製品を使用タブの種類から年代を推定するのは、目安にはなりますが、年代を絞り込むことは確度が非常に落ちます。また、時として参考としない場合もあります。
例えば、これらは均等Vから不均等Vへの移行完了後の後の年代の製品にも関わらず、均等Vの付いた501のビッグE(平行ステッチ、腰裏チェーン)や70505が存在します。これらのモデルでは、均等Vのタブが付いていることを年代判定の材料にはしません。
また、ビッグEからスモールeへの移行は1971年とされていますが、スモールeの付いた501 66前期で最も年代が古いものでも1973年頃です。
つまり、501についてはスモールeのタブが付けられたのは1973年頃であることを示します。この時期になると製造年を示すタグが内側に付いているため、年代判定の確度が非常に高くなります。
まとめると507が登場したのが1953年と仮定すると、501ZXXの片面タブ付きの新たな説明材料となり得る。そして、501XXの片面から両面タブの移行の年代推定を従来のものから変えなくてもかまわない。と言うことになります。
しかし、今回の仮定において、501のディテールの移行等の推定年代についてもさらに色々と検討する余地もあると思っています。
(この記事は後で再度、見直して必要に応じて、加筆修正を行う予定です。)
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