本年年明け早々の1月2日にリーバイスから以下の様なメールが届きました。
それが何かは、2015年1月5日のメールをチェックしてくださいとあります。
メッセージの最後には、"GET EXCITED"とまで書かかれています。”501が誕生して以来の最大の出来事”って何だろう?と思いました。
これに近いフレーズを2年前にリーバイスジャパンが使用したことがあります。
誕生以来、伝統的なコンセプト、ディテールを今も備え続ける501と言う他に例を見ないほどの価値のある衣料品ブランド名の製品が、140年の時を経て変わると言う大々的な宣伝でした。
501の根幹にあるブランド価値は、昔から伝統を守る=変わらないことだと私は思っています。その501に対して、”変わる”と言う言葉を強調するコピーに非常に抵抗感を覚えました。
過去にも書いていますが、このコピーを使用した2013モデル時代を否定するつもりはありません。しかし、私はこのコピー自体には、物凄い抵抗感を感じます。
冒頭で紹介した米リーバイス本社からのメールを読んで、書かれている"GET EXCITED"とは逆に不安を覚えました。
そして、3日後の1月5日、本日リーバイス社からメールが届きました。
見た瞬間に「501誕生以来の出来事って、501CTのことだったのかよ!!」と思いました。
実は私は501CTの存在は、昨年から知っていました。2014年11月に行われたリーバイスジャパンの2015年春夏展示会において、”2015年版の501として新型番501CTが発表”のニュースを見ていたためです。
以下、上の501CTの発表のリンク先、Apparel Business Magazineの記事からの引用です。
まさかその501CTをリーバイス本社までが取り扱い、しかも、キャッチコピーは『501誕生以来140年以上の中で最大の出来事が起こる!(The biggest thing to happen to the 501 jean in over 140 years)』とは、言葉を失うほどのショックでした。
注)順番としては、リーバイスジャパンの方を先に見たので、本社がジャパンの企画を後から採用したように思いましたが、後で調べてみると本社の11月初めのブログ記事でも501CTを1月発表予定とありました。今回の発表を見ても、本社主導の企画のように思います。
気を取り直して、501CTの商品ページを見てみました。
501CTは、ヒップに留まるウエスト、ゆとりのある腿部、裾にかけてテーパードがかかるのが特徴との説明があります。
メンズだけでなく、レディースも用意してあります。男女両方の商品展開、商品ページを見ると相当力を入れているように見受けられます。
商品ページには、商品企画開発の最高責任者と思われるChief Product Officerと商品企画の統括責任者と思われるグローバルデザインの上級副社長のインタビューまであります。
グローバルデザインの上級副社長は『世界中のリーバイスストアやテイラーショップで、501の裾をテーパードにする需要が高かったため、パーフェクト・カスタムテーパーの501 CTを作った。』と語っています。
501の裾をテーパードにする需要は確かにあると思います。しかし、501のテーパードへの改造は伝統的にユーザー側がアフターマーケットで行うものでした。
1950年代前半に上映された映画"The Wild One"の登場人物たちがカスタマイズした501XXを穿いて出演していることは比較的有名です。
The Wild Oneは、当時の若者文化に多大なる影響を与え、ジーンズの普及に貢献しました。また、501のシルエットを改造することも流行となりました。
自動車でもそうですが、伝統的なブランド・製品を、所有者が自分好みに改造したり、手を加えることは一般的です。
しかし、メーカーがそれを行ってしまうと、そのブランドのアイデンティティ・伝統が失われてしまう危険性があります。そして、ブランド価値の低下をもたらすことが往々にしてあります。
そのため、メーカーはブランドの伝統的な特徴・アイデンティティを変えるようなことは、通常はしません。あくまでもユーザー側、アフターマーケットの方に任せるのが通例です。
過去にもその様なことを行って伝統的なブランドが市場から姿を消えていってしまった事例は数多くあります。
リーバイスの伝統的な品番である505は、過去20年位の間に流行に合わせて極端にシルエットや股上を変更したため、長年の愛好家達が離れ、ブランド価値・存在感は低下してしまいました。
リーバイスの製品は501や505はストレート、517はブーツカット・フレアー、511はスリム(スキニー・テーパード)の様に伝統的に品番でシルエットが分かるようになっています。
517の愛好家にとって、ストレートやテーパードの517が登場したら許せないと思います。511の愛好家が、ストレートやフレアーの511が作られたら、どんな反応をするか?
品番とシルエット等の特徴の関わりは非常に重要です。一体、何を考えているのかと思います。
基本的に、アメリカは自由な発想をする文化があります。新しいことに取り組んだり、挑戦することで、従来の殻を打ち破る革新的な製品が生まれたりします。
その代わり、失敗して市場から消えてしまう製品や会社も数多くあります。
新しいことに挑戦することが全てのビジネスの解で、進むべき道ではありません。伝統を守る・アイデンティティを大切にすることで成功している会社も多くあります。
レッドウイングが良い例です。リーバイスとレッドウイングは、非常に似たところが多くあります。
しかし、90年代以降、両社の取ってきた道はかなり異なります。リーバイスは米国内の工場を全て閉鎖し、海外に生産拠点を移しました。レッドウイングは米国製であることにこだわり、海外生産も始めましたが、主力は変わらず米国製です。
リーバイスは90年代の後半から2010年位までの間、低迷と迷走を繰り返していました。
しかし、ここ2年位、勢いを取り戻しつつあります。その中核にあるのが501です。501は現在もリーバイスのフラッグシップであり、屋台骨を支える中核製品です。
個人的には、501CTは恐らく大きな成功はせずに、比較的短命に終わると思っています。
しかし、万が一、501CTがある程度成功する方が怖いです。501CTが成功して市場から一定の認知を受けると、501のスタンダードなストレートのシルエットと言うアイディンティティが失われてしまいます。
この様なジーンズも魅力あると思います。問題は名前です。501以外の名前を付ければ問題はありません。
501のシルエットとは?と聞かれて、ある人はストレート、ある人はテーパードをイメージする様になったら、ブランドのアイディンティティが希薄になっていることの証です。
米リーバイスが勢いを取り戻してきて、とても嬉しく思っていたのに、不安に駆られることとなってしまいました。
これはあくまでも私個人の考えです。考え方はひとそれぞれ異なります。当然、異なる見方、考えもあると思います。
実際、リーバイス社は501CTが良い!!と思って、これだけ力を入れているわけです。
私の不安が現実とならず、無事、収まってくれることを祈るばかりです。
(追記)501CT発表1日後、501CTのバナーのコピーが変更となっていることに気づきました。”501誕生から140年余りを経て、最大の出来事”の表示が無くなっています。
1枚目が昨日、二枚目が本日のバナーです。赤枠部にご注目下さい。
”501最大の出来事”のコピーだけは、本当に止めてほしいと思っていました。恐らく、同様の意見が続出したのではないかと思われます。
往年の501愛好家からしたら許せないようなコピーです。実際に最大の出来事として、後で世間から認められるのであれば全く別の話です。
COMING SOON
THE BIGGEST
THING TO HAPPEN
TO THE 501® JEAN
(SINCE WE INVENTED IT
OVER 140 YEARS AGO)
近々、最大の出来事が501ジーンズに起こります。
(140年以上前に誕生(我々が発明)して以来)
それが何かは、2015年1月5日のメールをチェックしてくださいとあります。
メッセージの最後には、"GET EXCITED"とまで書かかれています。”501が誕生して以来の最大の出来事”って何だろう?と思いました。
これに近いフレーズを2年前にリーバイスジャパンが使用したことがあります。
誕生以来、伝統的なコンセプト、ディテールを今も備え続ける501と言う他に例を見ないほどの価値のある衣料品ブランド名の製品が、140年の時を経て変わると言う大々的な宣伝でした。
501の根幹にあるブランド価値は、昔から伝統を守る=変わらないことだと私は思っています。その501に対して、”変わる”と言う言葉を強調するコピーに非常に抵抗感を覚えました。
過去にも書いていますが、このコピーを使用した2013モデル時代を否定するつもりはありません。しかし、私はこのコピー自体には、物凄い抵抗感を感じます。
冒頭で紹介した米リーバイス本社からのメールを読んで、書かれている"GET EXCITED"とは逆に不安を覚えました。
そして、3日後の1月5日、本日リーバイス社からメールが届きました。
見た瞬間に「501誕生以来の出来事って、501CTのことだったのかよ!!」と思いました。
実は私は501CTの存在は、昨年から知っていました。2014年11月に行われたリーバイスジャパンの2015年春夏展示会において、”2015年版の501として新型番501CTが発表”のニュースを見ていたためです。
以下、上の501CTの発表のリンク先、Apparel Business Magazineの記事からの引用です。
CTとは"カスタマイズテーパード"の頭文字をとったもの。国内唯一のカスタマイズを承るリーバイス®ストア新宿店4階の「テーラーショップ シンジュク」には、これまで「501®」をベースに"テーパード"シルエットにカスタマイズするお客さまが多かったことからインスピレーションを受け、新たな型番として「501®CT」を作ることとなった。ウエストのサイズは従来の「501®」よりも1サイズ大きくし、裾は6cm細くすることで、ひざ下から足首にかけでテーパードさせた特徴的なシルエットになっている。発売は2015年2月末から開始される予定だ。この発表を見た時、『リーバイスジャパンはまだ懲りもせず、こんなことをしているのか!?501をどれ程、傷つければ気がすむんだ!!』と憤慨する想いでした。
まさかその501CTをリーバイス本社までが取り扱い、しかも、キャッチコピーは『501誕生以来140年以上の中で最大の出来事が起こる!(The biggest thing to happen to the 501 jean in over 140 years)』とは、言葉を失うほどのショックでした。
注)順番としては、リーバイスジャパンの方を先に見たので、本社がジャパンの企画を後から採用したように思いましたが、後で調べてみると本社の11月初めのブログ記事でも501CTを1月発表予定とありました。今回の発表を見ても、本社主導の企画のように思います。
気を取り直して、501CTの商品ページを見てみました。
501CTは、ヒップに留まるウエスト、ゆとりのある腿部、裾にかけてテーパードがかかるのが特徴との説明があります。
メンズだけでなく、レディースも用意してあります。男女両方の商品展開、商品ページを見ると相当力を入れているように見受けられます。
商品ページには、商品企画開発の最高責任者と思われるChief Product Officerと商品企画の統括責任者と思われるグローバルデザインの上級副社長のインタビューまであります。
グローバルデザインの上級副社長は『世界中のリーバイスストアやテイラーショップで、501の裾をテーパードにする需要が高かったため、パーフェクト・カスタムテーパーの501 CTを作った。』と語っています。
501の裾をテーパードにする需要は確かにあると思います。しかし、501のテーパードへの改造は伝統的にユーザー側がアフターマーケットで行うものでした。
1950年代前半に上映された映画"The Wild One"の登場人物たちがカスタマイズした501XXを穿いて出演していることは比較的有名です。
The Wild Oneは、当時の若者文化に多大なる影響を与え、ジーンズの普及に貢献しました。また、501のシルエットを改造することも流行となりました。
自動車でもそうですが、伝統的なブランド・製品を、所有者が自分好みに改造したり、手を加えることは一般的です。
しかし、メーカーがそれを行ってしまうと、そのブランドのアイデンティティ・伝統が失われてしまう危険性があります。そして、ブランド価値の低下をもたらすことが往々にしてあります。
そのため、メーカーはブランドの伝統的な特徴・アイデンティティを変えるようなことは、通常はしません。あくまでもユーザー側、アフターマーケットの方に任せるのが通例です。
過去にもその様なことを行って伝統的なブランドが市場から姿を消えていってしまった事例は数多くあります。
リーバイスの伝統的な品番である505は、過去20年位の間に流行に合わせて極端にシルエットや股上を変更したため、長年の愛好家達が離れ、ブランド価値・存在感は低下してしまいました。
リーバイスの製品は501や505はストレート、517はブーツカット・フレアー、511はスリム(スキニー・テーパード)の様に伝統的に品番でシルエットが分かるようになっています。
517の愛好家にとって、ストレートやテーパードの517が登場したら許せないと思います。511の愛好家が、ストレートやフレアーの511が作られたら、どんな反応をするか?
品番とシルエット等の特徴の関わりは非常に重要です。一体、何を考えているのかと思います。
基本的に、アメリカは自由な発想をする文化があります。新しいことに取り組んだり、挑戦することで、従来の殻を打ち破る革新的な製品が生まれたりします。
その代わり、失敗して市場から消えてしまう製品や会社も数多くあります。
新しいことに挑戦することが全てのビジネスの解で、進むべき道ではありません。伝統を守る・アイデンティティを大切にすることで成功している会社も多くあります。
レッドウイングが良い例です。リーバイスとレッドウイングは、非常に似たところが多くあります。
リーバイスは90年代の後半から2010年位までの間、低迷と迷走を繰り返していました。
しかし、ここ2年位、勢いを取り戻しつつあります。その中核にあるのが501です。501は現在もリーバイスのフラッグシップであり、屋台骨を支える中核製品です。
個人的には、501CTは恐らく大きな成功はせずに、比較的短命に終わると思っています。
しかし、万が一、501CTがある程度成功する方が怖いです。501CTが成功して市場から一定の認知を受けると、501のスタンダードなストレートのシルエットと言うアイディンティティが失われてしまいます。
この様なジーンズも魅力あると思います。問題は名前です。501以外の名前を付ければ問題はありません。
501のシルエットとは?と聞かれて、ある人はストレート、ある人はテーパードをイメージする様になったら、ブランドのアイディンティティが希薄になっていることの証です。
米リーバイスが勢いを取り戻してきて、とても嬉しく思っていたのに、不安に駆られることとなってしまいました。
これはあくまでも私個人の考えです。考え方はひとそれぞれ異なります。当然、異なる見方、考えもあると思います。
実際、リーバイス社は501CTが良い!!と思って、これだけ力を入れているわけです。
私の不安が現実とならず、無事、収まってくれることを祈るばかりです。
(追記)501CT発表1日後、501CTのバナーのコピーが変更となっていることに気づきました。”501誕生から140年余りを経て、最大の出来事”の表示が無くなっています。
1枚目が昨日、二枚目が本日のバナーです。赤枠部にご注目下さい。
”501最大の出来事”のコピーだけは、本当に止めてほしいと思っていました。恐らく、同様の意見が続出したのではないかと思われます。
往年の501愛好家からしたら許せないようなコピーです。実際に最大の出来事として、後で世間から認められるのであれば全く別の話です。
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