本年1月5日米国で発表、米国内で発売開始となった501CTが、日本でも2015年2月20日に発売開始となりました。
なぜ、日本の501CT リンスカラーがライトオンスの薄い生地を使用しているのかについて考えてみました。
上記の日本用501CTライトオンス採用の理由についての各シナリオの妥当性について以下に検討、考察します。
日本で取り扱うモデルは、米国で発売されている501CTと品番が同じです。つまり、501CTは日米共通モデルと言えます。
ここ15年近く、またはそれ以上の間、日本で販売されているリーバイスの主要デニム製品は、日本市場向けの専用モデルが中心で、日米共通モデルはほとんどありませんでした。
LEVIS VINTAGE CLOTHING(LVC)は、基本的に世界共通モデルです。他にも一部共通モデルはありますが、主要製品は日本専用のモデルでした。
501CTは、リーバイス社の看板製品であり、超定番の501のシルエットをテーパードに変更したモデルです。
501は伝統的にストレートであることが特徴であり、そのシルエットを変更したことは、501の歴史の中でも異例中の異例の製品です。
さらに上に書いた様に、501CTは日米で同じ仕様・モデルであることも、注目に値することです。
日本で取り扱うメンズの501CTは、米国内で販売されている8品種の中の4つ(4色)です。
今回日本で発売された501CT リンスカラー(米国での色名ブリストル(Bristol Rigid))は、品番は同じにも関わらず、生地のオンス数が異なることが判明しました。
デニムは生地の重さを、1平方ヤードの重さをオンス(1オンスは約28グラム)で表します。生地のオンス数は、生地の厚さの目安にもなります。
基本的にオンス数が大きい方が、生地は厚くなります。
1950年代以降頃から現代に至るまで、501を筆頭とする主要なジーンズのデニムは、12から14オンス(超)が使われてきました。
米国製501は1960年代頃から2003年まで、コーンミルズ製の14オンスのデニムを使用してきました。
ラングラーの定番モデル13MWZも14オンス超のデニムを1960年代から現在に至るまで使用しています。
そのため14オンスは、理想のデニムの厚み(重さ)とされています。
近年(2002年米国製501の生産中止以降)の501は日米共に、デニムのオンス数は少し軽めの12~12.5オンスが主に使われています。
501CTでも12オンスのデニムが中心です。
しかし、今回日本で発売となった501CT リンスは、同じ品番の米国用の501CT ブリストルは12オンスにもかかわらず、10.5オンスデニムを使用していると製品説明に表示があります。
一般的に言って、10.5オンス(oz)はジーンズのデニムとしては、かなり薄い(下限)に近いです。
かなり幅広いユーザ層を対象にしていると思われるユニクロのメンズ・セルビッジ付きジーンズは、13.5オンスです。
かなり幅広いユーザ層を対象にしていると思われるユニクロのメンズ・セルビッジ付きジーンズは、13.5オンスです。
通常のジーンズでなく、ドレスジーンズ的なものでは、薄めの生地を使用する場合があります。
しかし、リンスカラーの様な元来の濃紺の色で、薄い生地を使うことはまずありません。
米国モデルも同じオンスの生地を使っているのであれば、まだ分かりますが、そうではありません。米国モデルは12オンスです。
なぜ、日本の501CT リンスカラーがライトオンスの薄い生地を使用しているのかについて考えてみました。
501CT リンスにライトオンスを使った理由・シナリオ
以下、現時点で可能性として考えられる理由について、以下に箇条書きし、続いて可能性の高さについて検討・考察します。
これらが全てというわけではもちろんありません。これら以外にも考えらえる理由はあると思います。
シナリオ1: 日本のユーザーの嗜好、トレンドを反映し、日本市場ではあえてライトオンスとした。
シナリオ2.: 501CTの対象ユーザーは、これまでジーンズを穿いていなかった人向けのため、デニムの硬い生地感を和らげるため、薄い生地を使用した。
シナリオ3: 501CT リンスは、米国モデルと異なるアジア圏内の工場で製造しており、なんらかの生産上、または調達上の都合などで12オンスではなく10.5オンスデニムを使うことになった。
シナリオ4: 501CTのメインは、リンスではなくライトカラーであり、リンスは特に理由はなく(たまたま入手しやすい)ライトオンスにした。
シナリオ5: リーバイスジャパンとしては、501CTが売れて欲しくないので、あえて標準的な12オンスでなく、一般的にジーンズとしての魅力が薄れる10.5オンスにした。
シナリオの妥当性の検討・考察
上記の日本用501CTライトオンス採用の理由についての各シナリオの妥当性について以下に検討、考察します。
シナリオ1: 日本のユーザーの嗜好、トレンドを反映してあえてライトオンスにした。
日本のジーンズ愛好家、ジーンズを良く穿く人は、オンス数は最低でも12オンス、14オンスを求める人が多いです。
女性用ジーンズは、通常オンス数の低いデニムを使用するのが一般的ですが、レディース501CTでは12オンス以上のデニムを採用しています。
ジーンズにこれまであまり馴染みがなかった層では、薄い生地を好む、求めるニーズがあるのかもしれませんが、日本市場でライトオンスへのトレンドなど、市場ニーズで明確な傾向は見られないと思います。
シナリオ2.: 501CTの対象ユーザーは、これまでジーンズを穿いていなかった人向けのため、デニムの硬い生地感を和らげるため、薄い生地にした。
デニムは元来生地が厚手で丈夫なのが特長です。デニムは新品時は生地が硬いです。厚いと硬さが顕著に感じられます。
ジーンズに馴染みがない人にとっては、デニムの硬さはあまり好まれない傾向があります。
通常、女性用のジーンズで使用されるデニムは、オンス数も低めです。そして、硬さを感じさせない柔らかい風合いのデニムが使用されます。綿100%でなく、化繊混合のストレッチデニムも広く普及しています。
しかし、レディースの501CTは、綿100%の12または13オンスデニムです。
レディースですら12オンス以上のデニムを使用してるのに、メンズの501CTで、硬い生地感を和らげるため薄い生地を使用することが理由とは考えられません。
シナリオ3: 10.5オンスデニムを使ったのは生産上、または調達上の都合である。
メンズ501CT リンスは、ベトナム製であることが判明しています。米国ラインの501CTは、恐らく全てメキシコ製です。
今回日本で販売となったメンズ501CTの2色(品種)、レディース3色は、米国ラインと同じメキシコ製と思われます。これらは、米国モデルと同じ12オンス以上のデニムを使用しています。
生産国がベトナムのため、生地もアジア圏内からの調達となっていると思われます。アジア圏での生地が、ライトオンスデニムが中心であれば、可能性として十分にあると思います。
しかし、リーバイスジャパンが取り扱う501製品群のほとんどはアジア圏で生産しており、生地も12オンス以上が中心なので、調達上の都合でもないと思います。
シナリオ4: 特に理由はなく(たまたま入手しやすい)ライトオンスにした。
501CTのメインは、リンスではなくライトカラーである可能性があります。LIのお客様が送ってくれた501CTのディスプレイ写真でも、ライトカラーが使用されています。
通常のジーンズでは、リジッドやリンスが基本でメインとなります。
しかし、501CTの場合は、ターゲット顧客層もこれまであまりジーンズに馴染みがなかった人々を対象にしている可能性が考えられます。
501CTの企画は、欧米のファッション界のトレンドリーダーの女性たちがこぞって80年代頃の(メンズの)リーバイス501を穿き出したことから始まっていると認識しています。
コンセプトとしても、80年代のユーズドの501を意識した製品作りがされていると考えられます。
501CTのライトカラーは、80年代頃の穿き込まれて薄くなった501の色落ち、色味をイメージしたデザイン(加工)になっていると思います。
501CTのライトカラーは、80年代頃の穿き込まれて薄くなった501の色落ち、色味をイメージしたデザイン(加工)になっていると思います。
ライトカラーが501CTのメインであり、リンスは特に力を入れているわけではない。ライトオンスを使用した理由は特にない。
意外とこのシナリオである可能性が考えられます。
シナリオ5: リーバイスジャパンとしては、501CTが売れて欲しくないので、あえて標準的な12オンスでなく、一般的にジーンズとしての魅力が薄れる10.5オンスにした。
501CTは米リーバイス本社が企画した製品です。日本で販売されているリーバイス社の製品は、リーバイスジャパンが日本市場向けに企画した製品が中心だと認識しています。
501CTが売れることは、赤字続きで売り上げが低迷しているリーバイスジャパンにとって望ましいことですが、ジャパンの(企画の)観点で見た場合、必ずしもそうではないところがあると思います。
仮に501CTが売れまくって大成功した場合、リーバイスジャパンは、日本市場向けのモデルを開発する必要は無い。米国ラインのモデルを日本市場で販売すれば良いとの考えが、米リーバイス本社を中心に強くなると思われます。
リーバイスジャパンとしては、売り上げが上がることは望ましいことでも、ジャパンが企画した製品・モデルが売れることを強く望んでいると思います。
その様に考えると、ジャパン内の企画を中心とした立場の社員の人にとっては、501CTはあまり好ましい製品ではないと思います。そのため、あえてライトオンスを使用している可能性も少ないですが考えられます。
ロングホーンインポートのTwitterでのやり取りで、ジーンズが好きな方も、501CTに対する関心、興味が高いことを感じています。
ジーンズが好き、501が好きという人の中で、テーパードの501を歓迎したり、興味を持つ人もいると思っています。
ジーンズ愛好家は、濃紺のデニムを穿き込んで色落ちや変化を楽しむ、”ジーンズを育てる”ことが好きです。
ジーンズを育てる場合のデニムの種類(色)は、リジッドかリンス(ワンウォッシュ等呼び方はいろいろあります。)が一般的です。
日本市場向けの501CT リンスは、ジーンズ愛好家が望まない生地選択をあえてした可能性も全くないとは言い切れないと思います。
また、501CTは501の本来のシルエットを変更した製品です。501CTについて、リーバイス社内でも賛成する声だけでなく、反対する声もあったと思います。
正直なことを言うと、もしも、私がリーバイスの社員だったら、501CT反対の立場です。
そのような社内的な事情が、501CT リンスの生地選択に関係している可能性も排除できません。
本記事の501CT リンスでライトオンスデニムを使用した理由のシナリオは、私の個人的な考えを書いたものです。リーバイス社内の事情についての知識は全くありません。
実際は全く異なる理由である可能性もあります。
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