一つ前の投稿で紹介したリーバイス501CTのプレスリリースが元と思われる紹介記事の中に以下の記述があります。
”501® CTは、501®が永い歴史の中で築き上げた本質的な部分においては変えず、テーパードされたフィットが特徴”
この部分を読んだ時、違和感を覚えました。また、"501の本質”は解釈によっても変わると思いました。そこで、”501の本質”とは何かについての考えを以下に書きます。
まず、501の本質について考える上で、先に”本質”とは何かについて、明確に理解すべきと思いました。
【本質】を辞書で引くと以下の様な説明があります。
1 物事の根本的な性質・要素。そのものの、本来の姿。「―に迫る」「―を見きわめる」
2 哲学で、存在するものの基底・本性をなすもの。
㋐偶有性に対立し、事物に内属する不変の性質。
㋑実存に対立し、そのもののなんであるかを規定し、その本性を構成するもの。
3 論理学で、思惟の対象を定義する諸限定。類・種のごとき普遍をさす。→実体 →属性 →本体
Wikipediaでは、以下のような説明があります。
この辞書とWikipediaの説明を中心に”501の本質について”考えてみました。
”501の本質”は、「501が501であると言うために最低限持たなければいけない性質・要素。」、または、『「501とは何である」という問いに対する答え』となります。
501であるために最低限持たなければならない性質・要素は、何かについて考えてみます。
501には以下の様な特徴、要素を備えています。各々の特徴・要素を最初に備えた年を記載しています。これらの要素は現行製品でも備えています。
リーバイスが最初のジーンズ(当時の呼称はオーバーオール)を作り、販売を開始したのは1873年です。デニム生地を使用したパンツで、ポケットの取り付け強化にリベットを使用していました。
このポケットの取り付け強化にリベットを使用する特許を取得したのが1873年です。特許取得後、直ちに販売を開始したと考えられており、リーバイス社は特許取得日である1873年5月20日が、ジーンズの誕生日であるとしています。
リーバイスのジーンズのウエストバンドに付けられているパッチには、1873年5月20日の特許取得日が記載されています。
このツーホースマークのパッチが誕生したのは、1886年です。基本的なパッチのデザイン・コンセプトは変わらず、現在に至っています。
(参考記事:リーバイスのパッチに込められたメッセージ)
リーバイスのジーンズであることを象徴する外観上の特徴であるバックポケットに入れられたアーキュエット・ステッチは、世界最古のジーンズでも備えらえています。
アーキュエットステッチは、当時、ライナーを取り付けるために入れられたことが始まりと言われています。ジーンズ誕生時からアーキュエットは備えられていたと認識されています。
上記1と2、デニム生地を使用することは、ジーンズの定義とも言えるものです。さらに、ポケットにリベットは、現在のほぼ全てのジーンズが備えている特徴です。
501誕生時はバックポケットは一つの計4ポケットでした。1901年から501は、バックポケットが二つになりました。5ポケットはジーンズの標準的な仕様と言えると思います。
501はジーンズの元祖です。今日の全てのジーンズの源的な存在です。
上で挙げた501の特徴・要素の中で、1,2,7はジーンズの特徴・要素にもなっています。そして、3, 6, 8は基本的にリーバイスのジーンズの特徴・要素です。
他のジーンズと比べて際立つ501固有の特徴・要素はボタンフライです。
ご存知のように501以外のほとんどのジーンズはジッパーを使用しています。
ジーンズが誕生した時は、ジッパーはまだ存在しませんでした。しかし、現在、ジーンズを含むほぼ全てのパンツ(トラウザーズ)は、ジッパーを使っています。
ジーンズ3大ブランドの中のLeeやWranglerのジーンズは、1940年代以前はボタンフライとジッパー両方を採用していましたが、1950年代にはジッパーに移行しました。
501はジッパーに移行せず、ボタンフライのまま今日まで至っています。
単に501が古いデザイン・仕様を続けているのではなく、ボタンフライであることは、きちんとした理由があります。
501には生デニムを使用した伝統的なモデルが現在もあります。生デニムは洗濯すると縮むため、ジッパーでは故障する恐れがあります。
そのため、生デニムではボタンフライであることが求められます。つまり、生デニム使用の501がある限り、ボタンフライである必要があるのです。
501を除くほとんどのジーンズは防縮加工が施されたデニムを使用し、ジッパーを採用しています。
現在は、防縮加工デニムを使用した501も多くあります。リーバイスジャパンが取り扱う501は、ほとんどが防縮加工を施したデニムを採用しています。
70年代以前の501は、全て生デニムを使用していました。生デニムの使用は、ヴィンテージの501の本質とも言えます。
さらに、ヴィンテージの501は、セルビッジ(耳)付きのデニムを使っていることが大きな特徴でした。セルビッジデニム使用も失われてしまった501の本質でもあると思います。
80年代の半ばにセルビッジデニムは、一旦、製造中止となりました。現代の501では、セルビッジ付き生デニムを使うことは、残念ながら、本質ではなく、(Wikipediaの説明にある)具有となってしまっています。
尚、アメリカでは生デニムを使用した501が現在も主力製品です。
ジーンズの分類をする場合、フィット(シルエット)は重要な要素です。ジーンズにおいてフィットは、冒頭で引用した本質の3番目の説明にある「類・種のごとき普遍をさす。」に近いと私は思います。
リーバイスでは、伝統的にフィットの区分けを品番・ロット番号で行っています。501と505がストレート、517がブーツカット、511がスリムというのが代表的な分類の仕方です。
下の写真は、かつての501の本質の要素である生デニムを現在も採用する米国流通モデルの主力現行製品501 SHRINK-TO-FITのフラッシャーです。
中央に501の表記、上に"LEVI'S ORIGINAL FIT"、左に"STRAIGHT LEG"、右に”BUTTON-FLY"、下に”SHRINK-TO-FIT"と書かれています。
オリジナルフィットは、深くも浅くもない標準的な股上で、太くも細くもない標準的なストレートなシルエットであることを意味します。ストレートレッグであることも意味していると思います。
501ならではの特徴のボタンフライ、そして非常に関連性があるSHRINK-TO-FITです。
私はこれらの特徴、要素が、501本来の姿、本質だと思います。
下の画像は、米リーバイスのオンラインストアの501CTのバナーです。
"THE NEW 501CT WITH A TAPERED LEG AND OUR ICONIC 501 STRAIGHT FIT."との表現があります。
ストレートフィットであることは、501の象徴的な特徴であることを意味しています。
501の本質の一つはストレートシルエットであることだと私は思います。
501CTが市場で認知され、一時的なものでなく、将来に渡って標準ラインとして加わることになった場合、ストレートであることは501の本質でなくなることを意味します。
冒頭で引用した日本の記事の以下の文は、
”501® CTは、501®が永い歴史の中で築き上げた本質的な部分においては変えず、テーパードされたフィットが特徴”
”501CTは、501®が永い歴史の中で築き上げた本質的な部分を変えたテーパードのフィットであることが特徴”
であると私は解釈しています。
言葉や概念は、定義の仕方、解釈によっても変わります。
皆さんはどのように思われますか?
”501® CTは、501®が永い歴史の中で築き上げた本質的な部分においては変えず、テーパードされたフィットが特徴”
この部分を読んだ時、違和感を覚えました。また、"501の本質”は解釈によっても変わると思いました。そこで、”501の本質”とは何かについての考えを以下に書きます。
まず、501の本質について考える上で、先に”本質”とは何かについて、明確に理解すべきと思いました。
【本質】を辞書で引くと以下の様な説明があります。
1 物事の根本的な性質・要素。そのものの、本来の姿。「―に迫る」「―を見きわめる」
2 哲学で、存在するものの基底・本性をなすもの。
㋐偶有性に対立し、事物に内属する不変の性質。
㋑実存に対立し、そのもののなんであるかを規定し、その本性を構成するもの。
3 論理学で、思惟の対象を定義する諸限定。類・種のごとき普遍をさす。→実体 →属性 →本体
Wikipediaでは、以下のような説明があります。
本質(ほんしつ、希: ουσια (ousia), 羅: substantia / essentia)とは、あるものがそのものであると云いうるために最低限持たなければいけない性質をいう。もしくはそうした性質からなる理念的な実体をいう場合もある。概要には以下のような記述があります。
或る存在を必然的にその存在として規定する内実がその本質である。伝統的には、「それは何であるか」という問いに対する答え(「何性」)として与えられるもの。それに対して、ものに付け加わったり失われたりして、そのものが、そのものであることには関わらない(必然性のない)付帯的な性質を、偶有(性)という。
この辞書とWikipediaの説明を中心に”501の本質について”考えてみました。
”501の本質”は、「501が501であると言うために最低限持たなければいけない性質・要素。」、または、『「501とは何である」という問いに対する答え』となります。
501であるために最低限持たなければならない性質・要素は、何かについて考えてみます。
501には以下の様な特徴、要素を備えています。各々の特徴・要素を最初に備えた年を記載しています。これらの要素は現行製品でも備えています。
- 生地はデニム (1873年から)
- ポケットの取り付けにリベットを使用 (1873年から)
- バックポケットにアーキュエット・ステッチ (1873年から)
- ボタンフライ (1873年から)
- ストレートシルエット (1873年から)
- ウエストバンドに2ホースマークのパッチ (1886年から)
- 5ポケット (1901年から)
- 赤タブ (1936年から)
リーバイスが最初のジーンズ(当時の呼称はオーバーオール)を作り、販売を開始したのは1873年です。デニム生地を使用したパンツで、ポケットの取り付け強化にリベットを使用していました。
このポケットの取り付け強化にリベットを使用する特許を取得したのが1873年です。特許取得後、直ちに販売を開始したと考えられており、リーバイス社は特許取得日である1873年5月20日が、ジーンズの誕生日であるとしています。
リーバイスのジーンズのウエストバンドに付けられているパッチには、1873年5月20日の特許取得日が記載されています。
このツーホースマークのパッチが誕生したのは、1886年です。基本的なパッチのデザイン・コンセプトは変わらず、現在に至っています。
(参考記事:リーバイスのパッチに込められたメッセージ)
リーバイスのジーンズであることを象徴する外観上の特徴であるバックポケットに入れられたアーキュエット・ステッチは、世界最古のジーンズでも備えらえています。
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Photo from Levi Strauss & Co. |
上記1と2、デニム生地を使用することは、ジーンズの定義とも言えるものです。さらに、ポケットにリベットは、現在のほぼ全てのジーンズが備えている特徴です。
501誕生時はバックポケットは一つの計4ポケットでした。1901年から501は、バックポケットが二つになりました。5ポケットはジーンズの標準的な仕様と言えると思います。
501はジーンズの元祖です。今日の全てのジーンズの源的な存在です。
上で挙げた501の特徴・要素の中で、1,2,7はジーンズの特徴・要素にもなっています。そして、3, 6, 8は基本的にリーバイスのジーンズの特徴・要素です。
他のジーンズと比べて際立つ501固有の特徴・要素はボタンフライです。
ご存知のように501以外のほとんどのジーンズはジッパーを使用しています。
ジーンズが誕生した時は、ジッパーはまだ存在しませんでした。しかし、現在、ジーンズを含むほぼ全てのパンツ(トラウザーズ)は、ジッパーを使っています。
ジーンズ3大ブランドの中のLeeやWranglerのジーンズは、1940年代以前はボタンフライとジッパー両方を採用していましたが、1950年代にはジッパーに移行しました。
501はジッパーに移行せず、ボタンフライのまま今日まで至っています。
単に501が古いデザイン・仕様を続けているのではなく、ボタンフライであることは、きちんとした理由があります。
501には生デニムを使用した伝統的なモデルが現在もあります。生デニムは洗濯すると縮むため、ジッパーでは故障する恐れがあります。
そのため、生デニムではボタンフライであることが求められます。つまり、生デニム使用の501がある限り、ボタンフライである必要があるのです。
501を除くほとんどのジーンズは防縮加工が施されたデニムを使用し、ジッパーを採用しています。
現在は、防縮加工デニムを使用した501も多くあります。リーバイスジャパンが取り扱う501は、ほとんどが防縮加工を施したデニムを採用しています。
70年代以前の501は、全て生デニムを使用していました。生デニムの使用は、ヴィンテージの501の本質とも言えます。
さらに、ヴィンテージの501は、セルビッジ(耳)付きのデニムを使っていることが大きな特徴でした。セルビッジデニム使用も失われてしまった501の本質でもあると思います。
80年代の半ばにセルビッジデニムは、一旦、製造中止となりました。現代の501では、セルビッジ付き生デニムを使うことは、残念ながら、本質ではなく、(Wikipediaの説明にある)具有となってしまっています。
尚、アメリカでは生デニムを使用した501が現在も主力製品です。
ジーンズの分類をする場合、フィット(シルエット)は重要な要素です。ジーンズにおいてフィットは、冒頭で引用した本質の3番目の説明にある「類・種のごとき普遍をさす。」に近いと私は思います。
リーバイスでは、伝統的にフィットの区分けを品番・ロット番号で行っています。501と505がストレート、517がブーツカット、511がスリムというのが代表的な分類の仕方です。
下の写真は、かつての501の本質の要素である生デニムを現在も採用する米国流通モデルの主力現行製品501 SHRINK-TO-FITのフラッシャーです。
中央に501の表記、上に"LEVI'S ORIGINAL FIT"、左に"STRAIGHT LEG"、右に”BUTTON-FLY"、下に”SHRINK-TO-FIT"と書かれています。
オリジナルフィットは、深くも浅くもない標準的な股上で、太くも細くもない標準的なストレートなシルエットであることを意味します。ストレートレッグであることも意味していると思います。
501ならではの特徴のボタンフライ、そして非常に関連性があるSHRINK-TO-FITです。
私はこれらの特徴、要素が、501本来の姿、本質だと思います。
下の画像は、米リーバイスのオンラインストアの501CTのバナーです。
"THE NEW 501CT WITH A TAPERED LEG AND OUR ICONIC 501 STRAIGHT FIT."との表現があります。
ストレートフィットであることは、501の象徴的な特徴であることを意味しています。
501の本質の一つはストレートシルエットであることだと私は思います。
501CTが市場で認知され、一時的なものでなく、将来に渡って標準ラインとして加わることになった場合、ストレートであることは501の本質でなくなることを意味します。
冒頭で引用した日本の記事の以下の文は、
”501® CTは、501®が永い歴史の中で築き上げた本質的な部分においては変えず、テーパードされたフィットが特徴”
”501CTは、501®が永い歴史の中で築き上げた本質的な部分を変えたテーパードのフィットであることが特徴”
であると私は解釈しています。
言葉や概念は、定義の仕方、解釈によっても変わります。
皆さんはどのように思われますか?
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