先日投稿した"カウボーイ文化とファッションの歴史"に頂いたコメントの一部を抜粋引用します
(K.Hさん、オリジナルのコメントでは、カウ・ボーイとなっていましたが、cowboyは一つの単語のため中央の点を削除しました。ご了承いただければ幸いです。)
コメントを拝読した時、直接的、間接的に幾つか思うことがありました。頭に浮かんだ主な点を以下に記します。
頂いたコメントの中に、「干し草に火が付く可能性があるので噛み煙草の方が多い」と言う理由が述べられています。
紙巻タバコは、干草に火がつく可能性は確かにあります。噛みタバコはありません。
ある意味、もっともらしい理由付けだと思います。実際のところどうだったのだろう?と思いました。
統計的なデータがあれば、YES/NOが比較的明確に述べることができる場合もありますが、この件については、明確な統計データを得ることは難しそうだと思いました。
その場合、直接的・間接的な材料(証拠)を元にした考察になります。
また、意見・見解を述べる上で、どの様な情報を元にしているのか?また、その情報の精度はどの程度なのか?ということも重要な要素です。
コメントを下さった方から、ご引用された文献(ソース)の情報を頂きました。
現代を生きるカウボーイのためのウエスタン情報共有サイト
リアルウエスタン
リアルカウボーイの証
サイトを拝見しました。ウエスタンに興味のある人たちやお店が、情報を共有して、交流を深める場の様なサイトと解釈しました。素晴らしいサイトと思いました。
以下に調べた内容と個人的な見解を書きます。
先に申し上げると、上記サイトに書かれていることを否定する意図はありません。色々な意見、考えがあります。
答えはYES/NOで、明確に白黒つけられる様な類の話ではありません。
なお、上記引用サイトでは、断定的に書かれています。それは、そのサイト運営者、文書を作成した方のスタイルです。
本記事は、その文書のスタイルを否定する意図は全くありません。
また、サイトのタイトル”現代を生きるカウボーイのための...”と言う通り視点は現代のカウボーイについてであり、昔のカウボーイという視点では書かれていない可能性もかなり高いと思います。
「干し草に火が付く可能性があるので噛み煙草の方が多い」と言う理由は、もっともな意見だと思います。
以下は、1940年10月21日発行のLIFEマガジンに、テキサス州の牧場の特集記事からの引用写真です。
食事ができあがるのを待つカウボーイ達です。二人ともタバコを吸っています。
こちらもLIFEマガジン(Ralph Crane撮影)のカウボーイの写真です。テントの中、干草に腰掛けてタバコを吸っています。
これらの写真だけで断言はできませんが、干草に火が付く可能性があるからカウボーイは紙巻タバコは吸わないとは言えないのではないかと思います。
カウボーイの仕事は、干草の上で行うものだけではありません。キャトルドライブと呼ばれる、馬に乗って、育てた牛達を群れにして遠く離れた購入先の牧場などに連れて行くことも仕事の一つです。
尚、紙巻タバコを吸っているカウボーイの写真があるから、噛みタバコより紙巻きタバコの方が多いということも言えないと思います。
英語版のWikipediaの噛みタバコ(Chewing tobacco)の説明の中に、噛みタバコの市場は1910年がピークだったと書かれています。
以降は、紙巻きタバコが主流になってきていると思われます。(ことを示しています。)
The Modern Cowboy (Western Life Series)
と言う本を紹介します。
本の冒頭に以下の様な記述があります。(概要をつまんで書いています)
この本の中にChewing tobacco(噛みタバコ)について書かれている箇所があります。
そのセクションの最初に他の本の記述が引用されています。
昔はタバコを吸うのが圧倒的だったことを示しています。
尚、引用している本、The Cowboyの著者、Philip Rollinsさんはプリンストン大学卒のヒストリアンで、西部出身です。Rollinsさんは、1869年生まれで1950年に亡くなっています。
The Cowboyが書かれたのは、1950年以前であることが分かります。
一方、The Modern Cowboyの第1版が発行されたのは、1981年です。The Modern Cowboyの中で書かれているタバコについての概要を以下に書きます。
Philip Rollins氏のThe Cowboyが書かれた時代では、そうだったかもしれませんが、現代ではタバコを吸うカウボーイは非常に少なくなっています。
代わって、snuffが良く使われています。(英語でUniversalは、ほとんど全ての人が使うようなことを意味します。昔はカウボーイがタバコを吸うのは、Universalだったと引用本でも書かれています。ここで、snuffについては、commonという言葉が使われています。commonも多くの人が使うことを意味しますが、universalほどではないことを意味します。)
著者のJohn R. Ericksonの少年時代は、snuff(現代の噛みタバコ)を使うカウボーイは、コミュニティで最も軽蔑される人しか使わないとされていて、だれも使っているのを見たことがなかったそうです。
ところが、60年代から70年代にかけて、"スモークレスタバコ(噛みタバコ)”がファッショナブルになってきました。私が最初にSkoalの缶を見たのは、1972年です。
テキサス州の牧場で働く若いカウボーイが持っていて、ジーンズのバックポケットに缶の形の跡が付いていました。
しかし、1950年に知られていたsnuffとは、同じものではありません。今日(80年代以降)のsnuffは、Skoal, Happy Days, Copenhagenと言うブランドの名前が入る小さな缶に入れられているものです。
”スモークレス・タバコ”とは呼ばれず、"snoose", ”Cope"(Copenhagenを短縮)、"dip", "cud"と呼ばれていました。
引用本の概訳は以上です。
冒頭で引用したコメントの元のWebサイトに書かれている話と相通じるところがあります。
話がかなり長くなりましたが、『カウボーイは、紙巻タバコより噛みタバコの方が多いのか?』については、いつの年代・時代についてのことなのかにもよると思います。
1960年代以前であれば、紙巻きタバコが(圧倒的に)多いと思います。
私は、ヴィンテージのジーンズで丸い缶の跡がついたものを見た記憶が(ほとんど)ありません。
丸い缶の噛みタバコを入れるのが流行ったのが70年代以降であれば、時代差があるので、納得できます。
80年代以降は、タバコを吸うこと自体も減ってきています。また、現代は干草に火が付く可能性があるとして、タバコを吸うのではなく噛みタバコの方が多いという話も、至極妥当で、十分あり得る話だと思います。
対象とする年代・時代が変われば(異なれば)、答え・見解も異なる事例とも言えます。
この様な話題は、引用した本の冒頭の但し書きと同様に、時代・年代や地域によっても異なることだと思います。
関連ブログ記事:
カウボーイ文化とファッションの歴史
カウボーイ=マルボロ広告のおかげで浸透していますが実際は噛み煙草の方が多いのでは?ある文献では「干し草に火が付く可能性があるので噛み煙草の方が多い」と読んだことがあります。実際に古着屋でお尻のポケットに丸い噛み煙草の缶の跡が付いたジーンズを見たことがあります。勿論ですがラングラーでした。
(K.Hさん、オリジナルのコメントでは、カウ・ボーイとなっていましたが、cowboyは一つの単語のため中央の点を削除しました。ご了承いただければ幸いです。)
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Clarence Hailey Long, Photo: Wikipedia |
- もっともらしい理由付けだが、実際どうだったのだろう?
- 紙巻きタバコと噛みタバコの統計などはなさそうな気がする=断定する・はっきり確定することはできない可能性が高い。
頂いたコメントの中に、「干し草に火が付く可能性があるので噛み煙草の方が多い」と言う理由が述べられています。
紙巻タバコは、干草に火がつく可能性は確かにあります。噛みタバコはありません。
ある意味、もっともらしい理由付けだと思います。実際のところどうだったのだろう?と思いました。
統計的なデータがあれば、YES/NOが比較的明確に述べることができる場合もありますが、この件については、明確な統計データを得ることは難しそうだと思いました。
その場合、直接的・間接的な材料(証拠)を元にした考察になります。
また、意見・見解を述べる上で、どの様な情報を元にしているのか?また、その情報の精度はどの程度なのか?ということも重要な要素です。
コメントを下さった方から、ご引用された文献(ソース)の情報を頂きました。
現代を生きるカウボーイのためのウエスタン情報共有サイト
リアルウエスタン
リアルカウボーイの証
サイトを拝見しました。ウエスタンに興味のある人たちやお店が、情報を共有して、交流を深める場の様なサイトと解釈しました。素晴らしいサイトと思いました。
以下に調べた内容と個人的な見解を書きます。
先に申し上げると、上記サイトに書かれていることを否定する意図はありません。色々な意見、考えがあります。
答えはYES/NOで、明確に白黒つけられる様な類の話ではありません。
なお、上記引用サイトでは、断定的に書かれています。それは、そのサイト運営者、文書を作成した方のスタイルです。
本記事は、その文書のスタイルを否定する意図は全くありません。
また、サイトのタイトル”現代を生きるカウボーイのための...”と言う通り視点は現代のカウボーイについてであり、昔のカウボーイという視点では書かれていない可能性もかなり高いと思います。
カウボーイは、紙巻きタバコより、噛みタバコの利用が多い?
「干し草に火が付く可能性があるので噛み煙草の方が多い」と言う理由は、もっともな意見だと思います。
以下は、1940年10月21日発行のLIFEマガジンに、テキサス州の牧場の特集記事からの引用写真です。
食事ができあがるのを待つカウボーイ達です。二人ともタバコを吸っています。
こちらもLIFEマガジン(Ralph Crane撮影)のカウボーイの写真です。テントの中、干草に腰掛けてタバコを吸っています。
これらの写真だけで断言はできませんが、干草に火が付く可能性があるからカウボーイは紙巻タバコは吸わないとは言えないのではないかと思います。
カウボーイの仕事は、干草の上で行うものだけではありません。キャトルドライブと呼ばれる、馬に乗って、育てた牛達を群れにして遠く離れた購入先の牧場などに連れて行くことも仕事の一つです。
尚、紙巻タバコを吸っているカウボーイの写真があるから、噛みタバコより紙巻きタバコの方が多いということも言えないと思います。
英語版のWikipediaの噛みタバコ(Chewing tobacco)の説明の中に、噛みタバコの市場は1910年がピークだったと書かれています。
以降は、紙巻きタバコが主流になってきていると思われます。(ことを示しています。)
The Modern Cowboy (Western Life Series)
The Modern Cowboy, By John R. Erickson |
本の冒頭に以下の様な記述があります。(概要をつまんで書いています)
カウボーイはこうであるという様な一般論を述べることはできない。(述べたら、必ず異論を唱える人がいる)皆それぞれのやり方、考えがあるからである。
テキサスのカウボーイの仕事とカリフォルニアのカウボーイの仕事は全て同じではない。
歴史、伝統・風習、気候、土壌など、それ以外にも色々な違いがある。至極もっともな話だなと思いました。
この本の中にChewing tobacco(噛みタバコ)について書かれている箇所があります。
そのセクションの最初に他の本の記述が引用されています。
The Cowboy: An Unconventional History of Civilization on the Old-Time Cattle Range |
The Cowboy, Philip Rollins noted that smoking was universal among the old-time cowboys, while chewing "was common but far from universal" (p.85-86)タバコを吸うのは(スモーキングは)、古い時代のカウボーイ達にとっては、一般的だったが、チューイングは、コモンである(良くある)がユニバーサルとは懸け離れたものだった。
昔はタバコを吸うのが圧倒的だったことを示しています。
尚、引用している本、The Cowboyの著者、Philip Rollinsさんはプリンストン大学卒のヒストリアンで、西部出身です。Rollinsさんは、1869年生まれで1950年に亡くなっています。
The Cowboyが書かれたのは、1950年以前であることが分かります。
一方、The Modern Cowboyの第1版が発行されたのは、1981年です。The Modern Cowboyの中で書かれているタバコについての概要を以下に書きます。
Philip Rollins氏のThe Cowboyが書かれた時代では、そうだったかもしれませんが、現代ではタバコを吸うカウボーイは非常に少なくなっています。
代わって、snuffが良く使われています。(英語でUniversalは、ほとんど全ての人が使うようなことを意味します。昔はカウボーイがタバコを吸うのは、Universalだったと引用本でも書かれています。ここで、snuffについては、commonという言葉が使われています。commonも多くの人が使うことを意味しますが、universalほどではないことを意味します。)
著者のJohn R. Ericksonの少年時代は、snuff(現代の噛みタバコ)を使うカウボーイは、コミュニティで最も軽蔑される人しか使わないとされていて、だれも使っているのを見たことがなかったそうです。
ところが、60年代から70年代にかけて、"スモークレスタバコ(噛みタバコ)”がファッショナブルになってきました。私が最初にSkoalの缶を見たのは、1972年です。
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Skoal, photo from Wikipedia |
しかし、1950年に知られていたsnuffとは、同じものではありません。今日(80年代以降)のsnuffは、Skoal, Happy Days, Copenhagenと言うブランドの名前が入る小さな缶に入れられているものです。
”スモークレス・タバコ”とは呼ばれず、"snoose", ”Cope"(Copenhagenを短縮)、"dip", "cud"と呼ばれていました。
引用本の概訳は以上です。
冒頭で引用したコメントの元のWebサイトに書かれている話と相通じるところがあります。
話がかなり長くなりましたが、『カウボーイは、紙巻タバコより噛みタバコの方が多いのか?』については、いつの年代・時代についてのことなのかにもよると思います。
1960年代以前であれば、紙巻きタバコが(圧倒的に)多いと思います。
私は、ヴィンテージのジーンズで丸い缶の跡がついたものを見た記憶が(ほとんど)ありません。
丸い缶の噛みタバコを入れるのが流行ったのが70年代以降であれば、時代差があるので、納得できます。
80年代以降は、タバコを吸うこと自体も減ってきています。また、現代は干草に火が付く可能性があるとして、タバコを吸うのではなく噛みタバコの方が多いという話も、至極妥当で、十分あり得る話だと思います。
対象とする年代・時代が変われば(異なれば)、答え・見解も異なる事例とも言えます。
この様な話題は、引用した本の冒頭の但し書きと同様に、時代・年代や地域によっても異なることだと思います。
関連ブログ記事:
カウボーイ文化とファッションの歴史
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