ヴィンテージLee 101-Jは、至る所に工夫が凝らされた凝った造りであることが特徴の一つです。それらの仕様やデザインは、当時のリーバイスのジージャンを意識して、差別化を図ったものと思われるモノもあります。
本記事では、リーバイスのジージャンの仕様などと比較しながら、1950年代のLee 101-J 赤タグの特徴について紹介します。
[post_ads]
リーバイスのデニム製品は、伝統的にパッチが取り付けられています。大まかなところで、50年代半ば以前のパッチは革素材、50年代後半以降は紙素材です。
革パッチは、乾燥機にかけると変質、収縮してしまいます。また、50年代に普及した全自動洗濯機も、革パッチに不向きでダメージを受けやすかったそうです。
現在残存している、ヴィンテージ501XXなどで、革パッチが残っている品はあまり多くありません。
50年代の後半から、リーバイスはパッチの素材を紙に変更しました。紙素材のパッチも硬化、破損しやすく、残存しているものはほとんどありません。
Leeのジージャンは、伝統的に布製のタグを採用しています。布は、破損したり消失する可能性は、非常に低いです。
ブランドやモデルを表示するタグやパッチは、メーカー側の視点で見た場合、残存している方が望ましいです。
革パッチの方が高級感はありますが、硬化してしまうと、着用時に煩わしく感じる人も少なくないと思います。
現在は、パッチが残っていることは、(大きな)プレミアムがあるので、残存しているものが望ましいですが、1950年代から60年代当時のリーバイス・デニム製品のユーザーの多くは、パッチを積極的に取り外していたと思われます。
Leeは、新品時の見栄えよりも実用面を優先させ、また、リーバイスとの差別化を当初から意識していたことがタグからも感じられます。
布製のため、ヴィンテージLeeのタグは残存しているものが多いです。
リーバイスは、元来ジージャンでもジーンズと同様にリベットを採用していました。506xxでは、胸ポケットの取り付け強化もリベットを使用していました。
Leeの101-Jは、胸ポケットの取り付け強化はバータックです。
リーバイスも、セカンド(507xx)からポケット部は、リベットを廃止し、バータックに移行しています。
101-Jは、袖の付け根の部分の強化も、バータックです。
リーバイスは、セカンドまではリベットを使用していました。サードの557xxからバータックを採用しています。
Lee 101-Jの胸ポケットからウエストバンドにかけて入る2本の平行ステッチは、実はプリーツになっています。
実用面では差はありませんが、仕様的に手間がかかった凝った造りです。
101-Jと同様にリーバイスのサードやフォースは、フロント胸ポケット下からウエストバンドにかけて、2本の平行ステッチが入りますが、プリーツではありません。
Lee 101-Jのカフスは伏せ縫いで取り付けられています。そのため、カフス部のステッチが露出していません。(一部露出している部分が少ないです。)
また取り付けのステッチは、シングルステッチなので、摩耗に強いです。
カフス奥の取り付けは、リーバイスのジージャンでは、ファーストは伏せ縫いでしたが、セカンドからは表側からチェーンステッチで取り付けられています。
着用の仕方によっては、この部分(チェーンステッチ)が切れたり、部分的に消失してしまう場合があります。表のステッチの消失が進むと、カフスが外れてしまいます。
伏せ縫いの場合は、ステッチの消失の可能性は、非常に低いです。
一方で、伏せ縫いは工数がかかります。リーバイスは生産性を高めるため仕様を変更したと思われます。
101-Jの胸ポケットの入り口は内側に傾いたデザインになっています。
乗馬した状態で、反対の手でポケットに物を出し入れしやすいように考慮されたデザインです。(右手で左胸ポケットに物を入れたり、出したりするときに便利。逆も同様。)
ポケットの入り口は、フロントヨークと一体化したデザインです。そのため、フロントヨークも内側に傾斜するため、左右緩いV字になっています。
実用性もあり、デザイン性も優れたデザインだと思います。
101-Jは、両脇少し背中側のウエストバンド上にベルトとボタンでウエストを調節するアジャスターのデザインを採用しています。
乗馬の際、鞍を傷つけないようにするため、プラスチック製のボタンを採用しています。
ラングラーも60年代後半移行のモデルでは、同様の仕様を採用しています。
101-Jは、襟の後ろ側に芯が入っています。芯を固定するために横に4本のステッチが入っています。芯があるため、襟は型崩れしにくくなります。
リーバイスのジージャンは、芯が入っていません。リーバイスのジージャンでは、襟に変な折り癖がついていたり、形が崩れてしまっている物も少なくありません。
101-Jのフロントボタンやカフスボタンのホールは、イエローの色のステッチが使用されています。そして、ボタンホール部を斜めにジグザグ状のステッチが縦に入ります。
生地のインディゴブルーに対して、ステッチの色でコントラストを演出するコンセプトです。
ステッチと生地の色によるコントラストについては、101-Jのデザイン特許の説明にも含まれています。
関連記事:
[##check## 驚異的な高い完成度を誇るLee 101-Jのデザイン]
リーバイスは、ファースト(506)からフォース(70505)まで、ボタンホールは暗色系の色のステッチを採用しています。
ボタンホールの色については、リーバイスは保守的です。507や557のデザインには、ボタンホールの色は暗色系があっていると思います。
Lee 101-Jは、基本的なデザイン、仕様は長年変わっていないのですが、年代によって生地の色味、風合いが異なります。また、個体差もあります。
生地の色味や風合いが違うだけでも、漂う雰囲気、受ける印象は驚くほど異なります。
本記事で紹介した101-J 赤タグは、右腕と背中部に線状の織り傷が入ります。
古い年代のデニムでは、織り傷がないものの方が珍しいです。織り傷や生地の織りムラが醸し出す特有の風合い、雰囲気も古い年代のデニム特有の魅力と言えます。
101-Jは、機能性、実用性を考慮しながら、デザイン性を高める工夫、設計がされている傑作だと思います。
この様な時間を超越した優れたデザインの製品を生み出した背景には、競合するリーバイスに対する対抗心や研究の成果でもあると思います。
リーバイスという強力なパイオニアがいなければ、ここまで完成度の高い製品は生まれなかったと思います。
また、50年代から60年代初めにかけて、101-Jが中西部や東部で一般層の若者から幅広い人気を得たことによって、今度は逆にリーバイスが危機感を高め、101-Jに対抗するデニムジャケットの開発に力を注ぐことになりました。
101-Jとリーバイスのジージャン各モデル、特に557と比較すると、リーバイスが101-Jの優れた特徴を研究し、取り入れながら、差別化できる製品を開発しようと取り組んだことが伺われます。
Lee 101-Jを徹底的に研究し、対抗する製品として誕生した557は、現代のデニムジャケットの元祖となるほどの極めて完成度の高いデザインとなりました。
また、リーバイスの場合は、生産効率をLeeより重視していた仕様になっていることが分かります。
結果論になりますが、60年代以降、リーバイスは大成功しました。一方Leeは、60年代以降は時代の流れ、社会の変化に上手く対応できず失速し、吸収合併されてしまいました。
Lee 101-Jとリーバイスの506, 507, 557, 70505を見比べると、両社の企業としての持ち味、長所と短所、方向性などの違いが感じられ、とても興味深いです。
101-Jと557は、Leeとリーバイスの競争が生み出した傑作だと思います。
関連記事:
[##check## リーバイス 557xx ギャラ入りとLee 101-Jの比較]
[##check## ヴィンテージ Lee 101-J 黒タグの特徴]
本記事では、リーバイスのジージャンの仕様などと比較しながら、1950年代のLee 101-J 赤タグの特徴について紹介します。
[post_ads]
布製のタグ
リーバイスのデニム製品は、伝統的にパッチが取り付けられています。大まかなところで、50年代半ば以前のパッチは革素材、50年代後半以降は紙素材です。
革パッチは、乾燥機にかけると変質、収縮してしまいます。また、50年代に普及した全自動洗濯機も、革パッチに不向きでダメージを受けやすかったそうです。
現在残存している、ヴィンテージ501XXなどで、革パッチが残っている品はあまり多くありません。
50年代の後半から、リーバイスはパッチの素材を紙に変更しました。紙素材のパッチも硬化、破損しやすく、残存しているものはほとんどありません。
Leeのジージャンは、伝統的に布製のタグを採用しています。布は、破損したり消失する可能性は、非常に低いです。
![]() |
1950年代のLee 101-J 赤タグ |
革パッチの方が高級感はありますが、硬化してしまうと、着用時に煩わしく感じる人も少なくないと思います。
現在は、パッチが残っていることは、(大きな)プレミアムがあるので、残存しているものが望ましいですが、1950年代から60年代当時のリーバイス・デニム製品のユーザーの多くは、パッチを積極的に取り外していたと思われます。
Leeは、新品時の見栄えよりも実用面を優先させ、また、リーバイスとの差別化を当初から意識していたことがタグからも感じられます。
布製のため、ヴィンテージLeeのタグは残存しているものが多いです。
取り付け強化にリベットではなく、バータックを採用
リーバイスは、元来ジージャンでもジーンズと同様にリベットを採用していました。506xxでは、胸ポケットの取り付け強化もリベットを使用していました。
Leeの101-Jは、胸ポケットの取り付け強化はバータックです。
リーバイスも、セカンド(507xx)からポケット部は、リベットを廃止し、バータックに移行しています。
101-Jは、袖の付け根の部分の強化も、バータックです。
リーバイスは、セカンドまではリベットを使用していました。サードの557xxからバータックを採用しています。
フロントポケット下ダブルステッチは実はプリーツ
Lee 101-Jの胸ポケットからウエストバンドにかけて入る2本の平行ステッチは、実はプリーツになっています。
101-Jと同様にリーバイスのサードやフォースは、フロント胸ポケット下からウエストバンドにかけて、2本の平行ステッチが入りますが、プリーツではありません。
カフスは伏せ縫い
Lee 101-Jのカフスは伏せ縫いで取り付けられています。そのため、カフス部のステッチが露出していません。(一部露出している部分が少ないです。)
カフス奥の取り付けは、リーバイスのジージャンでは、ファーストは伏せ縫いでしたが、セカンドからは表側からチェーンステッチで取り付けられています。
着用の仕方によっては、この部分(チェーンステッチ)が切れたり、部分的に消失してしまう場合があります。表のステッチの消失が進むと、カフスが外れてしまいます。
伏せ縫いの場合は、ステッチの消失の可能性は、非常に低いです。
一方で、伏せ縫いは工数がかかります。リーバイスは生産性を高めるため仕様を変更したと思われます。
- [message]
- ##hand-o-right## 備考
- サードの一部のモデル(刻印なしとドット刻印のギャラ入りと刻印Oの557xx)では、カフスの取り付けは伏せ縫いになっています。
内側に傾いたフロントポケット
101-Jの胸ポケットの入り口は内側に傾いたデザインになっています。
乗馬した状態で、反対の手でポケットに物を出し入れしやすいように考慮されたデザインです。(右手で左胸ポケットに物を入れたり、出したりするときに便利。逆も同様。)
ポケットの入り口は、フロントヨークと一体化したデザインです。そのため、フロントヨークも内側に傾斜するため、左右緩いV字になっています。
実用性もあり、デザイン性も優れたデザインだと思います。
ウエストバンドのアジャスター
101-Jは、両脇少し背中側のウエストバンド上にベルトとボタンでウエストを調節するアジャスターのデザインを採用しています。
乗馬の際、鞍を傷つけないようにするため、プラスチック製のボタンを採用しています。
- [message]
- ##hand-o-right## 備考
- Lee 101-Jのウエストアジャスター・ベルトを留めるボタンは、初期の赤タグでは通常のボタンでしたが、1950年代からボタンホールが横に長い特徴的なデザインをしている通称猫目ボタン(Cat's Eye)が使用されています。
ラングラーも60年代後半移行のモデルでは、同様の仕様を採用しています。
襟の後ろに芯が入る
101-Jは、襟の後ろ側に芯が入っています。芯を固定するために横に4本のステッチが入っています。芯があるため、襟は型崩れしにくくなります。
リーバイスのジージャンは、芯が入っていません。リーバイスのジージャンでは、襟に変な折り癖がついていたり、形が崩れてしまっている物も少なくありません。
ボタンホールと飾りステッチ
101-Jのフロントボタンやカフスボタンのホールは、イエローの色のステッチが使用されています。そして、ボタンホール部を斜めにジグザグ状のステッチが縦に入ります。
ステッチと生地の色によるコントラストについては、101-Jのデザイン特許の説明にも含まれています。
関連記事:
[##check## 驚異的な高い完成度を誇るLee 101-Jのデザイン]
リーバイスは、ファースト(506)からフォース(70505)まで、ボタンホールは暗色系の色のステッチを採用しています。
ボタンホールの色については、リーバイスは保守的です。507や557のデザインには、ボタンホールの色は暗色系があっていると思います。
生地の色味、風合い
Lee 101-Jは、基本的なデザイン、仕様は長年変わっていないのですが、年代によって生地の色味、風合いが異なります。また、個体差もあります。
生地の色味や風合いが違うだけでも、漂う雰囲気、受ける印象は驚くほど異なります。
本記事で紹介した101-J 赤タグは、右腕と背中部に線状の織り傷が入ります。
古い年代のデニムでは、織り傷がないものの方が珍しいです。織り傷や生地の織りムラが醸し出す特有の風合い、雰囲気も古い年代のデニム特有の魅力と言えます。
まとめ
この様な時間を超越した優れたデザインの製品を生み出した背景には、競合するリーバイスに対する対抗心や研究の成果でもあると思います。
リーバイスという強力なパイオニアがいなければ、ここまで完成度の高い製品は生まれなかったと思います。
また、50年代から60年代初めにかけて、101-Jが中西部や東部で一般層の若者から幅広い人気を得たことによって、今度は逆にリーバイスが危機感を高め、101-Jに対抗するデニムジャケットの開発に力を注ぐことになりました。
101-Jとリーバイスのジージャン各モデル、特に557と比較すると、リーバイスが101-Jの優れた特徴を研究し、取り入れながら、差別化できる製品を開発しようと取り組んだことが伺われます。
Lee 101-Jを徹底的に研究し、対抗する製品として誕生した557は、現代のデニムジャケットの元祖となるほどの極めて完成度の高いデザインとなりました。
また、リーバイスの場合は、生産効率をLeeより重視していた仕様になっていることが分かります。
結果論になりますが、60年代以降、リーバイスは大成功しました。一方Leeは、60年代以降は時代の流れ、社会の変化に上手く対応できず失速し、吸収合併されてしまいました。
Lee 101-Jとリーバイスの506, 507, 557, 70505を見比べると、両社の企業としての持ち味、長所と短所、方向性などの違いが感じられ、とても興味深いです。
101-Jと557は、Leeとリーバイスの競争が生み出した傑作だと思います。
関連記事:
[##check## リーバイス 557xx ギャラ入りとLee 101-Jの比較]
[##check## ヴィンテージ Lee 101-J 黒タグの特徴]
COMMENTS