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初期復刻ジャケットから推測するリーバイスジャパンの製品企画力と当時の状況

ネット上で、『リーバイスの初期の復刻はディテールがいい加減で、オリジナルに忠実でない。』とのコメントを目にする事があります。



(追記:本記事は2013年に作成しました。ネット上の意見なども時と共に変化があり、最近はあまり酷評を目にしない様になりました。私はあまりネット上の意見を見る機会はないので、的確ではないかもしれません。)

その通りなのですが、私は少し異なる見方をしています。

今回は、まず、私の所有する92年製の71506を紹介し、その後で当時のリーバイスジャパンの商品企画力とコンセプトについて考察してみたいと思います。


品番は71506、1992年製です。フロントプリーツ、左胸1ポケットフラップ無し、ドーナッツボタン、シンチバック等が外観上の特徴です。

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このデザインとディテールから、第二次世界大戦中のS506XXが元のモデルと思われます。

パッチはレザーパッチです。ツーホースマーク等の表示はかなり薄くなっています。品番は71506、サイズは40です。
内側のタグ表記から、92年5月の日本製であると思われます。タグの脇に赤い線の入ったセルビッジ(赤耳)が見れます。購入時は加工されていない濃紺の状態でした。

前合わせ部ウエストバンド付近の拡大写真です。

ボタン裏の刻印はJ02です。前合わせ部の内側にセルビッジが付きます。この部分にセルビッジが見られるのは、オリジナルのファーストとセカンドの一つの特徴です。

ウエストバンド内側のステッチ処理は上下ともチェーンステッチです。


オリジナルではウエストバンド裏の下側はシングルステッチになります。
フロントポケットの取り付け強化にリベットが使用されています。これはオリジナルのファーストの特徴です。
生地の雰囲気も悪くありません。これも20年以上前のデニムなので、それなりに経年変化があると思います。

ドーナッツ状のシルバーのボタンです。オリジナルの大戦モデルの場合、リーバイスの刻印でなく、月桂樹が入ります。
このボタンデザインは戦前の古いモデルを参考にしたものと思われます。
タブは両面Big-Eの均等Vで®付きです。オリジナルは片面Big-Eの均等Vになります。
オリジナルのファーストはカフス部のボタンとボタンホールの位置が一般的なカフスとは逆になっているのが特徴です。

このジャケットもオリジナルと同じです。(ちょっと驚きました。)

カフス部(剣ボロ)の取り付け強化にリベットが使用されています。

背中下部にシンチバックが付きます。バックルのデザインは後の復刻モデルで使用しているものよりも見た目がオリジナルに近いです。
このジャケットは、製造された92年頃に、ジーンズショップの店頭に展示されているのを見て、即座に購入したものです。

購入の動機は、ジージャンと言うとトラッカージャケットのデザインがあまりにも長年普及しており、あまのじゃくな私はトラッカージャケットでないデザインに一目惚れしてしまいまったためです。


これを購入した前後にセカンドのタイプもリーバイスジャパンでは販売しており、それも速攻で買っていました。

購入時の価格については良く覚えていませんが、2万5千円くらいだった様な気がします。当時のレギュラーのGジャン等に比べるとかなり高い値段でしたが、当時の自分の感覚としてはプレミアム感が感じられ、妥当な価格だと思いました。


今回の記事を書くために改めて、各部を見たり、タブを見て92年製である事を知り、感慨深いものがあります。新品で購入して20数年所有しているので、それなりに愛着があります。また、デザイン、仕上がり的にかなりのレベルだと改めて感心しました。


冒頭に書いた様に、90年代初め頃の初期の復刻はディテールの再現がいい加減であるとの評価をされる場合があります。確かに、オリジナルのディテールと異なっているところがあります。


今は、ネットが普及し、情報も簡単に入手できます。また、ヴィンテージがブームとなり、ディテールの検証がかなり進み情報も豊富です。しかし、この製品が作られた1992年はヴィンテージ・ブームの起きる前です。当時はインターネットが一般に普及する遥か前の時代です。ヴィンテージ品についての情報はほとんど皆無で一般には知られていませんでした。


つまり、90年代前半のヴィンテージ関連の市場、情報量は今とは格段の差があります。購入する側のヴィンテージに対しての商品知識も現在とは大きく異なります。実際、購入した私はヴィンテージについての知識は皆無でした。


このジャケットは、ヴィンテージの知識を持たない当時の人々を顧客対象としてリーバイスジャパンにおいて企画され作られたものです。また、当時復刻と言うコンセプト自体確立していない中での商品企画であったわけで、特にオリジナルそのものを忠実に再現することは必要性としても感じられない状況だったと思います。


率直に言って、「ある特定の年代のオリジナルのモデルを忠実に再現する」と一旦、指針が出てしまえば、仕様決め(真似するだけ)はある意味簡単です。その様な指針、方向性が定まっていない時点での仕様決めと言うのは難しいと思います。


また、リーバイスの様な歴史と伝統のある会社において、過去の製品を復元して販売する事による是非と言う議論、内部の反対論もあったと思います。


その様なことを考えると、「良くここまでやったな〜。」と私は感慨深い気持ちになります。501で伝統的に使用されていたセルビッジ付きの峡幅デニム(通称赤耳)は83年に製造中止となり、86年に在庫も尽きて市場から消えています。


現在はセルビッジ付きのデニムのプレミアム性は広く認知されていますが、当時はほとんど知られていなかったと思います。少なくとも私は全く知りませんでした。セルビッジ付きデニムをあえて使用すること、細部のデザインディテールについても、リーバイスジャパンのこだわりが感じられます。当時としては、「ここまでやる必要があるのか?」と言う社内でも議論があったのではないかと想像しています。そして、この商品企画を承認した会社の上層部の英断、素晴らしいと思います。(勝手な想像ですが、一般的に言って、この様なレベルの商品企画は会社の上層部の承認が必要だと思います。)


その後のヴィンテージブーム、国内発ブランドの台頭等もあり、90年代の後半にLVCが発足します。このLVCの発足に至までの過程におけるリーバイスジャパンの貢献度は計り知れないものがあったと思います。


その様な事を考えると、このジャケットもリーバイス・ジャパンの歴史の中で意義深い製品の一つなのではないかと考えます。


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