現行の501の内側の左スレーキ(ポケット内側の布)を見ると、以下の写真の様な枠内に絵や文字が色々と記載されたマークの様なものが印刷されています。
これは、ギャランティーチケットと呼ばれるもので、以前は右後ろポケット部にフラッシャーと共に付けられていました。
このギャランティーチケットは、リーバイスのジーンズのウエストバンド部に付けられているパッチと同様に伝統のあるもので、色々な意味が込められています。
2003年まで生産されていた米国製の501までは、新品時に右後ろポケット部に左の様な2枚の紙が付けられているのをご存知の方も少なくないかと思います。
上がフラッシャー、下がギャランティーチケットになります。
ギャランティーチケットは品質保証書のことです。1890年にリーバイス社のウエストオーバーオール(ジーンズの当時の一般名称)に501の品番が付与されたのが501誕生の起源です。この年、リーバイス社の所有するパンツのポケット強化にリベットを使用する特許の期限が切れ、他社が続々とリベットを使用したオーバーオールを発売しだします。
リーバイスは自社のジーンズがリベット使用のオーバーオールの元祖であること、そして最高の品質を保証することを示すためギャランティーチケットを付けて販売しました。尚、1890年当初は現行の様にポケットの内側にプリントされていた様です。リーバイス社によると一番最初にギャランティーチケットが付けられたのは、1892年とのことです。
左の写真は、最初期のギャランティーチケットの印刷用の石です。Litho Stone(石盤印刷用の石)と呼ばれるものです。リーバイス社のホームページから引用しています。
この石を使ってオイルクロスに印刷してギャランティーチケットを作っていたそうです。
ギャランティーチケットも手作りだったとは!!
上が最初期と思われるギャランティーチケット(上段)のデザインです。このすぐ後に大幅なデザイン変更が行われた様です。
下段左はOLD DEACONと言うウイスキー、右はITALIAN SWISS COLONYと言うワインのラベル印刷用の様です。
左の写真は1899年のギャランティーチケットです。(ソース:リーバイス社)
一番上の写真とフォーマット(構成)や記載内容がかなり共通していることが分かると思います。
つまり、ギャランティーチケットは100年以上前から始まり、ほとんどデザインは変わっていない事がお分かり頂けるかと思います。
左上には、GRAND SILVER MEDAL AWARDED BY MECHANICS INSTITUTE (メカニクス(機械工)協会からグランド・シルバーメダルを受賞)、その下にSILVER MEDAL AWARDED BY CAL. STATE FAIR (カリフォルニア州フェアにてシルバーメダル受賞)のマーク。右側には、パッチにも表示されている有名なツーホースロゴとその上に、LEVIS STRAUSS & CO. SAN FRANSCISCO CAL. "COPPER RIVETED" (銅リベット使用)CLOTHING(衣料)のロゴマークがあります。この左右のロゴマークは上の現行でも基本的な配置、構成は変わりません。
中央上段から順に、"FOR OVER 26 YEARS", "OUR CELEBRATED XX BLUE DENIM COPPER RIVETED OVERALLS", "HAVE BEEN BEFORE THE PUBLIC."と続きます。3行合わせた意味としては、「我々の記念すべきXXブルーデニムのカッパーリベット・オーバーオールは世間に広まる以前から26年以上もの間存在(誕生から経過)しています。」
リーバイス社によると本チケットは1899年のものとされています。リベット特許取得が1873年でそれから26年後であることからの年の推定と思われます。この年表記については後のモデルでは5年刻みに変更になります。毎年更新するのはちょっと無理があると思うので妥当な変更です。
上の3行の文言の下に、"This is a pair of them." 「これがそのペアの一つです。」
さらに下には、"THEY ARE POSITIVELY SUPERIOR" "to any made in the United States and enjoy a national reputation. Only the very best Materials that money can purchase are used in their Manufacture."と文章が続きます。
こちらの訳は、「これらは米国で作られている他の製品に比べて明らかに優れており、国内での好評を得ています。買う事のできる最上級の素材のみを使用して作られています。」
そして、"EVERY PAIR GUARANTEED", "THEY ARE MADE OF SELECTED NINE OUNCE AMOSKEAG DENIM"(黄色の枠の部分”, "AND SEWED WITH THE STRONGEST LINEN THRED."「全てのペアは、(以下記載の品質が)保証されています。厳選された9オンスのアモスケイグ・デニムで作られ、そして、最も強いリネンの糸で縫われています。」
"WE SHALL THANK YOU TO CAREFULLY EXAMINE THE SEWING, FINISH & FIT."
「縫製、仕上がり、そしてフィットについて注意深くご覧になっていただければ、ありがたいです。」
"CAUTION: See that this pair bears the quality number which is XX and also our Trade
Mark"「注:このペア(ジーンズ一本をペアと呼ぶ)は、我々のトレードマークでもあるXXの品番を与えられた製品です。」
"BY CUTTING THE THREAD THIS TICKET CAN BE REMOVED", 「(取り付けている)糸を切っていただければ、このチケットは取り外せます。」
これからの後の年代のギャランティーチケットと記載内容の比較をしますが、基本的な文言、メッセージは100年間以上変わっていません!
それでは、次に"FOR OVER 50YEARS"のギャランティーチケットを紹介します。こちらもリーバイス社のWebページから参照させていただいています。
リーバイス社によると本チケットは1927年のものであるとしています。
1899年のものと同様の計算をした場合、1873年に50年を加えると1923年です。なぜ、1923年ではなく、1927年なのかは左下にCOPY RIGHT, 1927と書かれているためです。そのため、チケットは1927年以降であることが分かります。さらに1928年、またはそれ以降であれば、FOR OVER 55 YEARSの方が適当です。恐らくこの様な見方から本チケットの推定年を絞り込んで1927年としていると思われます。
ここで注目すべき箇所は黄色で囲っている部分の表記です。"THEY ARE MADE OF SELECTED NINE OUNCE AMERICAN DENIM"とAMOSKEAG(アモスケイグ)からAMERICANに変更になっています。コーンミルズからのデニムの調達は1915年に始まり、1922年にはコーンミルズに一本化されていましたが、ギャランティーチケットではコーンミルズの名前ではなくアメリカンの表現になっているところが興味深いところです。
(追記:リーバイス社のFacebook内に"FOR OVER 35 YEARS"のギャランティーチケットがありました。本写真はFacebookメンバーのみ閲覧できるため、リーバイス社の承諾無しにこのブログに掲載するのは不適切と考えるため割愛致します。尚、当該チケットでもアモスケイグの名前でなくアメリカンに変更になっていました。このチケットの年代は、1873+35=1908年以降になります。コーンミルズからの調達開始が1915年なので、このチケットも恐らく年代としてはそれに近いと思われます。)
当時、アモスケイグ等のデニム生地メーカーの衰退が激しく、コーンミルズの独壇場だった様です。そのため、コーンミルズの名前を表記する事は競合との差別化にならないため、あえて名前をだしていないのだと思います。
もう一つの注目すべき変更点は、"This is a pair of them"から"This is a pair of Levi's"です。リーバイス社によると、当時、デニムパンツは、競合会社のオーバーオール(ジーンズ)も含めてLevi'sと呼ばれる様になっていたため(つまりLevi'sがオーバーオールの代名詞となっていた)、1927年にLevi'sをトレードマークとして登録し、オリジナルである事を強調する様にthemからLevi'sに変更したとのことです。
1920年代の後半はLeeが怒濤のごとく新製品を市場に投入してきます。(関連記事: Lee 91-Jの歴史とディテールの特徴)恐らく当時は、LeeとLevi'sの顧客層はある程度分かれていて、真っ向から競合するところはそれ程多くはなかったと思います。しかし、それでもLeeの存在はLevi'sにとってもかなり脅威だったと思います。
次の記事で1930年代以降のギャランティーチケットの記載内容等についての紹介をする予定です。
これは、ギャランティーチケットと呼ばれるもので、以前は右後ろポケット部にフラッシャーと共に付けられていました。
このギャランティーチケットは、リーバイスのジーンズのウエストバンド部に付けられているパッチと同様に伝統のあるもので、色々な意味が込められています。
2003年まで生産されていた米国製の501までは、新品時に右後ろポケット部に左の様な2枚の紙が付けられているのをご存知の方も少なくないかと思います。
上がフラッシャー、下がギャランティーチケットになります。
ギャランティーチケットは品質保証書のことです。1890年にリーバイス社のウエストオーバーオール(ジーンズの当時の一般名称)に501の品番が付与されたのが501誕生の起源です。この年、リーバイス社の所有するパンツのポケット強化にリベットを使用する特許の期限が切れ、他社が続々とリベットを使用したオーバーオールを発売しだします。
リーバイスは自社のジーンズがリベット使用のオーバーオールの元祖であること、そして最高の品質を保証することを示すためギャランティーチケットを付けて販売しました。尚、1890年当初は現行の様にポケットの内側にプリントされていた様です。リーバイス社によると一番最初にギャランティーチケットが付けられたのは、1892年とのことです。
左の写真は、最初期のギャランティーチケットの印刷用の石です。Litho Stone(石盤印刷用の石)と呼ばれるものです。リーバイス社のホームページから引用しています。
この石を使ってオイルクロスに印刷してギャランティーチケットを作っていたそうです。
ギャランティーチケットも手作りだったとは!!
上が最初期と思われるギャランティーチケット(上段)のデザインです。このすぐ後に大幅なデザイン変更が行われた様です。
下段左はOLD DEACONと言うウイスキー、右はITALIAN SWISS COLONYと言うワインのラベル印刷用の様です。
左の写真は1899年のギャランティーチケットです。(ソース:リーバイス社)
一番上の写真とフォーマット(構成)や記載内容がかなり共通していることが分かると思います。
つまり、ギャランティーチケットは100年以上前から始まり、ほとんどデザインは変わっていない事がお分かり頂けるかと思います。
左上には、GRAND SILVER MEDAL AWARDED BY MECHANICS INSTITUTE (メカニクス(機械工)協会からグランド・シルバーメダルを受賞)、その下にSILVER MEDAL AWARDED BY CAL. STATE FAIR (カリフォルニア州フェアにてシルバーメダル受賞)のマーク。右側には、パッチにも表示されている有名なツーホースロゴとその上に、LEVIS STRAUSS & CO. SAN FRANSCISCO CAL. "COPPER RIVETED" (銅リベット使用)CLOTHING(衣料)のロゴマークがあります。この左右のロゴマークは上の現行でも基本的な配置、構成は変わりません。
中央上段から順に、"FOR OVER 26 YEARS", "OUR CELEBRATED XX BLUE DENIM COPPER RIVETED OVERALLS", "HAVE BEEN BEFORE THE PUBLIC."と続きます。3行合わせた意味としては、「我々の記念すべきXXブルーデニムのカッパーリベット・オーバーオールは世間に広まる以前から26年以上もの間存在(誕生から経過)しています。」
リーバイス社によると本チケットは1899年のものとされています。リベット特許取得が1873年でそれから26年後であることからの年の推定と思われます。この年表記については後のモデルでは5年刻みに変更になります。毎年更新するのはちょっと無理があると思うので妥当な変更です。
上の3行の文言の下に、"This is a pair of them." 「これがそのペアの一つです。」
さらに下には、"THEY ARE POSITIVELY SUPERIOR" "to any made in the United States and enjoy a national reputation. Only the very best Materials that money can purchase are used in their Manufacture."と文章が続きます。
こちらの訳は、「これらは米国で作られている他の製品に比べて明らかに優れており、国内での好評を得ています。買う事のできる最上級の素材のみを使用して作られています。」
そして、"EVERY PAIR GUARANTEED", "THEY ARE MADE OF SELECTED NINE OUNCE AMOSKEAG DENIM"(黄色の枠の部分”, "AND SEWED WITH THE STRONGEST LINEN THRED."「全てのペアは、(以下記載の品質が)保証されています。厳選された9オンスのアモスケイグ・デニムで作られ、そして、最も強いリネンの糸で縫われています。」
"WE SHALL THANK YOU TO CAREFULLY EXAMINE THE SEWING, FINISH & FIT."
「縫製、仕上がり、そしてフィットについて注意深くご覧になっていただければ、ありがたいです。」
"CAUTION: See that this pair bears the quality number which is XX and also our Trade
Mark"「注:このペア(ジーンズ一本をペアと呼ぶ)は、我々のトレードマークでもあるXXの品番を与えられた製品です。」
"BY CUTTING THE THREAD THIS TICKET CAN BE REMOVED", 「(取り付けている)糸を切っていただければ、このチケットは取り外せます。」
これからの後の年代のギャランティーチケットと記載内容の比較をしますが、基本的な文言、メッセージは100年間以上変わっていません!
それでは、次に"FOR OVER 50YEARS"のギャランティーチケットを紹介します。こちらもリーバイス社のWebページから参照させていただいています。
リーバイス社によると本チケットは1927年のものであるとしています。
1899年のものと同様の計算をした場合、1873年に50年を加えると1923年です。なぜ、1923年ではなく、1927年なのかは左下にCOPY RIGHT, 1927と書かれているためです。そのため、チケットは1927年以降であることが分かります。さらに1928年、またはそれ以降であれば、FOR OVER 55 YEARSの方が適当です。恐らくこの様な見方から本チケットの推定年を絞り込んで1927年としていると思われます。
ここで注目すべき箇所は黄色で囲っている部分の表記です。"THEY ARE MADE OF SELECTED NINE OUNCE AMERICAN DENIM"とAMOSKEAG(アモスケイグ)からAMERICANに変更になっています。コーンミルズからのデニムの調達は1915年に始まり、1922年にはコーンミルズに一本化されていましたが、ギャランティーチケットではコーンミルズの名前ではなくアメリカンの表現になっているところが興味深いところです。
(追記:リーバイス社のFacebook内に"FOR OVER 35 YEARS"のギャランティーチケットがありました。本写真はFacebookメンバーのみ閲覧できるため、リーバイス社の承諾無しにこのブログに掲載するのは不適切と考えるため割愛致します。尚、当該チケットでもアモスケイグの名前でなくアメリカンに変更になっていました。このチケットの年代は、1873+35=1908年以降になります。コーンミルズからの調達開始が1915年なので、このチケットも恐らく年代としてはそれに近いと思われます。)
当時、アモスケイグ等のデニム生地メーカーの衰退が激しく、コーンミルズの独壇場だった様です。そのため、コーンミルズの名前を表記する事は競合との差別化にならないため、あえて名前をだしていないのだと思います。
もう一つの注目すべき変更点は、"This is a pair of them"から"This is a pair of Levi's"です。リーバイス社によると、当時、デニムパンツは、競合会社のオーバーオール(ジーンズ)も含めてLevi'sと呼ばれる様になっていたため(つまりLevi'sがオーバーオールの代名詞となっていた)、1927年にLevi'sをトレードマークとして登録し、オリジナルである事を強調する様にthemからLevi'sに変更したとのことです。
1920年代の後半はLeeが怒濤のごとく新製品を市場に投入してきます。(関連記事: Lee 91-Jの歴史とディテールの特徴)恐らく当時は、LeeとLevi'sの顧客層はある程度分かれていて、真っ向から競合するところはそれ程多くはなかったと思います。しかし、それでもLeeの存在はLevi'sにとってもかなり脅威だったと思います。
次の記事で1930年代以降のギャランティーチケットの記載内容等についての紹介をする予定です。
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