年代等の判定や推定をする上での判定材料について、私が日頃注意している事柄について事例を含めて説明します。
一般的にアメリカの文化、気質はおおらかで細かいことについて、あまり注意を払わない場合が往々にしてあります。また、間違いは誰でもおかすことであり、間違いについて非常に寛容です。
バットウイングのロゴはWalter Landor & Associatesがデザインしました。Walter Landor & Associatesの現在のサイトには以下の様な説明があります。
When Levi Strauss & Co. executives wanted a new garment label for their blue jeans in 1969, they came to Walter Landor, whose designers developed the distinctive red-and-white “batwing” to be placed on back pockets. The red shield mimicked the pocket's stitch pattern and incorporated the Levi’s lettering. This was among the first designs to mix capital and lowercase letters throughout a single logo.
訳: LS&Co (リーバイス社)のエグゼクティブは、1969年に彼らのブルージンズに新しい衣料品用のラベルが欲しいと考え、ウォルターランダーに依頼しました。ウォルターランダーのデザイナーは、バックポケットに象徴的な赤と白の”バットウイング”を生み出しました。バックポケットのステッチパターンに似せた赤で覆われた形にリーバイスの文字を統合しました。これは、大文字と小文字を混ぜて一つのロゴにした最初のデザインの一つでした。
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この説明を読むと、かなり具体的な話が書かれており、なる程、これが正しいのではないか?と思うと思います。依頼したのが1969年であれば、ロゴができるのはどんなに早くても同年です。後の年であると推定します。
この説明を読むと、かなり具体的な話が書かれており、なる程、これが正しいのではないか?と思うと思います。依頼したのが1969年であれば、ロゴができるのはどんなに早くても同年です。後の年であると推定します。
また、この話は、1971年にリーバイスが株式上場を見据えて、新しいロゴデザインを依頼したと前後関係を結び付けて考えることもできます。
ところが、リーバイス社の資料やサイトには、バットウイングがデザインされたのは1967年であると記載がされています。
ところが、リーバイス社の資料やサイトには、バットウイングがデザインされたのは1967年であると記載がされています。
どちらが正しいのでしょうか?それとも、どちらも正しい、または、正しくないのでしょうか?
リーバイス社の説明は、デザインされたのは1967年であるが、発表されて使用されたのは後年、例えば1971年であると解釈することもできます。
デザインされたのは、発表されるよりは前であることは確実なことです。一般的に考えれば、リーバイス社が1967年とあえて表示するのであれば、それはリーバイス社がロゴの使用を開始した年と考えるのが妥当だと思います。
この様な相反する材料、資料がある場合に、どちらが正確なのか判断することは非常に難しいです。
実際どうなのか?明確な答えがない、出すことができない場合も多いです。しかし、今回のケースに関しては、幸運にも答えが見つかりました!
下の写真は、リーバイス1968年春用の販売店向けのカタログの表紙です。バットウイングのロゴマークが大々的に表示されています。
この写真は1968年の初め以前にはバットウイングは存在したことを示す証拠となります。
1968年の春物のカタログは、一般的に1968年の1-3月頃に配布されます。印刷はその前になります。さらに、印刷を行う前に掲載される商品、価格、内容、写真の選定が行われます。 ロゴは1967年にはリーバイス社が受け取っていた可能性が非常に高いです。
この資料により、冒頭で引用したWalter Landor & Associatesの現在のサイトの説明が正しくないことを示しています。
世の中には確証がなくても、あたかも確信に満ちた様に話したり、書いたりする場合があります。メディアやネット等の情報でも、正確でない物は少なからずあります。
今回の場合もその一例になります。さらにやっかいなことは、今回の場合は、バットウイングのデザインを行った会社のサイトに、不正確な情報が明確に記載されている事例です。
年代等の判定をする場合は、その判定を行う上での材料となる情報の信頼性、確度についても十分に 注意を払うべきです。
リーバイス社は、アーカイブと呼ばれる過去の製品や資料を保管する場所があり、管理する人がいます。さらに、ヒストリアンと呼ばれるリーバイス社の歴史を把握し、文書や資料の執筆、インタビュー他の広報活動、リーバイス社の過去の製品の取得や解析を行う専門職が存在します。
1906年に起きたサンフランシスコ大地震の際リーバイスの本社ビルは火災の被害もあり、建物は崩壊してしまいました。その際にそれまで管理していた資料も失いました。しかし、その後、収集を重ねて、1906年以前の資料や製品も管理しています。
1906年以降については、資料や製品の管理は火災等で損失しない様に耐震耐火に非常にするぐれた保管庫を備え厳重に管理しています。
戦後の資料についてはかなりのものが残っていると思われます。リーバイス社の歴史等についての資料や情報の信頼性は、一般的に(かなり)高いと言えます。
今回のバットウイングについても、リーバイス社の公表資料・情報の内容の信頼性の高さを示しています。
これまでも、一般的に認知されているリーバイス製品やディテール等の登場や移行年等で、リーバイス社の公表と少し異なる場合があるものが、いくつかあります。
その例として、”2014年9月に投稿したリーバイス507XX1953年登場説についての考察”と言う記事を投稿しています。
リーバイス社の公表資料や情報はかなり信頼性が高いと思っています。しかし、リーバイス社の資料や情報の中でも、「おやっ?それはちょっと違うのでは?」と思ったりすることも時折あります。
情報の取り扱い、信頼性や確度については、できる限り内容を確認する様にしています。また、その時には年代判定が正しいと思われていたことでも、後で見直しが必要となるデータが見つかったりすることはあります。
これは、一般的な歴史や古代史、古い年代の芸術作品や製品等、全てのことに該当します。私のブログの中の記事でも、後で見直した場合に、修正する必要があるものもあると思います。
今回の例は幸いなことに明確な答えとなる資料が見つかりましたが、そうでない場合の方が多いです。明確な答えがない。しかし、その答えを探したり、色々と考えたり、検討したりすることもヴィンテージの楽しさの一つだと私は思います。
関連記事:
[##check## リーバイスのバットウイング ロゴ登場年について]
リーバイス社の説明は、デザインされたのは1967年であるが、発表されて使用されたのは後年、例えば1971年であると解釈することもできます。
デザインされたのは、発表されるよりは前であることは確実なことです。一般的に考えれば、リーバイス社が1967年とあえて表示するのであれば、それはリーバイス社がロゴの使用を開始した年と考えるのが妥当だと思います。
この様な相反する材料、資料がある場合に、どちらが正確なのか判断することは非常に難しいです。
実際どうなのか?明確な答えがない、出すことができない場合も多いです。しかし、今回のケースに関しては、幸運にも答えが見つかりました!
下の写真は、リーバイス1968年春用の販売店向けのカタログの表紙です。バットウイングのロゴマークが大々的に表示されています。
この写真は1968年の初め以前にはバットウイングは存在したことを示す証拠となります。
1968年の春物のカタログは、一般的に1968年の1-3月頃に配布されます。印刷はその前になります。さらに、印刷を行う前に掲載される商品、価格、内容、写真の選定が行われます。 ロゴは1967年にはリーバイス社が受け取っていた可能性が非常に高いです。
この資料により、冒頭で引用したWalter Landor & Associatesの現在のサイトの説明が正しくないことを示しています。
世の中には確証がなくても、あたかも確信に満ちた様に話したり、書いたりする場合があります。メディアやネット等の情報でも、正確でない物は少なからずあります。
今回の場合もその一例になります。さらにやっかいなことは、今回の場合は、バットウイングのデザインを行った会社のサイトに、不正確な情報が明確に記載されている事例です。
年代等の判定をする場合は、その判定を行う上での材料となる情報の信頼性、確度についても十分に 注意を払うべきです。
リーバイス社は、アーカイブと呼ばれる過去の製品や資料を保管する場所があり、管理する人がいます。さらに、ヒストリアンと呼ばれるリーバイス社の歴史を把握し、文書や資料の執筆、インタビュー他の広報活動、リーバイス社の過去の製品の取得や解析を行う専門職が存在します。
1906年に起きたサンフランシスコ大地震の際リーバイスの本社ビルは火災の被害もあり、建物は崩壊してしまいました。その際にそれまで管理していた資料も失いました。しかし、その後、収集を重ねて、1906年以前の資料や製品も管理しています。
1906年以降については、資料や製品の管理は火災等で損失しない様に耐震耐火に非常にするぐれた保管庫を備え厳重に管理しています。
戦後の資料についてはかなりのものが残っていると思われます。リーバイス社の歴史等についての資料や情報の信頼性は、一般的に(かなり)高いと言えます。
今回のバットウイングについても、リーバイス社の公表資料・情報の内容の信頼性の高さを示しています。
これまでも、一般的に認知されているリーバイス製品やディテール等の登場や移行年等で、リーバイス社の公表と少し異なる場合があるものが、いくつかあります。
その例として、”2014年9月に投稿したリーバイス507XX1953年登場説についての考察”と言う記事を投稿しています。
リーバイス社の公表資料や情報はかなり信頼性が高いと思っています。しかし、リーバイス社の資料や情報の中でも、「おやっ?それはちょっと違うのでは?」と思ったりすることも時折あります。
情報の取り扱い、信頼性や確度については、できる限り内容を確認する様にしています。また、その時には年代判定が正しいと思われていたことでも、後で見直しが必要となるデータが見つかったりすることはあります。
これは、一般的な歴史や古代史、古い年代の芸術作品や製品等、全てのことに該当します。私のブログの中の記事でも、後で見直した場合に、修正する必要があるものもあると思います。
今回の例は幸いなことに明確な答えとなる資料が見つかりましたが、そうでない場合の方が多いです。明確な答えがない。しかし、その答えを探したり、色々と考えたり、検討したりすることもヴィンテージの楽しさの一つだと私は思います。
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