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Wrangler 誕生の背景とヴィンテージ ラングラー ジージャンの特徴

1951年のカウボーイカタログのWranglerのページ。ラングラーのデニムジャケット、パンツを着用する4人の歴代のロデオチャンピオンのイラスト
1951年のカウボーイカタログ内
Wranglerのページ
ひとつ前と二つ前の記事において、リーバイス、Leeのヴィンテージ・ジージャンの種類と特徴を続けて紹介しました。

[ヴィンテージ リーバイス ジージャンの種類と特徴 ##link##]


[ヴィンテージ Lee ジージャンの種類と特徴 ##link##]

リーバイス、Leeを紹介したら、やはり、Wranglerを外すことはできません。(笑)これらデニム3大ブランドのジージャンは、それぞれ本当に異なる特徴を持っています。

ヴィンテージ・ラングラーのジージャンは、他の2社の製品とは全く異なる特徴、個性的なデザインのモデルもあります。

当時のラングラーのジージャンは、なぜここまで個性的で際立つ独創的なデザインをしているのかについては、ラングラーの歴史を知ると想像しやすいです。
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ラングラー誕生の背景・歴史


”Wranlger"の名称は、1943年にブルーベルが買収したCasey Jones社が所有していたものです。実際はケーシージョーンズでは、ほとんど使われていなかったとのことです。

1946年にブルーベルは、ロデオスターやカウボーイ達、映画のカウボーイの衣装をデザインして有名なカスタム・テイラーのRodeo Benを採用し、カウボーイ向けのジーンズラインの開発を開始します。

ブルーベルの社員達は、ジーンズのブランド名を決めるコンテストを行いました。そのコンテストで優勝した名前がラングラーです。

Wranglerは、働くカウボーイ・カウボーイ(プロのカウボーイ)の意味です。

翌年の1947年、13のペアのプロトタイプをテストした後、ブルーベルはWrangler 11MWZを発表します。

ブルーベルはキャンペーンの中で、ロデオの伝説的選手であるフレックルスブラウン、ビルリンドマン(上写真右端)、ジムショルダーズ(上写真左端)がテストして認めたものであると宣伝しました。

1950年のカウボーイカタログのラングラーのページの説明によると、ブルーベル社は、世界最大のワークウェアのメーカーとあります。

ワークウェア・メーカーとして非常に有名なLeeは、ブルーベルのライバルだったこととなります。

Leeは1920年代からデニム製品を続々と開発し、市場に投入しています。

ブルーベルは、母体ハドソン・オーバーオールズの名からも分かるように、オーバーオールが主力製品・原点です。

当然のことながら、ブルーベルも戦前からデニム製品についても力を入れていたと思います。

しかし、デニム製品については、Leeに遅れをとっていたと推測しています。

戦後、世の中が大きく動き出す中で、ブルーベルが新たに立ち上げたジーンズ専用の製品ラインのラングラーは、Leeとリーバイスの間に割って入る戦略的なブランドだったと思われます。

ブルーベルの戦略は、ブランドの名前を含めカウボーイに完全に的を絞っています。そして、プロロデオの選手達と契約して、製品開発、宣伝に活用するなど、製品・営業戦略も非常に力が入っていて、徹底的です。

冒頭に添付した写真のようにラングラーの製品紹介には、歴代のロデオチャンピオンが愛用するブランドであることが強調されています。


ラングラーのジージャンの特徴



ラングラーのジージャンは、Leeとは対照的にデザイン変更を比較的頻繁に行っています。

ブランド立ち上げのために採用したロデオ・ベンはカスタムテイラーであり、衣装デザイナーなので、ある意味当然とも言えます。

また、あまりモデルチェンジを行わない競合に対して、積極的に細部の仕様などを変更することで、差別化、機能向上を実現していたとも言えます。

ラングラーのジージャンは、デザインが個性的で各部に工夫が凝らされています。

1956年にジッパーを採用した11MJZを発表後、主力デニムジャケットは、ボタン留めのタイプとジッパーの2モデルを並行で生産・供給した点も、Leeやリーバイスとは異なるところです。

ヴィンテージ ラングラー ジージャン


1950年代から70年代頃まで、ラングラーは頻繁に仕様・デザインの変更を行っているため、様々な種類があります。ここでは、ヴィンテージラングラーの代表作である111MJと11MJZを中心に紹介します。


11MJと111MJの違い



通称ファーストと呼ばれたりもします。ラングラー誕生後発表された最初のデニムジャケット11MJは、1950年頃に111MJに名称が変更になりました。

手持ちの1950年発行のカウボーイカタログでは、11ではなく111の表示であることを確認しています。

11MJと111MJの違いは、前者のパッチ素材は革で、後者はプラスチックであることが識別のポイントとなります。

また、11MJには通称プロトと呼ばれるモデルがあります。英語では、プロトはprototypeで試作の意味です。量産用の試作は、通常、pre-production sampleが使われます。

IIMJのプロトと呼ばれている製品は、恐らく量産品だと思うので、”プロト”の名称は英語表現としては、ちょっと違うのではと思うのですが、通称として認知されているので従います。

一般に認知されている11MJのプロトの特徴は、フロントプリーツを留めるのが、111MJで採用されている特徴的な丸カンではなく、リーバイスと同様のボックスステッチであること。

そして、肩部のアクションプリーツがないことが特徴のようです。
上の画像の左のジムショルダーズが着ているものは、11MJ、またはプロトと思われます。右のTOOTS MANSFIELDが着用しているのは、111MJと思います。

プリーツを留めるカンヌキが、右は丸カンになっています。またポケットの大きさ、形状と位置が異なります。

ポケットに入るサイレントWも上下の振り幅が大きいのが古い年代の特徴です。

ポケットの取り付け位置については、特徴のところに掲載しているもう一つ上の画像、右ビル・リンドマンが着用しているジャケットも丸カンですが、ポケットの位置は低めになっています。

彼らはロデオのチャンピオン達なので、専用のカスタムモデル、または、テスト用の試作(文字通りのプロトタイプ)だったのかもしれません。

1950年代の111MJ


フロントは両胸に2ポケット。プラップはスナップボタンが採用されています。

リーバイス 506XXと同様に前立て両側にプリーツが入ります。プリーツを留めるのは、丸い形状のバータックです。通称、丸カンと呼ばれています。

丸カンは、外観上の大きなアクセント担っていると思います。
後ろ側の全体写真です。下部の両側にウエスト部のサイズを調整するバックルが取り付けられています。
111MJのデザイン上の大きな特徴は、背中肩口にプリーツが入っていることです。

このとても特徴的なデザインは、アクションプリーツと呼ばれています。
このプリーツは、内側からゴムで引き入れられています。

手を動かしたりする時はプリーツ部が伸びて動きやすく、そしてゴムで内部に引き入れることで外観上はスリムでシャープなスタイルを実現しています。

独創性、創意工夫がある機能です。造り的にも非常に凝っています。

11MJZ


1956年に登場したのが11MJZです。通称、セカンドとも呼ばれています。

11MJZはジップフライであることが大きな特徴の一つです。フロントプリーツと丸カンが左右縦に各一列の構成。

胸ポケットは、左のみ。その代わり、下左右にハンドウォーマー・ポケットが加わり、合計3ポケットの構成です。

111MJとはかなり異なる外観を備えています。

ハンドウォーマーポケットをいち早く採用しているところも、特筆すべき点です。
背中側の写真です。(上の11MJZとは別の品です。)

肩口にはアクションプリーツを備えています。プリーツの幅が拡大され、内側で固定するゴムも各2本に増設されています。

縦にヨークによる切り替えが入り、下部の内側にゴムによってウエストを絞るデザインとなっています。
着用すると、ウエストにかけて絞られるシルエットが引き立つデザインです。

前から見ても、非常にインパクトがあります。

考察・感想


111MJと11MJZ、どちらも非常に個性的で創意工夫が凝らされた名作だと思います。

対象市場をカウボーイに絞り、独創的でデザイン性に優れたジージャンを開発し、細部を変更しさらに完成度を高めるアプローチをとっていることには驚嘆に値すると思います。

この2品を実際に手にしてみた時、正直な感想として、「ここまでするか?」と思いました。

逆に言えば、ここまでしたからこそ、リーバイスとLeeの牙城を崩して、カウボーイ市場での圧倒的なシェアを獲得する成功を成し遂げたとも解釈できます。

カウボーイウェアは、カウボーイだけでなく、ウエスタンウェアとして、一般市民にも幅広く普及しています。

ラングラーもLeeも、現在はVFコーポレーションの傘下にあるブランドとして残っています。

現在の米国内のジーンズ市場では、Leeの存在は非常に希薄です。(日本のLeeは、エドウインが商権を持っており、全てエドウイン製です。)

一方のWranglerは、同じVFコーポレーションの傘下でありながら、現在もカウボーイとアメリカ中西部の人々から圧倒的な支持を得ています。

ラングラーの主要デニム製品は、生産は海外に移転しましたが、生地を含めて70年代以降ほとんど変わっていません。

ブランド発足時のターゲット顧客層から非常に強い支持を得ているため、ほぼ仕様的に固まった70年代以降は、逆に変更することは許されない状況にあるとも言えます。

それだけのビジネスを獲得していることを示しています。

90年代の後半以降、リーバイスが505のデザインを極端に太くしたり、ローライズにしたりした時、長年505を愛用していた多くの人たちから不評を買いました。

それらの人々の多くの間で、ラングラーの13MWZは大好評です。

505がかつて持っていた魅力を今でも変わらずに備えているからです。

最近になって、リーバイスも90年代後半以降の505の製品戦略・企画が失敗だったことに気付き、今は保守的なスタイルに戻しています。

ラングラーのファーストとセカンドのジージャンしか紹介しておりませんが、この二つの名作を見るだけでも、当時のラングラーの意気込みが感じられると思います。

関連ブログ記事:

[ジム・ショルダーズとラングラー ##link##]

追記:

ラングラー発足から60年代にかけてのジージャンは、今回紹介した111MJや11MJZに代表されるように非常に個性的でしたが、70年代以降ラングラーのジージャンに関しては、独創性が薄れ、他社と似たような製品となってしまっています。

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