リーバイスの501は、ジーンズの元祖・原点です。501の歴史は、リーバイス(正確にはリーバイ・ストラウス社)の歴史、そして、ジーンズの歴史と言っても過言ではありません。
以下の画像は、リーバイストラウス社前ヒストリアンLynn Downeyさん著のImages of America LEVI STRAUSS & Co.内の"Levi's"の商標登録を申請した年、1927年の販売店向け、Ad Mats(広告マット)と呼ばれる新聞広告出稿用の資料です。
1890年、それまで単にXXと呼ばれていた最上級のアモスケーグミルズ製デニムを使用し、リベットが取り付けられたウエストオーバーオール(当時のジーンズの呼称)に、501のロット番号が付与されました。
501の呼称が普及したのは1980年代以降
1890年以降、パッチには501のロット番号が記載され、販売店の注文書などでは501が使われたりしていましたが、一般的な呼称ではありませんでした。501の呼び名が一般に普及したのは、比較的最近のこと、具体的には80年代以降です。
本当?と思われたり、意外に思われる方もいらっしゃると思います。
少なくとも言えることは、1970年代以前の販促品、資料などで「501」のロット番号が記載表示されていることは稀です。表現を変えると販促品、資料などで501の名前が使われているものはほとんどありません。年代が古くなればなるほど501の名称が使われている資料、販促品は目にしなくなります。
本当?と思われたり、意外に思われる方もいらっしゃると思います。
少なくとも言えることは、1970年代以前の販促品、資料などで「501」のロット番号が記載表示されていることは稀です。表現を変えると販促品、資料などで501の名前が使われているものはほとんどありません。年代が古くなればなるほど501の名称が使われている資料、販促品は目にしなくなります。
下は、1920年代リーバイ・ストラウス社のカタログ中(正確にはフライヤーと呼ばれるもの)の501です。
501とは呼ばずに、「XX No.1 Leather Ticket Waist Overalls」となっています。
価格の左側には、No. C-3051, as above, Delivered to You, price per pairと記載されています。501、または、501XXと言う表記はありません。(パッチには501XXと表記されています。)当時の呼び方は、501ではなく、XX ウエスト・オーバーオールと呼んでいたことを示しています。
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501とは呼ばずに、「XX No.1 Leather Ticket Waist Overalls」となっています。
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1920s Levi's Flyer, LS&Co. Archive |
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以下の画像は、リーバイストラウス社前ヒストリアンLynn Downeyさん著のImages of America LEVI STRAUSS & Co.内の"Levi's"の商標登録を申請した年、1927年の販売店向け、Ad Mats(広告マット)と呼ばれる新聞広告出稿用の資料です。
LEVI STRAUSS Overallsとツーホースマークの表記がメインであることが分かります。上の画像で表示されている広告マットの年、1927年、リーバイ・ストラウス社は、LEVI'Sを商標として申請しました。。
上の広告マットの画像は、商標登録を申請した年から登場したLevi'sの表記とその後の移行が開始されたことを示しています。
中央左の広告マット(下の画像)は、LEVI STRAUSS Overallsに加えて、Levi'sが加えられたアドマットが含まれています。"Levi's the password for LEVI STRAUSS Overalls, A new Pair FREE if they Rip"と表示があります。
「リーバイス(は)、リーバイ・ストラウス オーバーオールのパスワードです。破けたら、新品を無料で差し上げます。」の意味です。
リーバイス(Levi's)は、リーバイ・ストラウス オーバーオールを意味すると言うような意味合いです。
Levi'sの商標登録を申請した1927年、新品の501に取付けられるギャランティーチケットの表記も、それまでの"This is a pair of them"から、"This is a pair of Levi's."に変更となりました。
ギャランティーチケットは、製品の品質を保証するもので、伝統的に新品の501の右ポケット部に取付けられていました。ギャランティーチケットには、”501”と言う名前は記載されていません。
下は1940年代後半から50年代にかけて新品の501に付けられていたギャランティーチケットです。
中央に”This is a pair of Levi's"の表示があります。
関連記事:
[リーバイス歴史本から:ギャランティーチケット ##link##]
1940年代に入ると、社名であるリーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)の表示は少なくなり、代わってリーバイス(Levi's)の露出が大きくなります。
下の写真のリーバイスブロッターは、1940年代のものです。一番上のブロッター(大戦中、40年代前半)は、リーバイ・ストラウスの表示がありますが、中央と下(40年代後半)にはありません。
1940年代のリーバイスのブロッターでは、”LEVI'S AMERICA'S FINEST OVERALL SINCE 1850"の表示になっています。
オーバーオールは当時のジーンズの呼び名で、基本的に501を意味します。1920年代後半以降、リーバイス・オーバーオール(Levi's Overalls)は、リーバイス 501を示す言葉・表現として使われていました。
50年代の終わりごろから、リーバイスの販促品オーバーオールからジーンズの呼称に変化していきます。リーバイスの資料には、オーバーオールからジーンズへの呼び名を変えたのは1960年と記載されています。下の画像では、AMERICA'S FINEST JEANSとなっています。(OVERALLの表現がなくなりました)
50年代のカウボーイ用品カタログなどでも501と言う名前が記載されていない方が多いです。(カタログ内でも、501と言うロット番号は、記載されていないものが多いです。
リーバイストラウス社の販促品やフラッシャー、ギャランティーチケットなどにも501の記載はありません。
下は、501 赤耳モデルのフラッシャーとギャランティーチケットです。80年代前半までの501のフラッシャーは、Levi'sです。
赤耳が生産中止になる(赤耳デニムの在庫が尽きた)1986年までは、上のLevi's表記のフラッシャーが使われていました。1987年にフラッシャーのデザインは、変更となり、Levi'sから501に変更になりました。
1987年以降、現在のフラッシャーも501です。
リーバイス・ストラウス社が、「501」と言うロット番号を積極的に宣伝するようになったのは、80年代からです。501を全面に打ち出した(501を強調する)テレビコマーシャル、次々と制作し放送しました。
リーバイ・ストラウス社が80年代から、501のブランドの宣伝・消費者への浸透に力を注いでいたことを示しています。
単に501の呼び方、どう呼ばれていたかだけのことですが、時代の流れ、市場での認知・呼び名、企業のブランディング戦略、マーケティング戦略・手法とも深く関わっていて、興味深いです。
関連記事:
[1980年代はリーバイスにとって大きな変革期だった ##link##]
30年代以前は、リーバイスはジーンズを意味し、ブランドや会社名は、リーバイ・ストラウスと呼ぶ方が圧倒的、一般的だったと思います。
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[1890年頃にロット番号501が付与されたことを示す資料 ##link##]
上の広告マットの画像は、商標登録を申請した年から登場したLevi'sの表記とその後の移行が開始されたことを示しています。
中央左の広告マット(下の画像)は、LEVI STRAUSS Overallsに加えて、Levi'sが加えられたアドマットが含まれています。"Levi's the password for LEVI STRAUSS Overalls, A new Pair FREE if they Rip"と表示があります。
「リーバイス(は)、リーバイ・ストラウス オーバーオールのパスワードです。破けたら、新品を無料で差し上げます。」の意味です。
リーバイス(Levi's)は、リーバイ・ストラウス オーバーオールを意味すると言うような意味合いです。
Levi'sの商標登録を申請した1927年、新品の501に取付けられるギャランティーチケットの表記も、それまでの"This is a pair of them"から、"This is a pair of Levi's."に変更となりました。
ギャランティーチケットは、製品の品質を保証するもので、伝統的に新品の501の右ポケット部に取付けられていました。ギャランティーチケットには、”501”と言う名前は記載されていません。
下は1940年代後半から50年代にかけて新品の501に付けられていたギャランティーチケットです。
中央に”This is a pair of Levi's"の表示があります。
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[リーバイス歴史本から:ギャランティーチケット ##link##]
1940年代に入ると、社名であるリーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)の表示は少なくなり、代わってリーバイス(Levi's)の露出が大きくなります。
下の写真のリーバイスブロッターは、1940年代のものです。一番上のブロッター(大戦中、40年代前半)は、リーバイ・ストラウスの表示がありますが、中央と下(40年代後半)にはありません。
1940年代のリーバイスのブロッターでは、”LEVI'S AMERICA'S FINEST OVERALL SINCE 1850"の表示になっています。
オーバーオールは当時のジーンズの呼び名で、基本的に501を意味します。1920年代後半以降、リーバイス・オーバーオール(Levi's Overalls)は、リーバイス 501を示す言葉・表現として使われていました。
50年代の終わりごろから、リーバイスの販促品オーバーオールからジーンズの呼称に変化していきます。リーバイスの資料には、オーバーオールからジーンズへの呼び名を変えたのは1960年と記載されています。下の画像では、AMERICA'S FINEST JEANSとなっています。(OVERALLの表現がなくなりました)
50年代のカウボーイ用品カタログなどでも501と言う名前が記載されていない方が多いです。(カタログ内でも、501と言うロット番号は、記載されていないものが多いです。
リーバイストラウス社の販促品やフラッシャー、ギャランティーチケットなどにも501の記載はありません。
下は、501 赤耳モデルのフラッシャーとギャランティーチケットです。80年代前半までの501のフラッシャーは、Levi'sです。
赤耳が生産中止になる(赤耳デニムの在庫が尽きた)1986年までは、上のLevi's表記のフラッシャーが使われていました。1987年にフラッシャーのデザインは、変更となり、Levi'sから501に変更になりました。
1987年以降、現在のフラッシャーも501です。
リーバイス・ストラウス社が、「501」と言うロット番号を積極的に宣伝するようになったのは、80年代からです。501を全面に打ち出した(501を強調する)テレビコマーシャル、次々と制作し放送しました。
リーバイ・ストラウス社が80年代から、501のブランドの宣伝・消費者への浸透に力を注いでいたことを示しています。
単に501の呼び方、どう呼ばれていたかだけのことですが、時代の流れ、市場での認知・呼び名、企業のブランディング戦略、マーケティング戦略・手法とも深く関わっていて、興味深いです。
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[1980年代はリーバイスにとって大きな変革期だった ##link##]
後書き
この記事内では、リーバイスは1970年代の501の一般呼称であり、会社名についてはリーバイ・ストラウス社と書いていますが、私自身は、リーバイスはリーバイ・ストラウス社も意味するようなイメージを持っています。30年代以前は、リーバイスはジーンズを意味し、ブランドや会社名は、リーバイ・ストラウスと呼ぶ方が圧倒的、一般的だったと思います。
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[最も古い会社のロゴの一つ: ツーホース・マーク ##link##]
[1890年頃にロット番号501が付与されたことを示す資料 ##link##]
この記事を読んでいてリーバイス501に興味を持ち、先日90年代の米国製リーバイス501のデッドストックを購入しました。
返信削除トップボタン裏の刻印を確認したところ「653」でした。いろいろ調べてみると、米国製の場合は5から始まる3桁の番号との
こと。紙パッチにはmade in USAの表記があるのでこれは外注工場で発注したものなのか、それとも偽物なのか...
ふと疑問に思ったので書き込ませていただきました。
はじめまして。このブログがきっかけでリーバイス501に興味を持たれて、90年代の米国製501のデッドストックをご購入されたとのこと、大変嬉しく、ありがたく思います。
返信削除現在は、様々な種類のジーンズがありますが、90年代の米国製501は一度は体験してみる価値がある名作だと思います。
今では貴重なデッドストック、長くご愛用してもらえれば、501も幸せだと思います。
80年代以降の米国製501のボタン裏刻印は、5で始まる数字3桁が多いですが、6で始まるものもあります。刻印だけで断定はできませんが、偽物の可能性は非常に低いです。(653の刻印の偽物の存在は、聞いたことがありません)
ボタン裏の刻印と同じ番号が、内側の取り扱い説明タグにあれば、ほぼ確実に本物です。
手元にある60年代後半のリーバイス社の社内資料で、60年代前半にリーバイスからの委託生産していた工場(=外注)を60年代後半にリーバイスが買い取った話があります。そのようなこともあったので、6で始まる番号は、外注工場を意味する可能性も考えられます。
80年代から90年代は、リーバイス自社工場の生産キャパシティはかなりあったと思われます。キャパシティを上回る受注などがあれば、外注する可能性もありますが、自社工場のキャパも相当あったと思うので、6で始まる番号も自社工場の可能性も十分にあります。現時点での認識としては、自社工場の可能性の方が高いと思っています。
尚、90年代後半からリーバイスは業績が低迷し、工場の閉鎖などを行っています。
お忙しい中返信ありがとうございます。
返信削除内タグを確認したところ同じ番号だったため
本物のようです。
内タグにもmade in USA表記があるにもかかわらず外注で海外で製造されているのはなんとも不思議な気分です(本当にUSA製と言えるのか...)
USA製がなくなってしまったのは残念ですが、評判のいい90年代デッドストックを楽しみたいと思います。
このコメントはブログの管理者によって削除されました。
返信削除お返事くださったコメントがなぜかスパムの方に入っているのに5週間経過して、気づきました。大変失礼しました。”外注”と言うのは、米国内の外注工場のことです。米国外の外注工場で生産された場合は、Made in USA表記を付けることはできません。(きちんとルールを守るというのが前提ですが、リーバイスの様な会社であれば、責任も伴うので、きちんとしていると思います。)90年代の米国製501は、良くも悪くも最近のジーンズとはかなり異なる持ち味があります。着用のご感想など、よろしければ将来、是非、教えて下さい。よろしくお願い致します。
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