1950年代初め頃の通称サドルマンのニックネームが付けられているリーバイスの広告です。
広告は、その時代の文化、流行、社会など、そしてその当時の企業(ここではリーバイス)の製品戦略、マーケティング、取り組み、重点市場分野等を反映しているものが多いです。
さらに広告は、その時代の流行や時代背景を直接的、間接的に物語っています。
古い年代の広告は、資料的な価値もあります。特にリーバイスの場合は、モデルやディテールなどの推定年代を特定する材料にもなることがあります。
一枚の広告でも、細かく見たり調べたりすると、色々な興味深い発見があったりもします。
このサドルマンの広告は、注目すべき点、興味深い事柄が多く含まれています。
以下の画像では、主な注目点にアンダーラインや矢印などを加えています。
雑誌などに掲載されている状態の広告であれば、発行された年が特定できます。
リーバイスのような古い年代の有名ブランドの広告は、既に切り取られてスクラップブックなどに保管されているものが多いです。
本品も既に切り取られた状態でした。
販売主からは、本広告は1952年の雑誌に掲載されたものであると説明がありました。
切り取られた状態の広告で、販売主から教えてもらった掲載年をそのまま鵜呑みにしない方が良い時も多いです。
幸いなことに、リーバイスの場合は、かなり古い時代のものでも、年代判定を行う上で明らかになっている情報や判断材料が比較的豊富にあります。
しかし、既に明らかになって知られている年代情報でも、後から判明したことによって、推定年代が変わることもあります。
その事例も本記事の後半に紹介しています。
以下のブログ記事に詳しく説明があります。
501の歴史4: 1950年代から、オーバーオールからジーンズへの呼称の変化
上記リーバイスの説明と今回の広告は多少なりとも食い違いがあります。
今回の広告でJEANSの言葉が入っていることは、”JEANS”言葉があれば、1960年以降であると断定する事はできないことを示しています。
この広告は、注目すべきところが多くあるのですが、最も特筆すべきことの一つは、サドルマンがジャケットを着ていることと、そのジャケットにシンチバックが付いていることです。
サドルマンがジャケットを着ているイラストは、とても希少です。
そして、そのジャケットはチンチバックが付いていることから、506XXであることが分かります。
ジャケットが506XXであることから、本イラストのある広告の年代は1952年(53年)以前と推測できます。
記載内容から推定年代を絞り込んでいくと、本広告は1951年ごろから1952年頃であると考えられます。
これは、冒頭で紹介した元の所有者の”1952年の広告である”との話と一致します。
総合的に考えて、元のオーナーの説明どおり1952年である可能性が非常に高いです。
(今回は一致しましたが、聞いていた年代と表記からの推定年代が一致しないことも比較的多くあります。)
ここからさらに考察を進めると、1952年の広告のイラストが506XXであることは、507XXの登場年が1953年であることを間接的に示していること。
そして、507XXが1953年に登場したとなると、片面タブの最終年は1953年頃、またはそれ以降と考えられます。
片面タブは1951年まで、両面タブの登場は1952年というのが比較的広く認知されていることでしたが、これまでに判明している情報を総合すると、上記の可能性が高いです。
507XXの登場が1953年という説について、以下の記事を投稿しています。この記事投稿後も、507XXは1953年に登場したことを示す複数の資料が見つかっています。
関連ブログ記事:
507XX1953年登場説についての考察
広告は、その時代の文化、流行、社会など、そしてその当時の企業(ここではリーバイス)の製品戦略、マーケティング、取り組み、重点市場分野等を反映しているものが多いです。
さらに広告は、その時代の流行や時代背景を直接的、間接的に物語っています。
古い年代の広告は、資料的な価値もあります。特にリーバイスの場合は、モデルやディテールなどの推定年代を特定する材料にもなることがあります。
一枚の広告でも、細かく見たり調べたりすると、色々な興味深い発見があったりもします。
このサドルマンの広告は、注目すべき点、興味深い事柄が多く含まれています。
以下の画像では、主な注目点にアンダーラインや矢印などを加えています。
広告の年代
雑誌などに掲載されている状態の広告であれば、発行された年が特定できます。
リーバイスのような古い年代の有名ブランドの広告は、既に切り取られてスクラップブックなどに保管されているものが多いです。
本品も既に切り取られた状態でした。
販売主からは、本広告は1952年の雑誌に掲載されたものであると説明がありました。
切り取られた状態の広告で、販売主から教えてもらった掲載年をそのまま鵜呑みにしない方が良い時も多いです。
幸いなことに、リーバイスの場合は、かなり古い時代のものでも、年代判定を行う上で明らかになっている情報や判断材料が比較的豊富にあります。
しかし、既に明らかになって知られている年代情報でも、後から判明したことによって、推定年代が変わることもあります。
その事例も本記事の後半に紹介しています。
記載内容から広告の年代を推測・再確認する
広告の記載内容は、特定の年代特有の表記が含まれている場合があります。
記載内容から、推定年代を絞り込んだりすることもできる時があります。
ここではその具体例を紹介します。
広告の一番下に、"AMERICA'S FINEST OVERALL・SINCE 1850"と表示されています。
1950年代の初め前後は、リーバイスは1850年から事業を営んでおり、1950年が100周年であることを強調していました。
実際のところは、リーバイス社の創業年は1853年です。創業者のリーバイ・ストラウス氏がカリフォルニアに引っ越したのが1850年ごろと言われています。
広告内に、"That's whey they've worn LEVI'S for over 100 years."の表示があります。
上記の2カ所の記載から、”1850年から100年以上”を意味することが分かります。
そのことは、年代が1950年以降となります。
1950年の販促品では、100周年の表記入ります。
上記の事から、本広告は1951年以降の可能性が高いです。
LEVI'S表記の特徴
LEVI'Sの右端上に星型の小さいマークが付いています。これは、®が付けられる移行期のものです。
この星型の表記は、年代としては1940年代の終わりから1950年代の前半頃のリーバイスの表記の特徴です。
ここで非常に興味深いのが、BLUE JEANSと表示があることです。
リーバイス社の資料では、広告でオーバーオールズの代わりに”ジーンズ”が使われた年は1960年と書かれています。
1960年: 広告やパッケージングにおいて、”オーバーオールズ(Overalls)"の名称は、”ジーンズ”に変更となります。
我々は、過去の他製品では"ジーンズ”と呼んでいた(特に、1930年代のボーイズ向けデニムパンツ)ことはありましたが、我々のトップラインのオーバーオールは、50年代の若者達がこの製品(501)をジーンズと呼び始めるまで501ジーンズとは呼んでいませんでした。
なぜ、メンズのオーバーオールズがこの名称(ジーンズ)になってしまったのかは誰も知りませんが、10代の若者達がその言葉を使い出し、その名称が全ての製造メーカーが使う用語となりました。
備考: リーバイス社は、最初のジーンズ誕生時から、伝統的に501をオーバーオールと呼んでいました。
しかし、50年代からジーンズの呼び名が普及し、501に対しても若者達がジーンズと呼ぶようになったため、1960年より、オーバーオールに代わってジーンズの名称を使うようになりました。
501の歴史4: 1950年代から、オーバーオールからジーンズへの呼称の変化
上記リーバイスの説明と今回の広告は多少なりとも食い違いがあります。
今回の広告でJEANSの言葉が入っていることは、”JEANS”言葉があれば、1960年以降であると断定する事はできないことを示しています。
サドルマンのジャケットに注目
この広告は、注目すべきところが多くあるのですが、最も特筆すべきことの一つは、サドルマンがジャケットを着ていることと、そのジャケットにシンチバックが付いていることです。
サドルマンがジャケットを着ているイラストは、とても希少です。
そして、そのジャケットはチンチバックが付いていることから、506XXであることが分かります。
ジャケットが506XXであることから、本イラストのある広告の年代は1952年(53年)以前と推測できます。
まとめ・考察
記載内容から推定年代を絞り込んでいくと、本広告は1951年ごろから1952年頃であると考えられます。
これは、冒頭で紹介した元の所有者の”1952年の広告である”との話と一致します。
総合的に考えて、元のオーナーの説明どおり1952年である可能性が非常に高いです。
(今回は一致しましたが、聞いていた年代と表記からの推定年代が一致しないことも比較的多くあります。)
ここからさらに考察を進めると、1952年の広告のイラストが506XXであることは、507XXの登場年が1953年であることを間接的に示していること。
そして、507XXが1953年に登場したとなると、片面タブの最終年は1953年頃、またはそれ以降と考えられます。
片面タブは1951年まで、両面タブの登場は1952年というのが比較的広く認知されていることでしたが、これまでに判明している情報を総合すると、上記の可能性が高いです。
507XXの登場が1953年という説について、以下の記事を投稿しています。この記事投稿後も、507XXは1953年に登場したことを示す複数の資料が見つかっています。
関連ブログ記事:
507XX1953年登場説についての考察
COMMENTS