1960年代のリーバイス 501, 502, 505で、パッチにロット番号、サイズに加えて、"A", "S", "I", "F"の1文字が入っている物は、「タイプ物」と呼ばれています。
501の場合、タイプ表記が入っている物のほとんど(全て)は、"A"か"S"です。502や505では、”F”の存在が確認されていますが、501で"F"は見つかっていません。
501で稀に”I"があるとの話があり、私も一度見た記憶がぼんやりとあるのですが、定かではありません。
タイプ物というのは、ヴィンテージ市場での通称であり、60年代当時にリーバイスが「タイプ物」と名付けたモデルを販売していたわけではありません。
また、タイプ物と呼ばれる501は、例えば、『タイプ物は数字刻印のVステッチ、コインポケット裏はシングルステッチ』と言ったような特定・固有のディテールを備えているわけではありません。
後の年代ディテールの平行ステッチが施されているタイプ物も普通にあります。
このタイプ表記は、なぜ付けられたのか?というのが、疑問、謎でもあります。
タイプ物については、諸説ありますが、はっきり言えることは、それらの説は全て、明確な情報をもとにした物ではないということです。
リーバイス社のヒストリアンなりしかるべき人が、タイプ物とはなんであるか明言したり、資料が公開されその資料に基づいている話・情報ではないという意味です。
本記事で書いていることも、推測になります。
タイプ表記について、最も有力なのが品質・グレードを表すという説です。
"A"や"S"は、製品に限らず一般的に優れている物を意味して使われることが多いです。
"Aクラス”、"Aグレード”と言えば、基準の中で上になります。例えば、"Aクラス”、”Bクラス”、”Cクラス”であれば、Aが一番良いです。
尚、実際に製品に付ける場合に、グレードで下に位置するものを示すような区分けをすることはまずありません。
A, B, Cと品質が分けられて表示されていたとして、Cを喜んで買う人はいないと思います。Cとラベル付けすることは、販売の障害にはなっても、促進する材料にはなりません。
通常は、BやCは通常品として、特に何もラベルで明示せず、品質の特に良い物、厳選した物のみ、"A"を表示したりします。
または、スタンダード、A、AA or A+というような形で表示します。(ネーミング方法は色々あるので、単なる一例です。)
グレードなどで使われるSは、一般的には「より優れた品質、高品質」を意味する、superiorのことです。スーペリアは、会社では上司や管理職を意味します。
以下英英辞典New Oxford American Dictionaryのsuperiorの説明を引用します。
単に"S"として、Superior、高品質を示す・意味する用法です。これは、比較的一般的です。
SやAと言うのが、製品に押されていれば、通常はより良い製品の位置付けを表します。
FやIがどのような意味かというと、一般的には、Fはfailureまたはfault、Iはinferior, irregular, insufficientを示すと思います。
inferiorは、superiorの反対の意味です。insufficientは、sufficient(十分な)の否定(逆)の意味です。十分ではない、基準に達していないということです。
FやIは、当時の品質基準に達していない品を示す可能性があります。
尚、イレギュラー品と言うと良いイメージはありませんが、製造から50年以上経過したヴィンテージ品は、大なり小なり不具合があるものがほとんどです。
製造から50年以上経過したヴィンテージ品の場合、製造・販売当時のグレードよりも、現時点でのコンディションの方が(はるかに)重要です。
ヴィンテージの場合、当時イレギュラーの位置付けだったものでも、現時点で見た場合、”極上コンディション”と位置付けることも珍しくありません。
デッドストックも、一般的には売れ残った不良在庫、死に筋在庫のことを意味します。良い意味、イメージではありません。
しかし、ヴィンテージ製品のデッドストックは、新品の状態で残っている品なので、極めて高い評価を得るのが通例です。
関連記事:
[##external-link## デッドストックとは? デッドストックの定義、考え方について / ロングホーンインポート]
イレギュラー品の表記・取り扱いは、年代などでも様々のようです。60年代前半以前の501などでは、内側のポケットの内袋(通称スレーキ)に"IRREGULAR"とスタンプされた物を見たことがあります。
IやFがイレギュラーの意味と仮定して、501ではほとんど見つかっていないことは、イレギュラーの取り扱い方が501では異なっていた可能性が考えられます。
60年代以前のヴィンテージリーバイスで、赤タブが切り取られている物があります。これは、イレギュラー品であるため赤タブを切り取ったものと考えられます。
同年代のジージャンの557や70505でも、時折、タブがないものがあります。これらは、イレギュラー品のため製造現場で、タブが切り取られたと思われます。
501の取り扱いも同じだった可能性があります。それなら、なぜ502や505もそうしないのか?と言う疑問が生じます。
一つの可能性は、特定の工場、ラインでのみFやIのスタンプが行われた。他のラインでは、502や505のイレギュラーの扱いは501と同じだった。と言うシナリオもあるかと思います。
実際のところ、タイプFやタイプIは、それほど数は多く見つかっていません。
サンプル数があまり多くない状態での話になってしまうのですが、刻印2でパッチが残存している501の場合、タイプS表記があるものが(圧倒的に)多いです。
刻印2の場合、品質検査で合格したものは全てSが押されていた可能性が考えられます。
刻印4は、Aが多く、6はS、 A、表記なしなど特に偏った傾向はなさそうに思えます。
しかし、サンプル数が少なすぎるので、確度の低い話です。もっと多くのサンプルがあれば、もう少しはっきりしたことが言えると思います。
ディテールなどから、タイプ物の生産された年代は、1967年頃から1970年頃までとある程度高い確度で、おおよその期間を絞り込むことができます。
この時期は、リーバイスは急速な拡大期の最中にいました。工場を増設したり、生産量を急拡大した時期です。
タイプ物の生産期間中に、製品の仕様も様々な変更が行われています。パッチの表記の種類も、文字の大きさ、生地色番号付きとなし、ツーホースマーク下の表記も様々なバージョンがあります。
関連ブログ記事:
[##check## 60年代後半ロット番号表記変更後のパッチについて]
これら多くのパッチ表記の種類や仕様変更から、リーバイスが拡大期の中で、様々な取り組み、変更が行われたことが分かります。
タイプ表記は、ジーンズのみでジャケットにはありません。タイプ刻印が入れられた70505を見た記憶がありません。
タイプ表記は、一部のジーンズの工場、またはラインで行われた当時のリーバイスの様々な試みの一つだったと考えています。
関連ブログ記事:
[##check## 1960年代の501ディテール変更年代考察]
501の場合、タイプ表記が入っている物のほとんど(全て)は、"A"か"S"です。502や505では、”F”の存在が確認されていますが、501で"F"は見つかっていません。
501で稀に”I"があるとの話があり、私も一度見た記憶がぼんやりとあるのですが、定かではありません。
[post_ads]
タイプ表記の意味
タイプ物というのは、ヴィンテージ市場での通称であり、60年代当時にリーバイスが「タイプ物」と名付けたモデルを販売していたわけではありません。
また、タイプ物と呼ばれる501は、例えば、『タイプ物は数字刻印のVステッチ、コインポケット裏はシングルステッチ』と言ったような特定・固有のディテールを備えているわけではありません。
後の年代ディテールの平行ステッチが施されているタイプ物も普通にあります。
このタイプ表記は、なぜ付けられたのか?というのが、疑問、謎でもあります。
タイプ物については、諸説ありますが、はっきり言えることは、それらの説は全て、明確な情報をもとにした物ではないということです。
リーバイス社のヒストリアンなりしかるべき人が、タイプ物とはなんであるか明言したり、資料が公開されその資料に基づいている話・情報ではないという意味です。
本記事で書いていることも、推測になります。
タイプ表記について、最も有力なのが品質・グレードを表すという説です。
"A"や"S"は、製品に限らず一般的に優れている物を意味して使われることが多いです。
"Aクラス”、"Aグレード”と言えば、基準の中で上になります。例えば、"Aクラス”、”Bクラス”、”Cクラス”であれば、Aが一番良いです。
尚、実際に製品に付ける場合に、グレードで下に位置するものを示すような区分けをすることはまずありません。
A, B, Cと品質が分けられて表示されていたとして、Cを喜んで買う人はいないと思います。Cとラベル付けすることは、販売の障害にはなっても、促進する材料にはなりません。
通常は、BやCは通常品として、特に何もラベルで明示せず、品質の特に良い物、厳選した物のみ、"A"を表示したりします。
または、スタンダード、A、AA or A+というような形で表示します。(ネーミング方法は色々あるので、単なる一例です。)
グレードなどで使われるSは、一般的には「より優れた品質、高品質」を意味する、superiorのことです。スーペリアは、会社では上司や管理職を意味します。
以下英英辞典New Oxford American Dictionaryのsuperiorの説明を引用します。
superior |səˈpi(ə)rēər| adjective1 higher in rank, status, or quality: a superior officer | it is superior toevery other car on the road.• of high standard or quality: superior malt whiskeys.• greater in size or power: deploying superior force.• [ predic. ] (superior to) above yielding to or being influenced by: I felt superior to any accusation of anti-Semitism.• having or showing an overly high opinion of oneself; supercilious: that girl was frightfully superior.2 chiefly Anatomy further above or out; higher in position.• (of a letter, figure, or symbol) written or printed above the line.• Astronomy (of a planet) having an orbit further from the sun than the earth's.• Botany (of the ovary of a flower) situated above the sepals and petals.
単に"S"として、Superior、高品質を示す・意味する用法です。これは、比較的一般的です。
SやAと言うのが、製品に押されていれば、通常はより良い製品の位置付けを表します。
FやIがどのような意味かというと、一般的には、Fはfailureまたはfault、Iはinferior, irregular, insufficientを示すと思います。
inferiorは、superiorの反対の意味です。insufficientは、sufficient(十分な)の否定(逆)の意味です。十分ではない、基準に達していないということです。
FやIは、当時の品質基準に達していない品を示す可能性があります。
尚、イレギュラー品と言うと良いイメージはありませんが、製造から50年以上経過したヴィンテージ品は、大なり小なり不具合があるものがほとんどです。
製造から50年以上経過したヴィンテージ品の場合、製造・販売当時のグレードよりも、現時点でのコンディションの方が(はるかに)重要です。
ヴィンテージの場合、当時イレギュラーの位置付けだったものでも、現時点で見た場合、”極上コンディション”と位置付けることも珍しくありません。
デッドストックも、一般的には売れ残った不良在庫、死に筋在庫のことを意味します。良い意味、イメージではありません。
しかし、ヴィンテージ製品のデッドストックは、新品の状態で残っている品なので、極めて高い評価を得るのが通例です。
関連記事:
[##external-link## デッドストックとは? デッドストックの定義、考え方について / ロングホーンインポート]
イレギュラー品の表記・取り扱いは、年代などでも様々のようです。60年代前半以前の501などでは、内側のポケットの内袋(通称スレーキ)に"IRREGULAR"とスタンプされた物を見たことがあります。
IやFがイレギュラーの意味と仮定して、501ではほとんど見つかっていないことは、イレギュラーの取り扱い方が501では異なっていた可能性が考えられます。
60年代以前のヴィンテージリーバイスで、赤タブが切り取られている物があります。これは、イレギュラー品であるため赤タブを切り取ったものと考えられます。
同年代のジージャンの557や70505でも、時折、タブがないものがあります。これらは、イレギュラー品のため製造現場で、タブが切り取られたと思われます。
501の取り扱いも同じだった可能性があります。それなら、なぜ502や505もそうしないのか?と言う疑問が生じます。
一つの可能性は、特定の工場、ラインでのみFやIのスタンプが行われた。他のラインでは、502や505のイレギュラーの扱いは501と同じだった。と言うシナリオもあるかと思います。
実際のところ、タイプFやタイプIは、それほど数は多く見つかっていません。
- [message]
- ##hand-o-right## 備考
- 50年代、ティーンエイジャーの間で、力を誇示するような意味で、他の少年の穿いているリーバイスのジーンズのタブを切り取って集めたりすることが流行となったこともあります。50年代の製品の場合、タブがないのはその理由の可能性も少なからずあります。
疑問点
サンプル数があまり多くない状態での話になってしまうのですが、刻印2でパッチが残存している501の場合、タイプS表記があるものが(圧倒的に)多いです。
刻印2の場合、品質検査で合格したものは全てSが押されていた可能性が考えられます。
刻印4は、Aが多く、6はS、 A、表記なしなど特に偏った傾向はなさそうに思えます。
しかし、サンプル数が少なすぎるので、確度の低い話です。もっと多くのサンプルがあれば、もう少しはっきりしたことが言えると思います。
まとめ
ディテールなどから、タイプ物の生産された年代は、1967年頃から1970年頃までとある程度高い確度で、おおよその期間を絞り込むことができます。
この時期は、リーバイスは急速な拡大期の最中にいました。工場を増設したり、生産量を急拡大した時期です。
タイプ物の生産期間中に、製品の仕様も様々な変更が行われています。パッチの表記の種類も、文字の大きさ、生地色番号付きとなし、ツーホースマーク下の表記も様々なバージョンがあります。
関連ブログ記事:
[##check## 60年代後半ロット番号表記変更後のパッチについて]
これら多くのパッチ表記の種類や仕様変更から、リーバイスが拡大期の中で、様々な取り組み、変更が行われたことが分かります。
タイプ表記は、ジーンズのみでジャケットにはありません。タイプ刻印が入れられた70505を見た記憶がありません。
タイプ表記は、一部のジーンズの工場、またはラインで行われた当時のリーバイスの様々な試みの一つだったと考えています。
- [message]
- ##exclamation-triangle## 備考・注意事項
- タイプ表記の意味は、リーバイス社の資料など明確な情報が入手できない状態での、現存する品などの特徴や一般的な認識などからの推測でしかありません。
関連ブログ記事:
[##check## 1960年代の501ディテール変更年代考察]
whimvimoneです。お世話になります。
返信削除TYPE物のナゾ、なぜ今でもナゾなんだろう。。
LEVIS社自身もそれについて未だに把握されてないのか。
LEVIS社なら明確な回答を持っていると普通に思いますが、持っていないから今でもナゾなんでしょうね。不思議ですね。
whimvimoneです。
返信削除「推測でしかありません」とのコトですが、その推測は的確だと思います。素晴らしいと思っています。
当初は、501XX最終→ダブルレーム→TYPE物→BIGE と年代分け、移行しているものと思っておりました。
移行していったのではなく、ディテールが共通しているモデルに関しては、
TYPE物・BIGEは全く同時期に生産されており、
品質検査合格した通常の物には、当たり前だから今までどおり何もつかない。→BIGE。
生産拡大した背景として(工場の評価、やる気度UPの為)品質検査合格した中でもグレートの高い物だけにスタンプが入る。→TYPE物
と推測させていただきました。
ダブルネームにS、Aが付いた物はありませんよね?
whimvimoneさん、コメントありがとうございます。タイプ物については、リーバイス社は情報を持っている可能性は高いと思います。しかし、それを公開する必要性を感じていないのではないかというのが私の推測です。公開することによって、得られることは少ないと思います。また、気にしているのは、多分、日本人の一部の愛好家だけだと思います。(笑)とっても知りたいところですよね。 リーバイス社も明確に分かっていない可能性も少ないですが、あるかと思います。SやAのスタンプは、明確な仕様ではなく、現場の裁量で行われた可能性も少ないながらあると思います。 リーバイスの元ヒストリアンのLynn Downeyさんがまだお仕事をお続けになられていたら、聞きたいと思っていたことの一つでした。
返信削除whimvimoneさん、コメントありがとうございます。501XX最終→ダブルレーム→TYPE物→BIGE と解釈している人の方が(圧倒的に)多いと思います。その可能性がないとは言えないですが、ディテールを検証すると、かなり矛盾が生じると思います。Big-Eの一部にスタンプが追加された物と考えた場合、スッキリする感じではあります。工場によってスタンプ表記は差がある可能性もかなりあると思っています。ダブルネームに、タイプ表記はありません。ダブルネーム自体少ないです。ダブルネームもビッグEの最初期の一部で、追加でロット名がスタンプされた可能性が高いと思っています。
返信削除