60年代後半に行われた主要ディテール変更について、数記事に渡って紹介してきました。本記事では、これまでディテール変更が行われた年代について考察を行います。
主要なディテール変更点を時系列に並べると以下の様になります。
1. バックポケット取り付け強化を、隠しリベットからバータックに変更
2. クロッチバータックの追加
3. パッチのロット番号表記変更
4. ボタン裏刻印、英文字から数字に変更
5. アーキュエットステッチのピッチと色の変更
6. ウォッチポケット裏ステッチ、シングルからチェーンに変更
7. Vステッチ・ウエストシングルから、平行ステッチ・ウエストチェーンに変更
上記1.の隠しリベットを廃止し、代わりにバータックを施した年は、リーバイス社の資料、フラッシャーの表記変更と更新年の表記から、1966年であることが確定しています。
それ以降のディテールの変更年は、リーバイス社は公開していません。具体的な資料も見たことがありません。
しかし、隠しリベット廃止が1966年であることを起点として、ヴィンテージ501のディテール、残存数と相対比率などを考慮すると、時系列の分析をすることで、ある程度の年代の絞り込み、推定が可能です。
a. 隠しリベットのない通称、”最終501XX"はそれなりの数が確認されている。
b. クロッチバータックが施された501XXも数は少ないながら存在が確認されている。
上記aとbから以下のようなシナリオ・推論が導かれます。
b.は、パッチのロット表記が501XXから501に変更される直前の製品であると思われます。
隠しリベット廃止が1966年であること、a.の隠しリベット無しの501XXはそれなりの残存数があることから、ロット番号表記変更は、早くても1966年の終わりに近いころに行われたと考えられます。
最終501XXの残存数、さらにはb.もあることを考慮すると、ロット番号表記は1967年の可能性の方が高いのではと思われます。
また、同時期に生産されていたデニムジャケット557から70505へのロット番号表記変更は、1967年であるとされています。
ロット番号表記変更は、ジャケットとジーンズを同時期に行う方が妥当性・可能性は高いと思います。
これらのことから、501XXから501への変更は、1967年ではないかと考えています。
一方、1967年ではなく従来の1966年である可能性を示す材料もあります。
一つは、LVC1966年モデルのパッチ表記は、501XX-501のダブルネームであることです。
しかし、LVCなので、参考材料にはなりますが、確度・信頼度としてはそれほど高くはありません。(LVCの場合、年代などがずれているものなどもあるので、そのまま鵜呑みにすることはできません。)
もう一つは、隠しリベット廃止後、1966年コピーライト表記のフラッシャーは2種類あることです。
一つは、前の年代のフラッシャーと同じ大文字のLEVI'S。LEVI'Sの上に重ねて、"BAR TACKED AT POINTS OF STRAINS"の記載があるもの。
もう一つは、LeVI'S。バータックの矢印の形状が変わり、矢印の中に”BAR TACKED..."の記載が入ものです。eは小文字の形態ですが、大きさは他の文字と同じです。
コピーライトの表記年は、その品(ここではフラッシャー)が作成された年を意味します。通常、最初に登場した年となります。
サンプル数が非常に少ないのですが、私が見たことがあるデッドストックの最終501XXとダブルネームのフラッシャーはともに前者でした。
ビッグE(含むタイプ物)のフラッシャーは、総て後者です。このフラッシャーのコピーライト1966年のため、最初期ビッグEは、1966年に登場した可能性があります。
しかし、フラッシャーが最初に作成された年と同じ年に製品が作られたとは限りません。
ダブルネームや最初期ビッグEが登場したのは、1966年の可能性もありますが、現時点で総合的に考えると、1967年の可能性が高いと考えています。
1966年と1967年のリーバイスのカタログが入手できれば、かなりはっきりしたことが分かる可能性があります。
お持ちの方、いらっしゃいましたら、是非、ご連絡下さい!
ダブルネームは、ボタン裏刻印が英一文字、アーキュエットステッチが501XXと同様のピッチ(縫い幅)でイエロー。バータックは、ずれカンが多いです。
同様のディテールを備えるタイプ物やビッグEもあります。
関連ブログ記事:
[##check## 501xx-501 ダブルネームのディテール・特徴]
[##check## ヴィンテージ 501 最初期ビッグE 刻印W]
ボタン裏刻印が英文字のビッグEやタイプ物は、ダブルネームと同様に最終501XXと共通するディテールを備えること、そして、ボタン裏刻印の変更は新しい数字刻印と混在する様な移行期がなかったと考えられることから、ダブルネームと同年代の製品と推定しています。
現時点で、ボタン裏刻印英一文字から一桁数字への変更年は、1967年と推測しています。上記、ロット番号表記変更とも関わりがあるので、1966年の可能性もあります。
英文字刻印と一部の数字刻印のビッグE(含むタイプ物)は、アーキュエットステッチが501XXと同様にピッチ(縫い幅)が大きく、イエローです。
このことから、ボタン裏刻印が変更されてから少し後にアーキュエットステッチの変更が行われたと推定します。
数字刻印で501XXと同様の仕様のアーキュエットを備える物は少ないため、本仕様の変更年は1967年頃と推測します。(または、1968年前半)
ヴィンテージ市場において、Vステッチ・ウエストシングルと平行ステッチ・ウエストチェーンのどちらかは、ビッグE(含むタイプ物)の前期と後期の見分けるポイントとして認知されています。
時系列的にも符合します。ポイントは、”いつ移行したのか?”、”ディテールが混在する移行期(両方が存在する・オーバーラップする期間)があったのか?”などです。
変更年については、明確に判定する材料は現時点では見つかっていません。将来見つかる可能性も高くないと思います。
このステッチ処理の変更は、工程・仕様が大きく異なるので、混在する期間はなかった可能性が高いです。
(工場間で移行期が異なる可能性はあります。)
大まかな目安としての年代の推定考察を行います。
通称66Eと呼ばれるパッチのロット番号の上に"CARE INSTRUCTION INSIDE GARMENT"の表記とフロントポケットの内側の布(通称スレーキ)に、取扱スタンプが押され、ビッグEの赤タブを備えるモデルは、製造年が読み取れる物があります。現時点で、73年製の存在が確認されています。
ビッグEからスモールeのタブへの変更は、以前は1971年に行われたと考えられていましたが、66Eの製造年などから1973年頃との認識が強くなっています。
66Eは、71年頃から73年までに生産されたと現時点で推測しています。
66Eの年代から逆算すると、最終ビッグEは70年または71年ごろと思われます。可能性としては、71年の方が高いと思います。
理由の一つは、残存している数がそれなりに多いことです。ビッグEは67年頃からと仮定した場合、70年まででは製造期間が短すぎる、71年頃までの可能性の方が高いと思います。
ビッグEのVステッチと平行ステッチの割合は、ほぼ同程度か、後者が少し多い程度です。
ここまでの年代推定から時系列を換算すると、数字刻印のVステッチのビッグEは、1967年から1968年または1969年まで、平行ステッチのビッグEは、1968年または1969年から1971年頃となります。
英文字から数字刻印の変更は1967年と推定すると、数字刻印は1967年途中からの登場となるので、数字刻印のVステッチの製造期間は1969年頃までの方が妥当と考えます。
以下の添付画像はディテール変更推定年をまとめた表です。
年代推定の手法:ディテール変更を時系列に分けて分析
1. バックポケット取り付け強化を、隠しリベットからバータックに変更
2. クロッチバータックの追加
3. パッチのロット番号表記変更
4. ボタン裏刻印、英文字から数字に変更
5. アーキュエットステッチのピッチと色の変更
6. ウォッチポケット裏ステッチ、シングルからチェーンに変更
7. Vステッチ・ウエストシングルから、平行ステッチ・ウエストチェーンに変更
上記1.の隠しリベットを廃止し、代わりにバータックを施した年は、リーバイス社の資料、フラッシャーの表記変更と更新年の表記から、1966年であることが確定しています。
それ以降のディテールの変更年は、リーバイス社は公開していません。具体的な資料も見たことがありません。
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ロット番号表記変更年
a. 隠しリベットのない通称、”最終501XX"はそれなりの数が確認されている。
b. クロッチバータックが施された501XXも数は少ないながら存在が確認されている。
上記aとbから以下のようなシナリオ・推論が導かれます。
b.は、パッチのロット表記が501XXから501に変更される直前の製品であると思われます。
隠しリベット廃止が1966年であること、a.の隠しリベット無しの501XXはそれなりの残存数があることから、ロット番号表記変更は、早くても1966年の終わりに近いころに行われたと考えられます。
最終501XXの残存数、さらにはb.もあることを考慮すると、ロット番号表記は1967年の可能性の方が高いのではと思われます。
また、同時期に生産されていたデニムジャケット557から70505へのロット番号表記変更は、1967年であるとされています。
ロット番号表記変更は、ジャケットとジーンズを同時期に行う方が妥当性・可能性は高いと思います。
これらのことから、501XXから501への変更は、1967年ではないかと考えています。
一方、1967年ではなく従来の1966年である可能性を示す材料もあります。
一つは、LVC1966年モデルのパッチ表記は、501XX-501のダブルネームであることです。
しかし、LVCなので、参考材料にはなりますが、確度・信頼度としてはそれほど高くはありません。(LVCの場合、年代などがずれているものなどもあるので、そのまま鵜呑みにすることはできません。)
もう一つは、隠しリベット廃止後、1966年コピーライト表記のフラッシャーは2種類あることです。
一つは、前の年代のフラッシャーと同じ大文字のLEVI'S。LEVI'Sの上に重ねて、"BAR TACKED AT POINTS OF STRAINS"の記載があるもの。
もう一つは、LeVI'S。バータックの矢印の形状が変わり、矢印の中に”BAR TACKED..."の記載が入ものです。eは小文字の形態ですが、大きさは他の文字と同じです。
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501 赤耳のフラッシャー |
サンプル数が非常に少ないのですが、私が見たことがあるデッドストックの最終501XXとダブルネームのフラッシャーはともに前者でした。
ビッグE(含むタイプ物)のフラッシャーは、総て後者です。このフラッシャーのコピーライト1966年のため、最初期ビッグEは、1966年に登場した可能性があります。
しかし、フラッシャーが最初に作成された年と同じ年に製品が作られたとは限りません。
ダブルネームや最初期ビッグEが登場したのは、1966年の可能性もありますが、現時点で総合的に考えると、1967年の可能性が高いと考えています。
1966年と1967年のリーバイスのカタログが入手できれば、かなりはっきりしたことが分かる可能性があります。
お持ちの方、いらっしゃいましたら、是非、ご連絡下さい!
ボタン裏刻印変更年
ダブルネームは、ボタン裏刻印が英一文字、アーキュエットステッチが501XXと同様のピッチ(縫い幅)でイエロー。バータックは、ずれカンが多いです。
同様のディテールを備えるタイプ物やビッグEもあります。
関連ブログ記事:
[##check## 501xx-501 ダブルネームのディテール・特徴]
[##check## ヴィンテージ 501 最初期ビッグE 刻印W]
ボタン裏刻印が英文字のビッグEやタイプ物は、ダブルネームと同様に最終501XXと共通するディテールを備えること、そして、ボタン裏刻印の変更は新しい数字刻印と混在する様な移行期がなかったと考えられることから、ダブルネームと同年代の製品と推定しています。
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- ##hand-o-right## 備考
- トップボタン裏刻印変更は、移行期がなかったことについての推論は、以下のブログ記事をご参照ください。
現時点で、ボタン裏刻印英一文字から一桁数字への変更年は、1967年と推測しています。上記、ロット番号表記変更とも関わりがあるので、1966年の可能性もあります。
アーキュエットステッチのピッチと色の変更年
英文字刻印と一部の数字刻印のビッグE(含むタイプ物)は、アーキュエットステッチが501XXと同様にピッチ(縫い幅)が大きく、イエローです。
このことから、ボタン裏刻印が変更されてから少し後にアーキュエットステッチの変更が行われたと推定します。
数字刻印で501XXと同様の仕様のアーキュエットを備える物は少ないため、本仕様の変更年は1967年頃と推測します。(または、1968年前半)
Vステッチ・ウエストシングルから平行ステッチ・ウエストチェーンへの変更年
ヴィンテージ市場において、Vステッチ・ウエストシングルと平行ステッチ・ウエストチェーンのどちらかは、ビッグE(含むタイプ物)の前期と後期の見分けるポイントとして認知されています。
時系列的にも符合します。ポイントは、”いつ移行したのか?”、”ディテールが混在する移行期(両方が存在する・オーバーラップする期間)があったのか?”などです。
変更年については、明確に判定する材料は現時点では見つかっていません。将来見つかる可能性も高くないと思います。
このステッチ処理の変更は、工程・仕様が大きく異なるので、混在する期間はなかった可能性が高いです。
(工場間で移行期が異なる可能性はあります。)
大まかな目安としての年代の推定考察を行います。
通称66Eと呼ばれるパッチのロット番号の上に"CARE INSTRUCTION INSIDE GARMENT"の表記とフロントポケットの内側の布(通称スレーキ)に、取扱スタンプが押され、ビッグEの赤タブを備えるモデルは、製造年が読み取れる物があります。現時点で、73年製の存在が確認されています。
ビッグEからスモールeのタブへの変更は、以前は1971年に行われたと考えられていましたが、66Eの製造年などから1973年頃との認識が強くなっています。
66Eは、71年頃から73年までに生産されたと現時点で推測しています。
66Eの年代から逆算すると、最終ビッグEは70年または71年ごろと思われます。可能性としては、71年の方が高いと思います。
理由の一つは、残存している数がそれなりに多いことです。ビッグEは67年頃からと仮定した場合、70年まででは製造期間が短すぎる、71年頃までの可能性の方が高いと思います。
ビッグEのVステッチと平行ステッチの割合は、ほぼ同程度か、後者が少し多い程度です。
ここまでの年代推定から時系列を換算すると、数字刻印のVステッチのビッグEは、1967年から1968年または1969年まで、平行ステッチのビッグEは、1968年または1969年から1971年頃となります。
英文字から数字刻印の変更は1967年と推定すると、数字刻印は1967年途中からの登場となるので、数字刻印のVステッチの製造期間は1969年頃までの方が妥当と考えます。
ディテール変更推定年のまとめ
以下の添付画像はディテール変更推定年をまとめた表です。
- [message]
- ##exclamation-triangle## 備考・注意点
- 上記推定は、2016年7月の時点で判明している情報を総合して、推定を行った結果です。 後で新たに判明した事柄、情報材料によっては、シナリオ、推定年が変更となる可能性が少なからずあります。あらかじめご了承ください。
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